第一章 ~雪国の二人~
1
そこは、城の謁見の間。
玉座には、少しだるそうにして若草色の少年が座っている。
そしてその隣では、蒼色の少女がそんな少年に軽く説教をする。
玉座に座っているところ、彼はこの国の王で、少女は彼の騎士であろう。
他から見れば微笑ましい光景だが、少年からすれば耳が痛くなってしまう状況だ。
そんな状況を切り抜けるために、
「あ、ぉお前…変わってるよな~」
と話を変える。
若草色の長髪を指でいじる彼の言葉は、かなりぎこちない。
逃げたな、と少女は思いつつ、
「…何を言うのですか、いきなり」
と聞き返す。
怪しげに此方を見てくる彼女の蒼い瞳。
くすんだ色なのに、力強く、光が宿っている。
彼はそんな瞳から逃れるため目を背け、
「あれだけ功績を上げているのに、権力も財産も要らないなんていうのはお前だけだからな」
先ほどよりは滑らかに話し、そして馬鹿みたいだと嗤った。
それに対し、
「私は貴方のお側にいられれば、それで良いのです」
と彼女は負けじと言い、こう続ける。
「幼い頃から側にいたのです。これからも変わらず…」
「あー。お前は昔から俺にべっっっったりだったからなぁ」
突然言葉を切って、彼は言う。
そんな言葉に、彼女は頬を面白いほどに紅潮させた。
――幸い、思い切り目を背けた王には気づかれなかった。――
「それは…幼かったですし…仕方ありません…」
思わず口ごもる。
恥ずかしそうに両手の指を絡ませる姿は、騎士ではなく普通の少女であった。
「あ、それとお前、大きくなったら俺の嫁になるとも…」
「あぁぁぁぁあああ!!何も聞こえませーん!」
次は彼女のほうが言葉を切る。
頬だけでなく耳までもが真っ赤に染まっている。
「何だよそれ。可愛くねぇなー」
彼は彼女の気持ちなど少しも理解してないのだろう。
ぶっきらぼうな声を出す。
「へ、陛下がその様なことを仰るからです!」
彼女は不機嫌そうに彼に背を向けて、謁見の間から出て行く。
「あ、おい!」
引き止めたとき既に彼女は、扉の向こうにいた。
(あいつはそういう所、昔から変わらないな…)
扉の向こうにいる女騎士を見つめるように、閉じた扉を見続けた。
【小説】或る詩謡い人形の記録
1ページ目。
ちょっと短い気がする…
前のバージョンで2ページ目。
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