さてカイトの誕生日当日。
朝食を済ませた5人は、それぞれ自分の作業に取りかかった。
ミクと双子はリビングで飾りをつけている。
数日前から空いた時間を利用し、少しずつ作っていたので
まずはそれを飾りつけ、バランスを見ながら新たな飾りを付けるつもりだ。
高い場所の飾りは、レンが、ではなくリンが椅子の上に上がり
その椅子をレンが支えながら付けていた。
椅子を支えているレンの目はキッチンへと注がれていた。
(さて、どうすっべ)
メイコの依頼通り、午後から3人で買い出しに出かけることにしているが
約束の1時間から早くても遅くてもいけない、という責任感が
早くも渦巻いていた。早いなんてとんでもないことになるし、
遅くてもまたメイコが危険な気がする。
キッチンではそんなレンのプレッシャーも知らず
カイトが料理の下ごしらえをしている。
それを正面のキッチンカウンターに座ったメイコが覗き込んで見ている。
(すごいぞメイ姉。皮も剥かないどころか、キッチンにも入らないのか)
「なあ」
ミクとリンにレンが話しかける。
「やっぱ絆創膏と皮むき器、無駄になったな」
「ううん、絆創膏は使ったみたいだよ」
「へ?」
「お姉ちゃんレシピの本をめくるのに指切っちゃったんだって」
「はあ?」
「そうそう、だからカイ兄がメイ姉に『おとなしくしてなさい』って
あーやって座らしてるんだよ」
どんだけ過保護なんだよアイツはー!とレンは呆れ返ったが
メイコが本格的にケガをして大騒動になるよりはマシかと思い直した。
このバカップルのおかげで自分に課された使命が、今はただ重かった。
昼食を終え、ミクが後片付けをしている。
「○ーゲンダッツでケーキを頼んでるから、それを取りに行くのと
飲み物とおつまみね。お酒は家にあるから自分たちが飲みたいものを
買ってきていいわよ」ルカとがくぽさんも来るからね、とメイコが
双子に説明する。それをなんとなく聞きながらレンはカイトを見ていた。
(涼しげな顔しやがって!お前のおかげでオレがどんだけ迷惑こうむってるか
知ってんのか!今回のはあくまでメイ姉のためだかんな!
お前のけしからん願いを叶える手助けをするのはホント不本意だ!!)
と鼻息も荒くカイト批判をくり返していた(あくまで頭の中で)。
カイトはそんなレンの気持ちを知ってか知らずか目が合うと手招きしている。
レンは面倒に思いながらもカイトの側へ行った。
「なに?」
「今日のめーちゃん、なんかいつもと違わない?」
「は?いつもどおりだろ。どう違うんだよ?」
カイトはレンの返事を聞き、目を伏せると
「いつもよりセクシーだなと思って」
といい悪戯っぽい顔でレンを見た。
「お前ビョーキじゃないのかーっ!!」
いつもなら「あ、そう」で適当にかわすカイトのノロケに
今日は過剰に反応してしまう。
しかも"セクシー"って、この後の予定を知っているレンにとっては
聞き捨てならないセリフだ。
「行くぞ!」
ミクとリンに声を掛けて玄関へと向かう。
片手で「お願いね」のポーズを取っているメイコが、目の端に映った。
(2時か。ってことは3時に帰ればいいわけだな)
3人はまず○ーゲンダッツに向かって歩いていた。
レンが1人で少し先を歩き、ミクとリンがしゃべりながら後ろを付いてくる。
お店の前に着くとミクが言った。
「レンくん、アイスのケーキなら一番最後に買った方が良くない?」
「飲み物が重いだろ。だからアイスケーキを先にして後からスーパーに
行くつもりなんだけど」
「えー、でも融けちゃわない?」
「ちゃっちゃと済ませれば大丈夫だろ。ちゃんと断熱容器に入ってるしさ」
だってー飲み物ゆっくり選びたいもん、とか言ってる。
(ヤバい、ピンチだぞ。今からスーパーに行ってまたここに戻るとして
速攻で行けば間に合うけど、ミク姉とリンは選ぶのに時間かかりそうだしな。
となると、二人にスーパーに行かせて、オレがこのままアイスケーキを買って
時間をつぶして帰ればいいんじゃね?)
余裕!と思って提案したレンの案は即刻却下された。
「レンくーん!女子に重い荷物を持たせて自分はケーキだけなんてズルいよー」
そうだよ!かよわい女の子なのに!と二人がブーブー言っている。
「私たちがケーキで、レンがスーパーならいいよ」リンが言う。
「それはダメだ!」レンが猛烈に抗議する。
ここで二人がケーキを受け取り、すぐ家に帰ったら
カイトとメイコの(いかがわしい)バスタイムにバッティングするに違いない。
それだけは避けなくてはいけない。メイコとの約束だ。
フルスピードで頭を働かせていると後ろから声がした。
「レンくーん!」ルカとかくぽだ。
「みんなもお揃いで、これから買い出し?」
まだ荷物らしきものを持っていない3人にがくぽが聞いた。
「うん、お姉ちゃんに頼まれて。ケーキと飲み物とおつまみを」
「二人は?デート?」
「バースデーパーティーまでまだ時間があるから
映画でも見ようかって言ってたとこなの」
二人は今話題のアクションムービーを見に行くつもりらしい。
ミクと双子も見たかった映画だ。
「いいなー!後で感想聞かせてね」とリンが言うと
「一緒に行く?」と二人が言った。
レンは閃いたとばかりにミクとリンに行ってくればいいと言った。
どうせ用意はあらかた済んでいるし、自分たちもこれを買って帰れば
あとは用はないからと。
レンも一緒に、とリンが言ったがオレはいいと断った。
ミクが「じゃあケーキは私たちが買って帰るね」と言ってくれた。
4人と別れたレンは、スーパーへと猛ダッシュした。
無事難題を解決したが時間をくってしまった。
スーパーに着くとおつまみコーナーに行った。
大人組の4人は、よくうちで飲み会をするので、だいたいの好みは把握している。
かごの中におつまみを多めに入れ、飲み物コーナーへと向かう。
2人の飲み物もほぼ分かっている。
ミクとリンは毎回時間をかけて選ぶわりに、
最終的にはだいたいいつも同じものを買っていた。
レンは手際よくかごに入れレジを済ませると店を出た。
今2時50分。
このスーパーから家まで普通に歩いて20分なので、
走ればなんとか間に合いそうだ。
と思っていると向こうから泣きながら歩いてくる子がいる。
親とはぐれたらしい。
交番ならすぐ近くにあるが家と逆方向だ。
かわいそうだが今日だけはごめん!誰かほかの人に…と思いつつ
迷子の女の子を見ていると、小さい頃リンが迷子になった時のことを
思い出した。
リンは遊園地で迷子になりああやって泣きながら歩いていたところを
レンが発見した。
リンはレンにしがみつくと「1人でいっちゃダメって言ってるでしょ!」と
まるでレンが迷子だったかのように言い涙を拭った。
あの子も、その時のリンと同じぐらいの年だ。
そう思うとほうっておけなくなった。
女の子を「ちょっとごめんね」と抱きかかえると交番まで急いだ。
おまわりさんに事情を伝え、急ぐからと念のため連絡先を教え、交番を出た。
手元の時計は57分だ。
どうあっても間に合わない。
5分ぐらいの遅れなら許されるだろうか?
メイ姉、無事でいてくれ!とがむしゃらに走って家へと急いだ。
ただ今3時3分、2月だというのに大汗をかいて肩で息をしているレンがいる。
「ただいまーっ!!!」
取りあえず大声で言ってみる。
家中に聞こえるぐらいで言わないと、もしかしてマズいかもしれない、いろいろと。
などと余計なことを画策しもう一度言っとくか、などと思っていると
「おかえり」と言う声とともにカイトが出てきた。
大声を出したレンを、なんとなく非難がましい目で見ている気がする。
カイトの髪は濡れてもいないし、別に湯上がりっぽくもない。
「メイ姉は?」意を決してレンが聞くと
「部屋」と答えた。
「どっちの?」
「メイコの」
どっちの?は墓穴だったかもしれない、と思ったが
取りあえずこの場を去りたいのでメイコの部屋に行こうとした。
「めーちゃん休んでるから、静かにしなきゃダメだよ」
「!!!!」絶句するレンに
「レンが想像してるようなことじゃないよ。
めーちゃん、調子が悪くなって。ちょっとした不具合?」
"不具合"、元がソフトウェアのメイコたちには、たまにだが原因不明の
不調が訪れる。ウィルスとかそういった重篤なものではなく。
不具合ならしばらく休むと元通りになることが多い。
「大丈夫なの?」
「うん、そんなにひどくないみたいだけど無理してそうだったから。
レンたちが買い物に出てすぐ休ませたんだよ」
カイトが言っていた「いつもと違う」というのはこのことだったのか。
レンは今更悔やんだが「ひどくない」というカイトの言葉に少し安心した。
(つづく)
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