スクランブル待機室に待機してから半日が経とうとしている。
 正直、何もしないでこうして座っているだけなのは暇と言えば暇だ。
 警戒態勢など敷かれていなければ、今頃いつもの上空警戒任務で空に漂っているか、訓練用シミュレーターをやっているかどちらかだろう。
 しかしいざとなれば優先的にここに待機させられるような隊員はそれなりにここでの時間の過ごし方を持っている。読書している者、何か小声で話しあっている者、そして、
「ふぁ~~~あ……。」
 俺の横で爆睡しているこの男。
 麻田武哉中尉。実は俺と航空学校からの同期だ。こいつは昔から教官の怒号などなにかしら大きな音があると机の上でどんなに熟睡していようとすぐに飛び起き、次の行動に移れるという特技がある。実際、この前のスクランブルのときも爆睡していると思ってもアラートサイレンが鳴り出したと同時に椅子から飛び出して俺達と同じように素早く機体に向かったのだった。
 このことはソード隊だけではなく基地中によく知られていることだ。だから誰も起こそうとは思わない。
 ただ、神田少佐は前に麻田がデブリーフィングの時に目を開けて姿勢を保ったまま寝るという大技を披露した為、手元にあったファイルの硬い角の部分で思いっきり頭を殴ったという事もあり、どうも少佐だけは許してくれないようだ。しかも俺は麻田が高校、航空大学でも同じように眠り、同じように殴られるのを見てきた。つまりこいつは高校生のときから性格は何一つ変わってはいない。強化人間計画に選ばれたのが不思議でならない。戦闘機乗りとしての腕は確かなものだが任務中の私語の多さ、上官への不真面目な態度など軍人としての問題は山積みだ。これも昔から変わっていない。
 気野は腕を組んで何かを考えているようだった。いつもは頭脳明晰で冷静な彼だが時々その内面にあるユーモアな一面を見ることもできる。しかし、ソード隊が結成される前、強化人間になる前は戦闘教導隊の教官を務めていたこともあり、俺より隊長向けではないかと思うほどカリスマ性にも富み、航空学校をトップの成績で卒業したエリートでもある。はっきりいって麻田と性格が真逆であるが仲は意外と悪くない。
 そういえば……。
 「ただいまー。」
 朝美がトイレから帰ってきた。が、手になにやら奇妙なものを持っていた。
 「ミクちゃーん。今いいもの見つけてきたんだ。」
 「うん?なんだそれは。」
 「ぼくがよく読んでる本でねー。」
 そう。彼の持っているのは毎週彼がよく購読している男性誌。週刊ブレイク。
 内容はグラビアアイドルの写真の他にニュースなんかが載っている情報誌でもある。
 だが彼が行ったトイレはこの部屋に待機する隊員や整備員のために設置されたものであって売店よりは程遠い。こんなときに買いに行くことはないだろうからまさかトイレで拾ったのだろうか。
 「へぇ。これもボーカロイド?」
 「うん。弱音ハクっていってね……。」
 生まれてまだ数年しか経っていないはずのなぜ彼がこんな趣味を持っているかは謎だ。人工子宮で生まれたにしてももう物心は付いているはずだがまだ無垢な子供と精神年齢は変わらない。というか、ミクにそんなもの見せるな。
 だがミクは感心した様子でその内容に見入っていた。なぜあんなものに興味があるのだろう。
 アンドロイドの心理は人に近いものだが、ミクはどこかずれていたり一部の感情が無いように思える。昨日シャワー室で会ったときにも彼女は当然のように振舞っていた。本来の少女の感情を持っていたらパニックに陥るだろう。いや、それ以前に網走博士と一緒にいたのだ。もっとも、二人の間には何か特別な感情があるようだが。
 そもそも、家庭用ならともかく戦闘用に感情が付けられるなど異例の事だ。新しく配備されたあの四人にしてもあまりに個性的だ。
 一体何が目的なのだろうか。
 そういえば、この前夕食のときに何故ミクに感情があるのかと網走博士に尋ねた時、自分がミクを少女として作ったと言っていた。確かに外見や動きは人間そのものだが、日本防衛軍兵器開発局でそんなものを作れるはずが無い。しかし現に兵器としても高性能なミクの存在があるからこそ俺は博士の言葉を「一応」信じた。それに彼は嘘をつく人間には見えない。
 だが俺は彼女にはまだ秘密があると疑っている。機会があったらまた博士に尋ねてみるのもいいかもしれない。
 そのとき、壁に掛けてある電話から呼び出し音が鳴った。
 「俺が出る。」
 そう言って俺は立ち上がり、受話器を手に取った。
 「はい。」
 <<至急、ソード隊をブリーフィングルームに集めろ!>>
 緊張した少佐の声が出迎えた。スクランブルではないが、出撃命令かもしれない。
 「分かりました。」
 そう言って俺は受話器を戻した。
 「なんだ?!」
 瞬時に目覚めた麻田が俺を見た。
 「ソード隊はブリーフィングルームに集合しろ! 急げ!!」
 他の部隊の隊員を残し麻田、気野、朝美、ミクと共に俺はヘルメットを片手に駆け足でスクランブル待機室から出て行った。
 ブリーフィングルームでは、既に神田少佐がプレゼンの準備を万端にして俺達を待ち構えていた。
 「よし。集まったな。これより緊急ブリーフィングを始める!」
 その言葉で俺達の背筋が張り詰めた。やはり、出撃か。
 少佐は慣れた手つきでモコンで液晶画面の電源を入れるとプレゼンテーションを始めた。そこには衛星写真が映し出されていた。
 「たった今、興国領空からここに向けて多数の爆撃機とその護衛機が飛び立ったのを新型の軍事衛星「ラースタチュカ」が捉えた。恐らくこの基地へ対しての攻撃のためと思われる。既にあと三十分程でDエリアに到達してしまうところにいる。お前達にはすぐに出撃してもらい、敵のレーダーに捉えられないように迂回し、奴らがDエリアに到達したころを狙って背後から攻撃し、敵を殲滅せよ。」
 俺は驚いた。今度は最初から攻撃の命令が出たのだ。だが今回も、最終的には撃たねばならない状況だ。基地が狙われている。
 しかし気になることが一つある。少佐は新型の軍事衛星を「ラースタチュカ」と言っていたが日本はそんな名前の人工衛星は所有していないはずだ。新しく軍事衛星が配備されたという話も聞かない。
 そのうえ日本では軍事衛星はまだ実用段階ではなく実験段階なのだ。当然、打ち上げてすらいない。無論他国の詳細な情報がわかるわけがない。一体どこから……。
 俺達は次々と画面に表示される敵の詳細なデータを頭に叩き込み、ブリーフィングを終了すると急いで格納庫に向かった。
 様々な疑問を抱えたまま、俺達はこの基地を守るために出撃していった。

 ◆◇◆◇◆◇ 

 <<さあ。観察を始めますよ。しっかり記録をとらないとね……>>

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  • 非営利目的に限ります

Sky of BlackAngel 第十三話「ソード小隊」

ま、まぁツッコミどころが多いと思いますが・・・。
この程度でオドロいちゃだめよ。

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閲覧数:348

投稿日:2011/08/08 21:38:11

文字数:2,814文字

カテゴリ:小説

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