「あのね、私達人探ししてんの」
窓を開けていきなり、ミクと名乗った少女はそう言った。
人探し。残念だがお前らは知らない奴だし、お前の仲間のトンデモ人間なんかもっと知らん。そして何故俺は窓を開けてしまったんだ。レンの知り合い?そんなんわかんねえじゃねえか!
マズイという言葉はここまで引力が合ったのかと感心する。しかもマズイの前に親友の名前でこうかはばつぐんだ!畜生め。
と冷静になって愚痴った所、でトンデモ人間二人が家に入って来てしまったのに変わりはないので大人しくするコトにする。別に現実から逃げてるんじゃない、向き合おうとして失敗しているだけだ。
トンデモ人間その一、ミクは窓から入ってくると、ああ、足が疲れた、と言って床に座り込んだ。お前さっきまで浮いてたじゃねえか、と突っ込みたいのを押さえ、自分も座り込んで正座をした。あれ、なんで正座なんだ。まだビビッてるんだな、俺。
正座をあぐらに変えて座りなおす。しばらくしてルカと呼ばれた女が恐る恐る入ってきた。
「そんでさ、金髪の・・・そう!ちょうどレン君にそっくりの・・・、リンっていうんだけどさ、知らない?」
「知るか。そんなコトより、レンがどうしたんだ。言え」
「えええ。あ、君男なのに人のコト名前で呼ぶんだね」
「どうだっていいだろ。幼馴染なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
意味の無い会話が続く。どうやらミクとやらはレンについて多くを語る気はなさそうだ。クソ。
ああだこうだ言っている内に、傍らの女、・・・ルカだっけ?・・・が口を開いた。
「・・・ミク、話してあげなさい。私達がココに来たのはリンちゃん達の救助と・・・、カイトさんを守るためなんだから」
・・・は?
救助?守る?ワケがわからない。どういうコトだ。レンはどうしたんだ。
回らない頭を必死に回転させる。しかしわからない物はわからない。俺はフラフラする頭を抱えながら、ルカに質問した。
「・・・どういうコトですか?」
「・・・順を追って説明しましょう」
そう言うと立っていた彼女はゆっくりと座り込んだ。丁寧に足を正座させ、ゆっくりと膝に手を置く。美人は仕草まで美しいのか、とよくわからないコトを思った。
「・・・まず、あなたが一番知りたがっているレン君。・・・彼は今、私達が探しているリンちゃんと接触した可能性があります」
「・・・はあ、それで」
「・・・、簡単に申しましょう。・・・我々は人間ではありません」
・・・。
待て。
「いや、あの、それはどういう・・・」
確かに空に浮いている時点で人間ではないだろうとは思う。しかし、いきなりソッチからそう言われるとどうすればいいかわからなくなる。クラクラした頭が余計クラクラしだした。
「・・・混乱するのもわかります。しかし、今は少しばかり状況がよくありません。ですので、私達も早急に行動に出たいのです。どうか落ち着いて、しっかりと話を聞いてくださいますよう、御願い致します」
彼女は、やけに丁寧にそう言った。こちらだって落ち着いて聞きたい。しかし、脳が容量オーバーだとしつこく言ってくるのだ。できるだけ落ち着いて聞こう、ゆっくり聞いて、ゆっくり消化していけば脳だって大人しくなるだろう。そう思い、とりあえず俺は頷いた。
彼女はそれを見ると、ゆっくりとお辞儀をし、続けた。
「・・・レン君は今、人間ではない我々と接触しているとしましょう。・・・我々は人間とは違い、ある程度特殊な能力を使えるのです。その代償に、能力を使う度に体力を消費、また我々に近づく人間に悪影響を与えてしまう・・・。リンちゃんも我々の仲間・・・。そのため、もし不用意にレン君が近づいた場合、彼になんらかの影響が出ても可笑しくないのです。その上、リンちゃんはまだ子供なのです。能力のコントロールはできるものの、己の力に酔いしれ、めちゃくちゃに力を使ってしまっても可笑しくはない・・・。先程まで、能力を使いきった状態で私達と一緒にいたのです。しかし、いつの間にかいなくなってしまっていました。このままでは、リンちゃんは倒れてしまうかもしれない・・・。・・・能力は使う度に想像以上に体を蝕むのです・・・。まあ回復すれば直るのですが・・・。私達がリンちゃんを探す理由はそこにあります」
「・・・はあ」
ルカはそこまでイッキに捲くし立てると、ふう、と小さく溜息をついた。
よし、少しまとめてみよう。つまり、コイツらがトンデモ人間なのは本当。そして、コイツらが探しているリンちゃんとやらもトンデモ人間。トンデモ人間は超能力者かなんかで、能力のせいで周りに悪影響が出て、その上能力を使うと弱体化すると。そしてリンちゃんは超能力すげえ!万歳!って力を使いすぎてばたんきゅー。そのままどっかへ行ってしまった。そんで、もしかしたら行き倒れてるかもしれないから心配で探してると。
・・・でも、
「でも、それがレンとなんの関係があるんだ?てか、なんでレンがリンとやらに近づくってわかるんだよ?」
「あのね、私達、天使なんだ。もしくは守護霊」
人ん家で寝っ転がっていたミクは、仰向けのままそう言った。
何が天使だ。お前が?
「私達はねえ、一人一人守る人間がいるの。その人間のために能力を使って守ったり、逆に困らせたり、そうやって生涯パートナーとして一緒にいるの。人間は気づかないけど、私達は気づいてる。たまにパートナーを好きになる馬鹿なヤツもいるけど、実際私ら近寄ったら悪影響出るじゃん?だから無理なの。第一種族が違うしね。・・・それで、リンの担当がレンだったの。ホント、双子みたいにそっくりでさ」
ほほう。つまり俺にもそういうのがいるのか。誰なんだろう。どうでもいいコトを思っていると、ルカが続きを話しだした。
「・・・それで、リンちゃんも彼に恋をしてしまったのです。・・・彼女はことあるごとにレンに会いたい、レンに会いたいとしつこく申したので御座います。・・・彼女はレン君に隙あらば近づこうと、毎日のようレン君に近寄ろうとしては私達に見つかりまして止められていたので御座います。・・・全く、どうしようもない子だわ」
彼女はふう、と溜息をついた。成るほど、話を聞くかぎりではリンとやらはどうも元気すぎる子らしい。
「そして今回、リンちゃんはこの様に我々とはぐれてしまいました。・・・もし倒れて、そのまま放って置かれたていたとしたら・・・。・・・レン君は、自分を守るモノがいなくなってしまったがために、本能的に我々と接触しようとするはずです。だとしたらリンちゃんと接触する可能性は十分にあります。・・・そうなればリンちゃんは彼に会えた嬉しさがために能力を無茶に使うやもしれない。・・・もしそうなってしまったら、レン君に・・・リンちゃんにも悪い影響が出てしまう・・・」
ははあ、成る程ね。
つまり、
トンデモ人間達は俺達の知らない間に俺達のために頑張ってくれてる。そしたらレンの担当がリンで、その子はレンに恋してる。このリン消失事件でレンは本能的に不安を感じ、リンを知らない内に探す。そんで二人が会っちゃったら、リンが嬉しすぎて爆発すると。
・・・そういう事かな?
「なるほど、少しはわかってきた」
俺がそう言うと、ルカは、有難う御座います、と深々と頭を下げた。
「そして、レン君は今日ココに来るはずであったにも関わらず、二時間も経つというのに来ないと伺います。もうレン君は何かしらに巻き込まれたやもしれません。ですので、今回我々がカイトさんも巻き込まれぬよう保護、及びレン君、リンちゃんを捜索するよう言われたというわけで御座います」
「そうなのよ。よろしく頼むわー」
ルカはまたも深々とお辞儀をした。というのにミクは右手を振るだけでまだ寝っ転がってるだけだ。二人の激しい温度差に謎の違和感を覚えながら、俺はパンクしそうな頭をガックリと下げた。
さて、俺も面倒なコトに巻き込まれたようだ。倍、レンが心配になった。
--続く--
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