-混血児-
 体に力が入らない。
 手も足も、頬も額も全てが熱を持って、まるでそこに心臓があるかのようにドクドクと血が強く流れていた。息も苦しいし、のども渇いてしまってカラカラだ。
「…。…?」
 ふと目を覚ました場所はまるで見覚えのない、豪華な天蓋月のベッドの中で、周りには人が居ないらしい。誰かを呼ぼうにも声は出ない。
 けれど、ここに自分を運んだ誰かが、この家には居るということではないだろうか?
 何故こんな場所にいるのか、記憶をた繰り寄せて…。
「!…」
 思い出したようだ。
 そうして、その記憶とともにここが誰の家でここに自分を連れてきた犯人も自ずとわかってきた。――レオンだ。しかし、共犯者がいるのだろう。それにこの部屋にはオトコっぽい要素がなく、ベッドだっておとぎ話のお姫様が寝るようなひらひらのレースがついているし、本棚には数冊の本と三つのぬいぐるみがあるし、どう見ても女の子の部屋にしか見えない。共犯者は女か?
 いや、共犯者が一人とは限らない。複数名いる可能性であってある。
「…っ」
 一瞬だけ目まいがして、レンは立ち上がりかけた状態でまた倒れこんだ。
 ふかふかのベッドの中に埋もれ、何故こんなことになっているのか、どうやったら無難に脱出できるかを考えていた。いや、その前にレオンに聞いておかなくては気がすまない。この声はどうやったら治るのかを。
 不意に、部屋のドアが開いて、青みがかった銀髪の女性――いや、大人びた少女のようにも見える。第一印象では少し無表情な印象を受けたが、レンが目覚めていることに気がつくと、優しく微笑んで紅茶を運んできた。
「はじめまして、私はミリアム。よろしくね」
 あのレオンの仲間と中良子よしする気はないが、ここは友好的に見せておいたほうが後々楽になるかもしれない、レンはそっと差し出されたミリアムの細い手に自分の手を重ねて握手をした。
 それをみたミリアムは紅茶を勧めてきたが、流石に気が引けてしまう。
「あ、大丈夫。安心して。それには何も入っていないわ」
 つまり、あの紅茶には何かが入っていた、ということになる。全く、ずる賢く騙されたと思えば、こんな簡単に種明かし。彼らの脳内がどうなっているのか、わからない。
「ちょっと、まっていてね。もうすぐレオンが帰ってくるころだから。それまで、本でも読むと良いわ。どうかしら、小説なんか、読む?」
 このミリアムはなんだか嫌な感じがしないというか、オーラが柔らかいというか、ふとした拍子に気を許してしまいそうなほどだ。けれどレンは、首を横に振った。するとミリアムは少ししゅんとして、
「そうよね。やっぱり怪しいわよね。…一人になるといいわ。何かあったら、向かいの部屋にいるローラに言ってね」
 こくこくと頷いて少しでも早く一人になりたかった。

 一方、メイコ邸では、騒ぎになっていた。
「母さんっレンは?見つかったの?」
「いいえ、まだ」
 帰ってくるなり、リンはリビングにそろった面々に挨拶もなしに、そう切り出してきた。
 残念槽に首を横に振るメイコに、リンの焦りが二倍、三倍、四倍にまで膨れ上がって他の感情を隅へ隅へと押しやっていってしまう。
「どこにいっちゃったんだろう…ッ」
 そういって、頭を抱えた。
「…ねぇ。俺、少しだけ心当たりがあるんだけど」
「どこっ!?」
「同級生…?の、金髪で肌が黒い男のこのことをね、相談に来たんだ」
「ああ、それで、あの似顔絵だったのね」
 それからカイトは、レンと話したことを事細かに、一字一句もらさぬようにゆっくりと話し出した。

『――ハーフについて?』
『そう』
『何で?何か、あったの?』
『…いや…まだ』
『まだって…これから何かがあるみたいじゃないか。それに、この男の子は?だれだい?』
『…ハーフの特徴について――俺の知る限りでは、浅黒い肌と金髪になることが多く、その体のどこかに紋様上のあざがある』
『補足するなら、その傾向が見られる者については、総じて大柄だね。そして、逆に黒髪色白に、小柄と言うこともあるらしいね。その場合でもあざは見られるみたいだ』
『へぇ』
『それと、ハーフには禁忌とされているものがある。魔界の生き物と人間界の人間のハーフ、この聖界の人間と人間界の人間のハーフだね』
『禁忌?なんで』
『魔界と聖界の生き物は強い魔力を持ったものが多い。それとは逆に、人間界にいる人間は、科学力と技術力を持っている。魔法と科学はもともと、交じり合ってはいけないものなんだ。それは、遺伝子としても同じことで、禁忌で生まれた子供は混沌の象徴をもつ』
『混沌の象徴?』
『レンの耳はとがってるだろ。それと同じようにとがった耳を持って、その先のほうが真っ黒になっているんだ。それが混沌の象徴』
『へぇ』

 しばらくして、ミリアムのいったとおり、レオンは帰ってきた。
「レオン、彼が目を覚ましたわよ」
「え?そう、じゃ、会いに行ってこようかなぁ」
「待って。紅茶のカップ、下げてきてくれない?」
「わかったよ、いってくる」
 そういうと、レオンはレンが寝ている部屋と向かった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡の悪魔Ⅲ 9

こんばんはッ リオンです!
もう、話題とかどうでも良いや!今日の要約!
『きっとミリアムはお母さん役』。
もはや予想の領域です。まあ、いいですよね?いいんだ!
と、いうことで、今日もお休みなさい!

閲覧数:634

投稿日:2009/08/15 00:32:04

文字数:2,138文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    ご意見・ご感想

    みずたまりさん
    いますよね!そういう人!
    というか、嫌なことは忘れるタチなんで、私がそれに該当するのかも知れません。

    あはは、長いですねぇ。(←最期のトドメ★
    あ~。子供ってそうですよね。小さい子は特に褒めて欲しいから、言うこと聞くんですよね。
    反抗期…私はまだ反抗期を経験したことがないので、よくわかりませんが…。
    そういう感じなんですかねぇ?きっとミリアムはお母さん的存在なんですよ。怒ると怖そうですし。

    ああ、そんな!
    みていて楽しいとは、嬉しい限りです!!
    話していて楽しいというのも、嬉しいです!!
    コメントが遅くなってしまうのは、私の投稿が遅いからですし…。
    長くても短くても、コメントしてくれるだけで十分嬉しいですから!!
    気にしないでくださいね。

    2009/08/15 21:21:46

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