やあ諸君。吾輩は猫である。




 ここのところ、あの青いマフラーの優男がくれる食い物のおかげで体調はパーフェクトなのだが、おかげで力が有り余ってしまい、運動に明け暮れておる。




 そういえば、あの青いマフラーの優男には、いくらか年下の妹的存在の女子がいるのだぞ。青緑の長髪を、ツインテールに結んだ明るい女子だったな。






     ☆         ☆         ☆         ☆         ☆


  ○月□日 □曜日 天気 快晴


 今日はよく晴れた日だ。

 青いマフラーの優男にあってから数日、吾輩はこの街をうろうろと周っておった。

 その中で気付いたことがある。この町の町民は、大半が普通の人間のようだ。酒女や優男のような、異質な匂いを持つ者は少ないようだ。

 その異質な匂いを持つ者を全員探し出せば、何か面白いことが分かるかもしれない。

 そう思いながら歩いていた今日は、街角で人だかりを見つけた。


 『ワアアアアアアァァァァァァ………!!』


 ………何やら随分と盛り上がっているようだった。何事だろうか?

 近づいてみると、人だかりの向こうから歌声が聞こえてきた。


 「みっくみーくにしーてやんよ~♪」


 よくわからん。歌詞としてよくわからんが、なぜだか楽しくなってくる曲だな。

 人だかりの前にはステージがあり、そこで一人の少女が踊り、歌っていた。どうやらコンサートのようだ。

 とその時、吾輩は気づいた―――――その少女が、酒女や優男と同じ、異質な匂いをまとっていることに。

 こいつも同類のようだ。よく見れば、周りの客(というより野次馬)はよくある黒髪や茶髪なのに、彼女は鮮やかなまでの青緑の髪だ。しかもその髪の長さはくるぶしまで届き、それをツインテールに結んでいる。

 しかし酒女のスタンドマイクや、優男の朝の発声とやらや、このツインテールのコンサートといい、やたらと音楽に関係するものが多い。これがやつらの共通点なのか?

 しばらくして、コンサートが終わったようだ。


 「みんな~!今日はありがと~!!」


 少女が裏に引っ込むと、多くの客はニヤニヤしながら帰って行った。皆カメラを持っていたが…怪しげな匂いがする。

 おっと、それよりも今はあのツインテールだ。吾輩は舞台の裏に回った。

 ツインテールはちょうど荷物をまとめて出てきたところだった。吾輩とツインテールは、ばったり出会った。

 するとツインテールは、ぱあっと目を輝かせた。


 「きゃ~~~~~っ!!かーわいい――!!あっ、その毛色、もしかしてメイコ姐が言ってた猫ちゃんかな!?」


 メイコ姐というのはあの酒女のことだろう。ということはこのツインテールは、酒女と一緒に住んでいるのだろうか。それともこの異質な匂いを持つ者どもは、全員顔見知りなのだろうか。


 「私の名前は初音ミク!よろしくね、猫ちゃん!って、通じないか。」


 通じておるぞ。お主の名は初音ミクというのだな。吾輩は猫である。名前など必要ない。文句は受け付けん。って、こちらのほうが通じぬな。

 しかしこのミクという少女、若干天然だな。いきなり「普通の猫にしか見えない」吾輩に向かって自己紹介するとは。

 しかも言葉が通じているかどうかもわからぬ相手に向かってこの態度とは…?


 「メイコ姐やカイト兄さんにもあったんでしょ?二人とも面白かったでしょ~?」

 「あの二人の声ってすごいよね~!私も早くあれぐらいなりたいな~!」

 「あ、もしかして数日前のメイコバ―ストって猫ちゃんに撃ったりとか…してないよね~!!まさかメイコ姐でもそこまでしないよね~!!」

 「そうそう、私たちの仲間って、ああいった音波技を撃つことができるんだよ~?私もいちお~撃てるよ~!メイコ姐にはかなわないけど~。」

 「って、私何猫ちゃん相手にべらべらしゃべってるんだろう…。通じてるはずないのに…。もし通じてたら、私たちの音波技の秘密べらべらしゃべっちゃったことになるんじゃ!?…心配しすぎか。」


 完全に筒抜けであることも知らずに、ミクはいろいろ教えて(?)くれた。しかもなぜか吾輩を抱きかかえて。

 異質な匂いを持つ者はやはり皆この音波を放てるのか。おそらくミクの音波も、また違った効果があるのだろう。


 「そういえば最近、なんか私のコンサートに変な人たちが来てるのよね~。なんかカメラ下から構えて取ってて…変態だよね~。歌ってる最中だから何もできないけど…。」


 今度は愚痴り始めた。あのカメラを構えた一般人どもはいわゆる{セクシャル・ハラスメント}というやつか。まったく、人間というものは愚かだな。

 そこまで言った瞬間だった。


 「ああ――――!!見ろっ!!あの猫、われわれのミク様を独占してるぞ!!」

 「ぬうっ、本当だ!!ミク様を傷つけぬよう猫だけ攻撃―――――!!」


 突如声のした方向から、小石が的確に吾輩の額を直撃した。

 見れば、先ほどコンサートでカメラを抱えていた人間どもがたっていた。おそらく100人はいるだろう。


 『それ、もう一撃!!』

 一斉に彼奴等は小石を投げてくる。ミクには当たらぬくせに、吾輩には的確にあたってくる。

 この吾輩を傷つけるとは…おろかな人間どもめ!!

 吾輩はミクの腕から飛び降りて、全身の毛を逆立てて、場合によっては「力」を解放するつもりであった。

 しかし、そんな吾輩の前にミクが立ちふさがった。


 「…下がってて、猫ちゃん…。」


 先ほどまでとは比べ物にならぬほどの、背筋が凍るような声。そこには、明らかに何かが切れたミクがいた。


 「あたしへの想いの暴走がこれ…?あたしが抱きあげてただけの猫ちゃんを攻撃…?あなたたちに…ファンを気取る資格はない…!!見せてあげる…私の『七色の声』の一つ…『Dark』…!!」


 すぅ…と息を吸ったミクの口から出た音波は、酒女や優男とは明らかに違う声だった。


 「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオン………!!!」


 全身の毛がさっきとは別の意味で逆立った。酒女のような威力もなければ優男のような煩さもない。ただ、全身の神経を削り取っていくような、静かすぎる恐怖…!!


 「ひ…うぁ…ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」


 カメラ野郎どもは、皆耳をふさぎ、情けない悲鳴をあげて逃げて行った。

 彼奴等がいなくなった後、ミクはふぅ、とため息をついて吾輩に振り返った。そこにいたのは、先ほどの暗いミクではなく、元の明るいミクである。


 「ごめんね~。びっくりした~?」


 吾輩はまだ全身の毛が逆立ったままだった。

 とそこへ、聞き覚えのある声が。


 「まずいところを見せてしまったようだね、ミク。猫は感覚が鋭いから、君の本気にあてられてしまったようだ。」


 現れたのは、青いマフラーの優男であった。


 「カイト兄さん!」

 
 この男が「カイト兄さん」だったのか。

 カイトは近づいてきて、吾輩の目線に近づいた。


 「やぁ猫ちゃん、また会ったね。どうだい、驚いたろう?ミクは僕等とは別格なのさ。」


 ミクが顔を赤らめて否定する。


 「そ、そんな!カイト兄さんのほうが力強さがあって、すごくかっこいいよ!」

 「ありがとう、ミク。だけど実質、僕とめーちゃんは旧式で、君らは現代型だ。事実僕らより進化した存在さ。特にミクの音波の力―――――「Append」、通称「七色の声」はリンやルカよりもすぐれた力なんだ。まさに飛びぬけた存在。もっと胸張っていいんだよ。」


 ミクの顔はますます赤くなった。

 カイトは腕の時計を見て何かを思い出したような顔をした。

  
 「おっと、忘れてた。めーちゃんに芋焼酎5本買ってくるよう言われたんだっけ。」

 「兄さん…またぱしられてるの?」

 「まあね。それじゃあ猫ちゃん、また会おう。」


 カイトはさわやかな笑顔で走って行った。…パシリのくせに。


 「それじゃあ私も行くね。バイバイ猫ちゃん!」


 ミクもまた走って行った。



 まったく今日も忙しい日だった。奴らにかかわるとやたらと忙しくなる。

 まぁ、面白い情報を手に入れられるからいいか。音波の力は、やはり一人ひとり違うようだな。特にミクの「Append」とやら…調べてみる価値はありそうだな。


    ☆         ☆         ☆         ☆         ☆






 ミクの音波の力について調べるのには苦労している。




 何せまったく資料がないのだ。もしかすると、ミクが初代なのかもしれん。




 不思議な奴らだ、まったく。




 む、この声は…ミクの「七色の声」の一つ、『Sweet』だな。ちょっと聴きに行ってくるか。




 諸君、また会おう!!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

猫から見たボカロ~青緑のツインテール~

どうもこんにちは、Turndogです。

ミクさんすげええええええええ\(◎o◎)/!

ボカロ一味の音波の力の話、だんだん出てきましたね。また下のほうでお話があるみたいですよ。

…それにしても猫よ、お前は一体…?


☆豆知識其の三☆

◎ボカロ一味の音波術

ボーカロイドの皆皆には、一人ひとり違う効果を持った音波術が備わっている。

十五歳を過ぎると発現する技術である。

どうやら旧式の者たちは力任せが多いようだが、現代型に関してはかなり巧妙な技が多いようだ。

今現在わかっていることは少ないが、この後明らかになっていくだろう。


…だってこれ以上しゃべるとボカロの皆さんの核心入っちゃうんだもん。

閲覧数:435

投稿日:2011/12/16 01:04:00

文字数:3,745文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • 青蝶

    青蝶

    ご意見・ご感想

    おぉ!Append!!!!!
    Appendかっこいい!!!!

    …なんとなく、その他のボカロの音技が想像つきますww

    すごい面白いですwwww

    2012/11/04 16:31:31

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      このへんからだんだんミクさん無双です!
      かわいいとかっこいいは正義(((

      マジ!?ついちゃった!?なんてこったい考えが追い付かれてしまった(何様だ

      面白いですか!ありがとうございます!!

      2012/11/04 19:51:17

  • june

    june

    ご意見・ご感想

    なるほど、わからんよミクちゃんww


    パシリの兄さんの爽やかさ想像できるw

    めーちゃんは「姉」じゃなくて「姐」wwwそっちの方があってる気がしますがw

    2012/07/17 21:06:00

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      今でも謎です、ミク。ええいろいろとwww

      さわやかなバカイトwww

      姐御ですからwww大柄だs
      めーちゃん「メイコバ――――――――――ストゥ!!」
      ゴフああああああ!!!

      2012/07/18 10:49:21

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    音波技きたー!

    そのうち、
    気を感じるとか
    霊圧を感じるとか
    チャクラを感じるとか
    言い出しそうな予感ww


    15歳以上が覚醒時期かぁ…
    じゃぁ、リン・レンはまだなのかな?


    更新早くて嬉しいですww
    お互い、がんばりましょうw

    2011/12/16 01:45:15

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      ギクゥ!!(°Д°;)

      い…いや…そん…そんなことh
      猫「ばればれダゾ、Turndog。」
      じゃかあしいわっ!!

      しるるさんも結構更新早いですね。
      お互い頑張りましょw

      2011/12/16 19:57:17

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