魔女と魔女の子分をやっつけたあの日、僕らは誓った。
ずっと、ずっと二人でいよう。
ずっと、ずっと眠り続けよう。
本当のおかあさん、おとうさんが起こしてくれるまで・・・

頬に当たる冷たい光に少年は目を開けた。
どこからか月の光が入ってきたのか、荒れた屋内を浮かび上がらせた。
(あの日もこんな月夜だったな・・・)
少年は消えかかる意識の中で思い出す。もはやひもじさやや苦痛はな
く、ただ心には空虚さのみがあった。

ガタンッ、ガタッ
「ウィ~酔っちゃった酔っちゃったァ~」
傾きかけた馬車の上、深紅のドレスを着た女性がボトル片手に上機嫌になっていた。
見るとこの女性はかなり泥酔し、豪華なドレスは着くずれ、素面の時は丹精な面立ちだろう
顔は崩れていた。おそらく、場末の娼婦といわれても疑う者はいないだろう。
「団長しっかりとしてください!ここの山道を知っているのは団長だけなんですから!」
背中に棺桶のような箱を背負った長い白髪の少女が泣きながら女性を揺すっている。
しかし、当の団長は・・・
「ゥゲェェェェ!」馬車の上で淑女にあるまじき醜態をさらしていた。
御者席で座っている青年は馬車を止めると、ヤレヤレといった表情で二人の少女に声をかける。
「ネル、テトここらで野宿できる場所を探してくれ。今夜は野宿だ」
「えぇぇぇ!今夜は団長の知り合いの家に泊めてもらう予定じゃなかった?もう少し行ってもいいんじゃない。」
ネルと呼ばれた黄色髪の少女が反論する。
「だめだ。馬も生き物だし、死んだら次の馬を調達しなければいけなくなる。今夜は休ませたほうがいい」
ネルは渋々了承する。
「わぁったよ!テト行くぞ。」「テトならもう行ったよ」

小一時間後
「家、見つけた。だれもいない。鍵閉まっている。」
「テト!うなことは見れば分かるわ!」
ネルはテトと呼んだ赤い髪の少女を叩く。
「テトは馬車を呼んできて。早く!!。」
「をーけー。」
馬車に向かうテトを尻目に、ネルはほくそ笑んでいた。
「うきききっ!カイトからは泥棒仕事からは足洗えといわれても・・・」
腰の道具入れから曲った鉄の棒を取り出し、鍵穴にはめる。
「やめられない♪止まらない♪」 カチッ!
周囲を確かめる。馬車の音はまだ聞こえない。
「お宝♪お宝♪」鼻歌を歌いながら家に音もなく入り込む。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっぁああああああ!」
辺りにネルの悲鳴ーほとんど絶叫ーが響き渡った。

「あのバカ、また空き巣狙いして!」
カイトは馬車のスピードを上げる。
「テト!見つけた家はこの道をまっすぐでいいんだな!」
「をーけー。」テトがうなづく。
バン!カイトが家のドアを開け入る。すぐさま腰が抜け動けなくなっているネルを見つける。
「ネル!!!またお前は!」
「おばっおばけヶヶ!!!!おーばーけー!!!!」
ネルが指し示す壁には何者かが座っていた。目が慣れるにつれ・・・
骨と皮だけの少女と少年が壁を背に座っていた。


僕がぼぅと窓を壁を見詰めていると黄色い髪を片方に垂らした女の人が入ってきた。
(ここは僕らの家だ!よそものは出てけ!!)
そう叫びたかった。
でも舌の根まで枯れた僕の口からはしゅーしゅーと空気しかでてこなかった。
女の人は僕らの姿を見て倒れこんだ。
(いい気味だ。そのまま死ねばいいのに)
女の人の次にきた男の人は僕とリンの体を触ってきた。

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  • 作者の氏名を表示して下さい

奇妙なサーカス ~双子~

悪ノP様の「置き去り月夜紗」を聞いた勢いでSSを書いてしまいました。

閲覧数:586

投稿日:2008/10/15 21:33:03

文字数:1,406文字

カテゴリ:その他

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