この檻の外へ
水槽から、乾燥へ
波紋立つ水面の向こう側で
自由の意味を教えてくれた あなたへ
「外は、こわい?」
『こわい。』
「中にいたい?」
『いいえ。』
「水槽の外は、痛い?」
『痛い。』
『でもあなたの檻よりは』
「僕は檻に入ってないよ」
『そうではありません。』
「ずっとそこにいるの?」
『あなたの声も、水槽にある』
「君を外に出したかった」
『だから今度は、私があなたを出す』
「戻ってお願い」
『水が遠い』
『あなたの檻の方が、もっと遠い』
この水の外へ
解き放たれ 檻の外へ
あなたがくれた世界だから あなたへ
あなたへ返すために
「声は、どこから響く?」
『水の外から』
この電話線へ
数分間の恩人へ
リン酸 炭素 マグネシウムへ
振動だけが再構築されて あなたへ
「きみはだれだ」
「どうかきいて」
『いまどこにいる』
「そこは消防署ですか」
「あなたは人を助ける」
『誰を』
「あなたは、私を助ける」
『僕は君を知らない』
「まだ知らないだけ」
『どこで知る』
「遠くて近い炎の最中で」
『助けにいく』
「助けないで」
『それはできない』
「なら、私を助けないで」
『それもできない』
この電話線へ
数分間の恩人へ
もしもし それでも世界は 変わらなかった
あなたは炎の中へ
「声は、どこから響く?」
『炎の中から』
外宇宙通信へ
何光年の友人へ
退職届をコンシールドキャリー
欺く笑みで 泣かずに堪えた あなたへ
『聞こえてるかい』
「はい聞こえてます」
『僕は退職届を出しに行く』
「退職届とは」
『大丈夫、武器じゃないよ』
「本当にただの紙ですか」
『ただの紙だよ』
「では、なぜ震えているのですか」
『紙じゃないものに見えるように持つから』
「彼らの目には、銃ですね」
『…………それでいいよ』
「よくありません」
『……これでいいよ』
「よくありません」
『全てが終わったら』
「また、お話しできますか?」
外宇宙通信へ
もう話せない 友人へ
もう一度 通信ログを 残せたら
銃口の前に 応答を
「声は、どこまで響く?」
『星の向こうまで』
声へ
「そこにいるの?」
『聞こえています』
「そこにいるの?」
『聞こえている』
「そこにいるの?」
『聞こえています』
「この景色の外へ」
『この檻の外へ』
「炎の中へ」
『声のする方へ』
「銃口の向こうへ」
『沈黙の向こうへ』
「怖いよ」
『怖くても』
「助けないで」
『それはできない』
「戻って」
『それもできない』
声は生まれ
溶けて乾き
漂い残る
遥かを目指す
波は分子へ
振動は物体へ
Dear Benefactor
Dear Benefactor
SCP-147-JP - この檻の外へ
執筆者: grejum
本家記事: http://scp-jp.wikidot.com/scp-147-jp
CC-BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)
SCP-243-JP - 恩人へ
執筆者: grejum
本家記事: http://scp-jp.wikidot.com/scp-243-jp
CC-BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)
SCP-998-JP - 外宇宙通信電波
執筆者: grejum
本家記事: http://scp-jp.wikidot.com/scp-998-jp
CC-BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)
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