「なぁ、ルコさん…だっけ?一つ良いか?」
「ルコで良い。なんだ?」
「ルコ、お前は一体何者なんだ?」
「俺か?俺とテトさんはテトさんがギルドマスターの『ピースフリー』と言うギルドの人間だ」
「『ピースフリー』って言ったらのギルド4強の一つじゃないの?」
「ミク、知ってるのか?」
「知ってるもなにもこの世界じゃ知らない方がおかしいよ!まぁ…カイトは知らなくて当然かな。記憶が無いんだし…」
「あぁ、だから詳しく教えてくれないか?ルコ」
「良いだろう。だが、一つ俺からも聞いても良いか?」
「なんだよ?」
「カイト。お前は何者なんだ?お前からは皆とは違う何かが感じ取れる」
「俺は…。前に同じ事言われたよマスターに。ルコ、お前の望む答えが出ないかもしれねぇ、それに信じてくれるかどうか…」
「構わん。言ってみろ、出来る限り信じてやるさ」
そう言われてカイトは今までの事を全て話した。自分の知ってる範囲を、多少はミクにフォローされながらも。
「ふむ。お前が記憶が無いのは信じるが、なぜその剣を持っていて扱えるのかが気になるな」
「この剣…。何か知ってるのか?」
「前にギルドの図書館で見た本の中にその剣に似た記述があったような気がする。俺はあまり記憶力がないから自信は無いがな」
「ルコ、頼む!その本を一度見せてくれないか?」
「すまない。図書館はテトさんが管理しているんだ、テトさんに聞いてみないと解らない」
「そうか…」
カイトが肩を落としながらため息をつく。すると皆を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい」
「テトさん!」
空を飛ぶテトの姿が見える、まるで悪魔のような黒い羽を広げて。
「よっと…。ちょっと君達遅すぎるよ!あまりに遅いから心配して見に来ちゃったじゃないか!」
「羽…?」
「あぁ、羽?羽がどうかしたの?」
「羽が生えてる…。テトさん人間じゃないの?」
「知らなかったのか?テトさんは魔族だぞ?とは言っても完全な魔族ではない。人間と魔族が混ざった混血種だ」
「そう、僕は4年前の《1stBrake》事件の時に不思議な事に様々な力が宿るようになった。思えば世界で異変が起こったのも《1stBrake》事件以降だったね」
「そうですね。テトさんの背中にいきなり羽が生えたのはビックリしましたけど、あれが会ったからこそ、今のギルドやテトさんとの様々な思い出があるんですよね?」
「君は実に馬鹿だなぁ。あの事件で僕は君をボコボコにして血祭りにあげたのを忘れたのかい?それも良い思い出か?」
「アハハ…。あの時は町の自警団全部集めてやっとテトさんを抑える事が出来ましたからね、それでテトさんの強さに惹かれ。ギルドを結成したんですから良い思い出です。もちろんテトさんにフルボッコにされたのは苦い思い出ですけど…」
「ところで、ルコ。お前ならもう『嘆きの山』に着いてるはずだろう?今ならあいつと戦ってると思ってたから見に来てやったのに…」
「申し訳ありません。カイトの事が気になって少し話をしていました。今すぐ向かいます」
「まぁ、待てルコ。これを使うんだ」
そういうと、テトはちょっと待てと合図をすると、羽を広げ空を飛んで去っていった、しばらくするとテトは馬鹿デカイ何かを持って飛んで帰って来た。
「これは…ビッグスクーター?しかも俺愛用の…どうしてこれを?」
「君達が遅すぎるからに決まってるだろ?ギルドに3台しか無いんだから丁寧に扱うんだよ。操作は解るよね?全く人の命がかかってるのに良くそんな呑気で居られるねぇ」
「そうだ!早くしないとハクが…ルコ急ぐぞ!早くしろ!」
カイトはルコの服を掴みバイクに乗せようとする。
「バカ!落ち着けって!」
「カイトあんまり乱暴にしちゃ駄目よ?ルコさんが怪我したら誰が運転するのよ?」
「あ、そうか…。すまないルコ」
「ったく…。さぁ、二人とも早く乗るんだ!飛ばしていくぞ!」
「じゃあ僕は空を飛んで君達を追い掛けようかな?」
「テト、あんたも来るのか?」
「あいつとルコの再戦をもう一度見たいし、それにロスした分、僕が居れば早く終わるでしょ?」
「ですが…テトさん。ルカとハクはどうするんですか?」
「あぁ、気にしなくて良いよ。ちゃんとリツに任せてある」
「なら大丈夫そうですね。テトさん、皆行きますよ!」
皆が頷くのを確認してからルコはエンジンをつけ、ハンドルを握って発進した。轟音がなり響く中テトは羽を広げ静かにルコの後を追う。
「速ぇっ!なんつー速さだ!」
「きゃあ、風でスカートが…」
「なんだと?」
ルコとカイトが口をそろえて言うと、二人は視線をミクに向ける。
「見えた!縞模様だ!」
「言うな!馬鹿っ!」
言葉と共にミクのパンチがカイトの顔面に直撃する。
「おい、カイトお前見えたのか?何色だ!言え!」
「縞…」
ミクは更に笑顔でグーパンチをカイトにぶつける。
「ちくしょっー!気になるじゃねえか!くそっ!あっ!しかし俺にはテトさんと言う心に決めたお人が…あぁ!男って何でこんなに悲しいん生き物なんだぁっー」
「そうだね、悲しい生き物だよね」
声を揃えて二人を哀れな目で見るテトとミク。
悔し涙を流してハンドルを操作するルコを二人は目的地に着くまでルコを哀れな目で見ていた。
「さぁ、着いたぞ。此処が嘆きの山だ、絶対にはぐれるなよ?迷子になったら知らないからな?」
「解ったわ。さぁ、行きましょうカイト」
「あぁ、それと此処は《1stBrake》事件以降、生物が狂暴化しているから気をつけろよ」
「OK。戦いなら任せな」
「ほう、頼もしいな。では行こうか」
山へと入っていくカイト達、山は不気味な雰囲気で包まれている。カイト達はどんどん奥を目指して走って行く。
「ルコさん、テトさん。まだ着きそうに無いですか?」
「まぁ、待ちなって…」
「グオォォォォッ!」
静寂を切り裂くような地を這うような、獣のうなり声…。
「何?今の声?ねぇカイト聞こえた?」
「あぁ、何かの泣き声見たいなのが聞こえたぜ」
「ルコ…奴だな」
「恐らくそうですね…」
「何だか気味が悪いわ、急ぎましょ」
「そうしよう」
一同は早足で山を駆けていく、そして山頂に着いた時にカイト達の目の前には例の光輝く『鎮魂花』が咲いていた。
「グオォォォォッ!」
「ちっ、奴か」
「グオォォォォッ!」
声と共に近づく図太い足音、カイトとミクは初めてみる生物に度肝を抜かれていた。
「……これが、ルコの言っていた怪物…」
「ヴェルディだ」
「ヴェルディ?」
「気をつけろ!来るぞ!」
一同は剣をとり迎撃態勢をとる。そんな中、テトはちょうど良い岩場に腰をかけてカイト達を見ていた。
「嘘だろ?こんな馬鹿デカイ奴に勝てるのか?」
「カイト、喋ってると爪で引き裂かれるぞ!」
「カイト、戦いに集中しましょ、皆が居るから落ち着いて対処すれば何とかなる…キャッ!」
ヴェルディの爪がミクに向かって襲いかかってきた。
「ミク?」
「大丈夫よちょっといきなりだったからビックリしただけ。もうー。絶対に許さないわ!食らいなさい【フェアリーダンス】!」
ミクの踊るような剣さばきがヴェルディを攻撃するが、ヴェルディはびくともせず、カイト達を容赦なく襲いかかってきた。
ヴェルディの攻撃をよけながら続けてルコも攻撃を繰り出す。
「切り裂け!【旋風連斬】」
「ガァァァァッ!」
「すげぇ…一撃でぶっ飛ばした…」
「こんなもので倒れる奴じゃない!もっと攻撃を!」
チラッとテトを見るルコ。
「(テトさん、やっぱり戦う気は無いのですね…)」
「俺も負けてられるか!【牙狼殲滅剣】!」
「上手い!俺も繋げるぞ!【真空破斬】!」
「私も連携するわ!【イリュージョンダンス】」
三人の空中、下、正面からの綺麗な連撃をヴェルディに決める。ヴェルディはよろけながらもカイト達に反撃しする。
「グォォォォッッ!」
「嘘でしょ?あんなに綺麗に決まったのに…倒れないなんて…」
「やり甲斐あるじゃねぇか!しかしルコ、あんた強ぇな」
「カイト、お前もなかなかだぞ。だが、俺達が三人束になってもテトさんに勝てないだろう。だから俺だってまだまだだ!くらえ【真空破斬】!」
「テトは一体どんだけ強いんだよ!いけっ【牙狼殲滅剣】!」
「私達からすれば雲の上の存在って事みたいね、えいっ【イリュージョンダンス】!」
喋りながらも息のあった連携でヴェルディを追いこんでいくカイト達。
「ガァァァァッ!」
「一応効いてるみたいだな。このまま一気に畳み掛けるぞ!」
ヴェルディに向かって走っていくカイト。
「馬鹿っ!正面から突っ込むな!死ぬぞ!」
ヴェルディの攻撃に負傷するカイト。
「ぐぁっ!あいたたた…、痛ーなこの野郎!」
「カイトが無茶するからでしょ!全く…こういうのは正面が駄目なら横から叩くのよ!【烈華蹴】!」
ミクはヴェルディの脇腹に強烈な蹴り3発を入れると、ヴェルディは衝撃で浮き上がるが、ミクは足を捕まれそのまま前方に無造作に投げ出された。
「危ないっ!」
見事にミクをキャッチするルコ。キャッチした時の無防備な状態を狙ってヴェルディの鋭い爪がルコを襲う。
「しまっ…」
咄嗟にミクを押し出し、ミクを庇ったルコはヴェルディの猛攻を受け、地面に強く叩きつけられた。
「ルコ…」
「良いから!ミク、後ろ!」
「おっと…危ない危ない。ミク、よそ見は危険だぜ!」
とっさに現れたヴェルディの爪を受け止めるカイト。
「カイト!無茶しないで!」
「無茶はしないが…うぉぉっっ!負けるかぁ!」
カイトがヴェルディの猛攻を受ける中カイトの頭に何かがよぎる。
もう負けたくない…。神威の二の舞はゴメンだ…。大切なものを守り抜くんだ!
「この感覚…。何だ…頭に何か流れ込んで…?うおぉぉぉぉっっ!」
カイトの体から発するオーラがカイトを包む。カイトはヴェルディを一気に振り払い、渾身の一撃を繰り出す…
「奥義…【疾空瞬連殺】!」
カイトが目にも止まらぬ速さでヴェルディを切り刻んで行く。
「カイト…?何今の?凄い速さでヴェルディを切り付けていたけど…」
「いや、俺にも解らねぇ。何か急に頭に流れ込んできて…」
「カイト、お前の剣はやっぱり本物かもしれん。俺の推測に間違いがなければその剣は聖剣ラグナシア…」
「ヴェルディが逃げて行くわ」
「くそっ!逃がすな。トドメをさしてやる。行くぞカイト!」
「解ってる!(ちくしょっー身体が痛ぇ…)」
逃げるヴェルディを追い掛けるカイト達。
グシャッ…
何かの音がした。するとヴェルディが血を流し息絶えたのだ。いったい何が怒ったのだろうか。
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自称神の戯れ言に耳を貸すな
ヤツらの甘い言葉に惑わされるな
自分の正しさを武器にして
あらゆる愚行に異議を唱えても
結局自分も同じ穴のムジナだから
考え過ぎて馬鹿になってはいけない
所詮僕らは人間だ
硝子の破片を丁寧に拾っていては
誰だって生きづらいだろう...publicdomain
Kurosawa Satsuki
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