これが報いなのだと

彼女がささやくのだ


見なれた森。見なれた場所。
でも、そこにあるのは見なれた家ではなくて豪奢な洋館だった。
赤い薔薇が赤い煉瓦を伝い、訪問者たちを出迎える。
私はその場所を知らない。でも知っていた。
毎夜、毎夜、私はいつもその場所に立っていたから。

私はどうやら”存在しない”らしかった。
大好きな子守唄を歌ってみても、双子には届かなかった。
どんなに恋焦がれても、あの人には私の声が届かなかった。
あの人は、命令されるがままに、淡々と料理を作り続けた。
ありとあらゆる料理を、彼は手掛けた。
その手を血で染めようとも、彼は淡々と作り続けた。
私は見ていられなかった。
あの人が手を染めてまで彼女に尽くす様を。

そう、ここではあの女性が主なのだ。
私は”存在しない存在”。
ここは、私の家ではないのだ。



これが報いなのだと

彼女がささやくのだ

”裏切り者には報いを”
あの子と、あの娘も声をそろえて彼女に従うの。

知ってしまったのだ。ああ、知られてしまったのだ。
あの二人が本当についていくべきなのは、私ではなく、あの女性なのだと。
私は見ていられなかった。
双子たちが、手を染めてまで彼女に尽くす様を。

”お暇を貰えませんか”
そう言ったあの人が双子によって引きちぎられ、あの青い髪が女の喉に消えていく様を、私はただただ、眺めることしかできなかった。
引き裂かれるべきは私なのに。手を汚すべきは私なのに。なのに私は何もできない。

私はそこに”存在しない”から。”存在してはならない”から。
私の声は届かない。私の指は、愛しい家族には決して届かない。


それが報いなのだと

彼女がささやくのだ


”ワタシノコドモタチヲカエシテ”

あの晩森に響いたあの声が、同じ声で囁くの

”アナタハドンナアジガスルノカシラ”

あの女の指が、私の外套に届かなかったあの指が、金の髪にいともたやすく到達する。陶器のように無機質な指が、あの子の髪をさらりと撫でる。

見たくなどなかった。恐怖の色に染まったあの子の瞳など。
聞きたくなどなかった。怯えたあの娘の叫び声など。

もうやめて。もう見たくない。もう聞きたくない。
私が悪いの。全て、私がこの道を選んだせいなの。だから、


だから、だからどうか

私の大切な子どもたちを殺さないで………

ライセンス

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  • この作品を改変しないで下さい
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置き去りにされたのは私

mothy_悪ノPのmoonlit bear(http://piapro.jp/content/ed3iq3b6lygmm59a)と置き去り月夜抄【リマスター版】(http://piapro.jp/content/6v8q9iyxzrscrcuq)と悪食娘コンチータ(http://piapro.jp/content/rq6z9qrf0w89wigr)が好きで卒論書きながらリピートしていたら降ってきた。
はじめての投稿なのでどきどきしてます。
そもそもテキストの二次作品はOKなんでしょうか……もし問題があればすぐ取り下げます。
自己解釈の塊なので、それでもよろしければぜひご覧ください。



コンチータの物語は、ミクが見た悪夢だったら……?

閲覧数:661

投稿日:2010/01/11 21:12:29

文字数:992文字

カテゴリ:小説

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