7月31日23時50分。

「……………………」

俺は自分の誕生日にもかかわらず、自分の部屋のベッドの上に体育座りで、スマホの画面を穴があくほどに見つめていた。
だがスマホの画面は黒いままで、俺の仏頂面を映すだけだった。
暫くして俺は空しくなってスマホを見つめるのを止めた。
これがにらめっこだったらスマホの勝ちだろう。

……そんなどうでもいいことは置いておいて。

何故俺が夜中に「彼女からのメールを待っている可哀相な彼氏」みたいなことをやっているかというと──いや、実際に俺は、彼女のルカからのお祝いメールを待っていた。
つまり俺は可哀相な彼氏というわけだ。
……べ、別に悲しくなんかないし!
心の中で泣いてなんかないし!
わ……笑いたければ笑えよ!

「……………………」

……何で俺は見ず知らずの奴らに泣いてないなど笑えなどと言っているのだろうか。

そのことに気がついた途端、空しさを感じて、俺は今日の昼に友人のカイトとのLINEのやり取りを思い出した。





〔回想〕

アイス兄:なあがくぽ
がっくん:何だよ
アイス兄:今年は愛しのルカからどんなお祝いをしてもらったんだ?(¬∀¬)



がっくん:



アイス兄:ちょっwwwwww誤爆してるwwwwwww

アイス兄:今更恥ずかしがりやがってwwwwww

アイス兄:末永く爆発しろくださいコンチクショーwwwwwwww



がっくん:



アイス兄:えっwwwwwww
アイス兄:えっ

がっくん:そ、その……

アイス兄:ま、まさかお前……

がっくん:【汗ダラダラで焦っているスタンプ】



アイス兄:ルカとヤったのか!?!?!?



がっくん:え
がっくん:は?

アイス兄:え、違うの?(・ω・)

がっくん:ち
がっくん:違ーよ!!!

アイス兄:えー。じゃあ何だよー(・3・)
がっくん:だーかーらー!!!!



がっくん:ルカから今日は何のお祝いも受けてないんだよ!!!!!

がっくん:【顔が真っ赤な激おこぷんぷん丸のスタンプ】

アイス兄:それヤバくね?(゜Д゜)
がっくん:やっぱり?(゜Д゜)

がっくん:【顔面蒼白で顔に縦線が引いてあるスタンプ】

アイス兄:いや、呑気にスタンプ付けてる場合じゃねーだろ

〔終了〕





スマホの電源を付けて時間を確認すると55分。
31日の終了まで残り5分。

たかが誕生日のお祝いだというのに、あと5分で自分が処刑人にギロチンで首を切られてしまうような──つまり俺は気が気でなかった。

身体中から変な汗が湧き出てくるが、俺はそれを拭うこともせずに、電源がついたままのスマホとにらめっこをした。

──俺、何か変なことしたっけ?

画面の中の数字が5から6に変わる。

──ハッ! まさかこの前、寿司屋にご飯食べに行ったときにルカのトロを食べたことを根に持って……!?

それ以外に変わらず黙るスマホ。

──あのときルカは凄い怖い顔で「次の日から巨大なマグロに押し潰される夢を見る呪いをかける」とか言われだけど……

変な汗もどんどん流れてきて気持ち悪く感じる。

──結局その呪いをかけることが出来なかったから、代わりに今年は一言も祝わないつもりなのか!?

数字が6から7に変わる。

──あああああああああああああああ何やってんだよ俺ええええええええええええええええええええ!!!!!

ゆっくりとギロチンの刃が上がっていく。

──何でルカの大好きなトロを食べたの!?

俺という死刑囚は断頭台にしっかりと首を固定されているため逃げ場はない。

──馬鹿なの!? 馬鹿なのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?

ふと高い断頭台から下を見ると、たくさんのカイトが「リア充爆発m9(^Д^)」と嘲笑っていて……たまらず舌打ちをした。

──あ、ヤベ……あと2分だ。

俺の脳内で某白と黒の旧ドラえもんボイスのクマが出てくるゲームのオシオキ用のBGMが流れ始めた。

──ヤバイ。

するとどうだろう、さっきまでの断頭台は消え去り、代わりにあのプレイヤーのほとんどがトラウマであろう野球のグラウンドになったではないか。

──ヤ、バ、イ。

このゲームを知っている人なら、俺が今ピッチングマシーンの前で磔にされていることを容易に想像できるだろう。

──ヤバババババババババババババババババババババババババry

お、俺、アポになっちゃぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!

──あと1分……あ!!

某白と黒のryがアップを始めて絶体絶命のそのとき、例えるなら5章のオシオキみたいな──とにかく絶妙なタイミングで、俺に救いの手が差し伸べられた。

その救いの手が、ルカからの電話だということは言うまでもないだろう。

俺がその電話に脱兎の勢いで出たことも。

『がっk』
「あのときは勝手にトロを食べてすみませんでしたァ──ッ!!」
『……………………え?』
「え……違うの?」
『……………………』
「……………………」

違うのかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
脳内で勝手に自分が処刑される姿まで妄想して、ホントマジ何やってるの俺!?!?!?
あああああいっそ誰か俺をとんかつにしてくれええええええええええ!!!!!

『……あ! もしかしてがっくん、私がいつまで経っても祝わないから、私がまだトロを食べたことを怒ってるって勘違いしちゃった?』
「……………………」

そのうえ図星を突かれて何も言えなくなると、電話の向こうで「フフッ」とルカの笑う声がした。

『実は私、めーちゃんと一昨日から昨日の夕方までユニバに行っていたの』
「お、おう。それは初耳だな」
『それについての感想はまた後で言うとして、そのせいで家に帰ったとたんについ寝ちゃって朝までぐっすり。おかげで31日ちょうどにお祝いの電話をかけることが出来なかったんだ』
「そ、そうだったのか……」
『でも中途半端に祝うのが嫌だったので、一番最初じゃなくて一番最後に祝おうと思ったんだ♪』
「…………」
『ということで、がっくんHappyBirthday♪』

呆然ととする俺の耳に、ルカの「あ、日付変わったよ! ギリギリだね!」という嬉しそうな声が聞こえた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がくぽ誕】dead line

がくぽ「で、ユニバはどうだった?」
ルカ「ハリー・○ッターに感動した!」
がくぽ「ハ○ー・ポッターはどんな感じだった?」
ルカ「『マグルのファンにアピールか? ポッター』!」
がくぽ「……は?」
ルカ「マル○ォイがアトラクション中に言った台詞!」
がくぽ「お、おう……」
ルカ「エクスペクト・パトローナム!」



31日が終わるか終わらないかという時間から書いた2時間クオリティのうえに安定のgdgdっぷりで、雪りんごは死にそうです(いろんな意味で)
ちなみに作業用BGMは「怪盗Fry」(いつかコレの自己解釈を書きたけどそう言って書かない可能性が大)

何はともあれ、がっくん誕生日おめでとう!
……過ぎちゃったけどね!

閲覧数:437

投稿日:2014/08/01 02:19:55

文字数:2,631文字

カテゴリ:小説

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  • ayumin

    ayumin

    ご意見・ご感想

    ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
    シリアス読んだ後だったので盛大に吹きながら読みましたwwwwwwwwwwwwww←

    がっくんと兄さんのLINE最高です光景がめちゃくちゃリアルに想像できます←
    そしてルカさんおちゃめw

    やっぱり雪りんごさんの作品好きです(いきなりの告白

    2014/08/07 21:10:22

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      去年は悲恋モノだったので、思い切ってラブコメ風にしてみましたw

      特にLINEには力を込めましたww
      ayuminさんが嬉しそうで何よりです(*´ω` *)
      茶目っ気たっぷりなルカさんも可愛いでしょう?

      お、俺も……ayuminさんの作品、好きだぜ……
      ≫まさかの彼氏役≪

      2014/08/16 14:09:09

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