課題がクリアして、皆はそれぞれ愚痴ったり笑い合ったりしていた。だけどあたしは、目の前でまだ手を繋いだまま話してる2人から目を放す事が出来なかった。
「疲れたー…誰か水持ってないか?」
「あ、持ってますよ、どうぞ。」
「悪ぃ悪ぃ…。」
どうして手を放さないの?いつからそんなに仲が良くなったの?判ってるよ、あたしが口出す事じゃない。だけど、だけどもやもやして上手く笑えない…話そうとしても声が上手く出て来ない…。
「ホテル戻って休憩にしない?」
「賛成、結構疲れたし。」
「首が痛いぞ。」
喉が焼け付いたみたいに熱い。胸の奥が鉛でも飲み込んだみたいに重苦しい。
「メオさん?気分でも悪いんですか?」
「ううん、何でもない、行こっか、浬音ちゃん。」
「はい。」
あたしどうしちゃったんだろう?笑ってるつもりなのに、全身が小さく震えてる気がするの。話しているつもりなのに、頭に入らないの。真っ黒な思いが…あたしを…染めるみたいに…。
「きゃっ?!」
―――バタン!!
気が付くとその背中を押していた。重いドアを閉めていた。馬鹿な事してるのは判ってたけど、でも自分が止められなかった。
「ズルイ…。」
「え?」
「ズルイよ…!浬音ちゃんズルイよ!どうして全部持って行っちゃうの?!帽子屋も、
三月ウサギも、ハレルヤさんだって、皆浬音ちゃんの味方じゃない!もう充分
守ってくれる人居るんじゃない!これ以上持って行かなくたって良いじゃない!」
「メオさん?」
皆に心配されて、お姫様みたいに守られて、幸せそうに笑ってて…それが堪らなく羨ましかった。
「…君まで…ナチ君まで取らなくたって良いじゃない!!」
「ち…違…!誤解です!私…そんなつもりじゃ…!」
「なら昨日ラウンジに居たのは何?!2人で楽しそうにしてたのは何なの?!さっきだって
…ずっと…ずっと手繋いでて…。」
悔しいのか、悲しいのか、怒ってるのか、よく判らない涙が溢れた。こんなの完璧八つ当たりだって判ってる…誤解だって言われればきっと皆判ってくれる。だけど全身が真っ黒い気持ちでいっぱいになって、苦しかった。
「嫌い…皆嫌い…!浬音ちゃんもナチ君も…こんなあたしも…皆、皆、大っ嫌い…!!」
「メオさん?メオさん?!メオさん!!開けて…開けて下さい!メオさん!此処開けて…
嫌…誰か…開けて!助けて…!!誰か―――っ!!!」
重い扉のせいでくぐもった悲鳴に背を向けて逃げる様にホテルへ戻った。
「どうせ…すぐ誰かが助けに来るくせに…。」
DollsGame-81.アカネ-
真似はしないで下さいね
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