天を突きさすように、青空に向かってそびえているタワー。
タワーの真ん中には、スイカの形をした、まん丸い展望台がある。
これが今、世界で最も高い塔の「東京すいかツリー」だった。

「やっぱり、高いなあ」
パーティの会場の外に出て、テトさんは、タワーを見上げた。

近いうちにオープンをする予定の、「東京すいかツリー」。
そのふもとに、ひと足早く、新しいショッピングゾーンがオープンする。

きょうは、多くの人たちを呼んで、その“プレ・オープン”のパーティが開かれている。
彼女は、そこに来ていた。


「あのー、デザイナーのテトさんですか?」

タワーを眺めている彼女に、そう言って近づいてきた、小柄な女性がいた。
「はい、そうですけど」
「霧雨景織子(きりさめ・きょうこ)と申します。はじめまして。雑貨デザイナーをしてます」

あれ?どっかで聞いた名前の人だな…
テトさんはそう思って、あいさつを返した。
「どうも、はじめまして。重音テトです」

「いつも、すてきな雑貨を作られてて…私、テトさんの雑貨のファンです」
彼女はすこし、はにかんで笑った。
「ありがとう御座います」
テトさんも、照れて笑った。

「テトさん、いま、りりィさんやコヨミさんたちと、新しいドールを作られてるそうですね。新作、がんばってくださいね!私、応援しています!」
そういうと、彼女はパーティの会場へと戻っていった。

残されたテトさんは、ちょっとポカンとして見送った。

「ふぅん、あの人、よく知ってるわね。りりィさんやコヨミさんたちの知り合いかなぁ」
どこか変わった人、でも元気な人。彼女はそう思った。


●肉体労働もあるのよー!


「ふぅ~! 雑貨の仕事って、けっこうキビしいですねー」
レンくんは、そういうと、運んできたダンボール箱を、床にどっかりと下ろした。

「そうでしょー? こういう、肉体労働も多いのよー」
ゆくりさんが横で、箱から雑貨を取り出しながら、笑って言う。

ゆくりさんのお店「ゆっくり」で、アルバイトをはじめたレンくん。
今日は、店に入荷した商品を、売場に並べる仕事をしている。
けっこう、大きな物もあって、なかなか大変だ。

「ひとやすみしたらー?」
「はい、すいません」
ゆくりさんの言葉に、汗をふきふき、椅子に腰かけた。

お茶を飲みながら、とりとめもない話をするうち、彼はふと思い出した。
「そういえば、このあいだ行った、上海屋のりりィさんって、ほんと不思議な方ですよね。」

「あなたも、そう思うー?」
「ええ。だって、ルカさんの作る、新製品の柄を予想しちゃったりして」

「そうねー。ピクニック柄、って言ってたもんねー」
そう言うと、ゆくりさんは、ふと、首をかしげた。

「ピクニック柄…。あらー?」
「どうかしたんですか?」
レンくんがたずねた。

「思い出したのよ」
ゆくりさんは、カップのお茶がこぼれそうになるのも構わずに、言った。
「ワタシがこの前に、モモちゃんとこで見た、霧雨サンの絵。あそこにも、ピクニックを描いた絵があったわ」


●どうしようかしら…

その頃。

自分の店のスタッフルームで、店長のりりィさんは、ある雑誌を読み返していた。

その雑誌のページには、こんな見出しがあった。
「大ヒット!雑貨“メグ・ハミング”のデザイナーにインタビュー」

りりィさんは、目を閉じてつぶやいた。
「たしか、このあいだ店に来た女の子は、この雑誌で働いてるって言ってたわ」
彼女は、雑誌のページを閉じた。

「やっぱりね...ほんと、まったく。うーん、どうしようかしら…」(-。 -; )

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌(136) 2つのピクニック  (天使の雑貨と天使のバッグ ~Part8)

テトさんのファンというデザイナー、そして雑貨の新作。はて?

閲覧数:87

投稿日:2012/01/14 19:56:03

文字数:1,513文字

カテゴリ:小説

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