天井と俺の頭との距離、わずか3cm。
俺の背丈は170前後だから、今までこんなに狭まったことが無い。
そして俺はそんなところから、ベッドで悶えているもう一人の俺を見ていた。
なんとも滑稽なことだ。
苦しんでいる自分を客観的にみているこの状況。
・・・いやはや、なんとも滑稽なことだ。
枕もとのデジタル時計は、今が午前6時25分であることを緑色の文字で示している。
いやしかし、なぜこうなったかは俺には分からん。
・・・分からないってことじゃないんだが。
俺は、先ほどから気付いていた右後ろにいる女の子を見た。
そいつは俺の視線に気づき、無表情のまま、目をそらされた。
その目で見ているものは、おそらくベッドの上で動かなくなった俺だろう。
死んだのか? 冗談じゃない。
まだやりたいことなんかいっぱいあるんだよ。
まだ高1だぜ? 青春真っ盛りじゃねぇか。
「平気、死んではない」
死んで「は」ってなんだよ。
俺は応答してくれたそいつに訊き返した。
「アレは寝ているだけ。いわば植物状態。」
人を「アレ」呼ばわりされムッときたが、敢えて突っ込まない。
「その状態では脳は動き続けているから、アレを本体としてBCIを働かせている」
「BCI?」
「Brain-Computer Interfaceのこと」
「わからない。詳しく頼む」
「アレを本体として、双方向インターフェース、
つまりアレとお前が一つの脳で情報を交換、共有している。
だからお前がトランスルーセント状態でありながら以前の記憶を把握できている」
電波だ。電波な言葉が俺のすっからかんの頭の中を駆け巡る。
俺は全力で理解しようと試みた。
「つまりなんだ、今ここにいる俺と、あそこで寝ている俺は、記憶や意志を同期しているわけか?」
「同期というよりは、ひとつの個体として扱っているような感じ。1つで2つ」
まぁそういうことなんだろう。
・・・そういえばこいつは初めて俺と会話した。
この前の、生物室での一件のときには本当に一言もしゃべらなかったのに。
いやしかしこいつがこんな電波娘だったとは・・・。驚いた。
それはさておき、とりあえず俺はどのあたりまで行動できるか、試してみた。
まず俺は、天井に手を触れようと手を伸ばした。
トランスルーセント状態だけに、通り抜けられるのではないか、と思ったが、
残念、白い壁紙のザラザラとした感触を手のひら全体で感じてしまった。
どうやら、物には触れられるらしい。
次に移動だ。
バタ足してみる。 ・・・見事に空回り。一寸も動けず。
平泳ぎのように手でかいてみる。 ・・・こちらもやはり動かない。
バタフライのように上半身を前にそれなりの勢いで傾けてみる。
・・・おぉ、ちょっと前に移動できた。
ほぅほぅ・・・。
「てぇい!」
とさっきよりずっと力強く上半身を勢いよく前のめらせる。
距離にして1m弱。
なるほど、疲れる。
「天井を手で押して」
うぉい、びっくりした。いきなり話しかけるなっつうの。
そいつは俺のことを見ている。
とりあえず言われたとおり、天井を手で押す。
するとどうだろう。
まるで宇宙闊歩している宇宙飛行士みたいにすい~っと移動できる。
そして流れ着いた本棚を、今度は横に押す。
おお、横に漂っている。
これスゲェ! うわぁっは~!!
・・・いやしかし待てよ。一つの疑問が浮かんだ。
「空中、つまり外ではどうやって移動するんだ?押すものなど無いぞ」
「・・・手を離した風船は、空の彼方まで、昇り続ける・・・」
やっぱりな。そのまま運良く飛行機とか飛行船とか空中都市にぶつかるまで漂うわけだ。
地上に戻ってくるまで何十年かかるんだ?
「地面への着地は?下手すると地面にのめりこむだろ?」
「・・・気合い」
気合いで何とかなるのか!? ならないだろう!?
「・・・というのは冗談で」
そんな無表情で言われたら冗談かどうかなんてわかんねぇよ。
「・・・上半身を反らせば勢いが落ちて、着地できる」
なるほど、練習が必要そうだな。
あとは、えっと~・・・。
「食事や睡眠は欲するが、別に要らない。習慣上の問題」
おっと、先に言われた。
つまり、腹が減ったからといって、食わなくても死なないわけだ。
とりあえず、今んとこ訊いておきたいことは全部訊いた。
そしてデジタル時計は緑色の文字で時を教えてくれている。
午前6時25分と。
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おもしろそうですか?ありがとうございます(笑
ちょっと自分でもわけわかんなくなりがちです。
BCI使い方いろいろあるな、なんて(苦笑
2009/10/01 01:53:46
ヘルケロ
ご意見・ご感想
展開がすごくなってきましたねw
面白そうです^^
あの少女の冗談「…気合い」には笑いましたw
BCI
やっぱり先生がテストを作る時点で忍び込むべきかとw
2009/09/30 06:01:12