十八枚目:
昨日の朝、三歳の妹が死んだ。
原因は、母の育児放棄によるものだった。
食事もろくに与えず、家に居る時間も次第に減った。
毎日私が、母の代わりにオムツを変えたり、
ミルクを与えたり、身の回りの世話をしていたものの、五~六歳の私が一人でするのには限界があった。
父に裏切られ、シングルマザーとなった母は、
夜の仕事をやりながら、何とか家計を支えていた。
母は、帰宅する度に、毎回違う男の人を連れてきた。
おじさん達の中には、お小遣いをくれる人もいたが、
その代償として、体を触られる事もあった。
ワンルームの小さい部屋に充満した、
煙草や香水の匂いが、私は嫌いだった。
お酒をあおりながら、母は言った。
「なんで私が、コイツらの世話なんかしなきゃいけないんだよ...」
「こんな事になるくらいなら、産まなきゃよかったわ」
「なんで私ばかり...」
「アンタさ、どっか行ったら?
正直、私といるの嫌でしょ?」
「いい?男なんて信じちゃダメ、本当の愛なんて存在しないんだから」
もうこれ以上、ここには居たくなかった。
だから今日、人生で初めて家出をした。
僅かなお金と、お気に入りの絵本を持って、
遠くの公園まで歩いた。
「お腹がすいた」
私は、うるさいお腹を両手で押さえながら、
近くにあった時計台を見上げる。
現在の時刻は、夜の七時半。
辺りはすっかり真っ暗だ。
朝から何も口にしていないせいか、
頭も痛いし、フラフラする。
水道水をがぶ飲みしても、この腹は満たせなかった。
公園を抜け、近くにあったコンビニへ立ち寄り、
おにぎりを一つ買って食べた。
寒空の下で食べる梅入りのおにぎりは、
とても美味しく感じた。
きっと今の私を見て、可哀想と思う人もいるだろうし、羨ましいと思う人もいるのだろう。
私は、夜が明けるまで幸せについて考えた。
暖かい部屋で、温かいご飯が食べられること。
友人や、家族がいること。
生きれるだけのお金があること。
安心して、笑顔でいられること。
誰かに、認められること。
考えれば考えるほど、キリがなかった。
それでも自ら死を選ぶ人がいることを
、私は疑問に思った。
気づけば、すっかり夜も明けていた。
私は、昨日から一睡もしていなかった為、
近くにあった小川の辺りで寝ることにした。
目が覚めると、空はベージュに染まっていた。
朝のうるささが、まるで嘘のように静まり返っている。
まだ、頭も体も痛い。
小川が、こっちにおいでよと呼んでいる。
私は、それに抗うことなく、ゆっくりと川の方へ、
引き寄せられるように歩いていく。
視界が少しずつぼやけていき、
とうとう私は、川に向かって倒れた。
痛みもなく、苦しみもなく、
寧ろ、気持ちのいい感覚だった。
そして、遠く意識の中で私は思った。
人は、愛されないと死ぬんだなって。
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