リハビリ
※タイトルはわたしのためのものです。
リン中心の話なのにリン登場しません。
大学生先輩カイト×後輩リンていう前提で、カイトとレンが、リンについてあれこれ。
ごめんなさい。
「レン、ごめん待たせて」
開口一言、そういって待ち合わせの喫茶店に入ってきたカイトは若干息を切らしていた。
「リンじゃなくてよかったな。あいつに遅刻は厳禁だぞ」
「リン相手には遅刻しないよ」
「…すいませーん、チョコパフェ一つ」
カイトの奢りな、と言うと少し焦ったが自分が呼び出したことを思い出したのか、発言に後悔したのか、アイスコーヒーを注文してネクタイの紐を緩めた。
「就活かー、ゴクロウサマ」
「本当、憂鬱だよ」
他愛のない会話をして、噂のスーツ姿のカイトに目をやる。
まぁ、顔は悪くないしスタイルもいいし頭もそこそこ回るし、歌も上手いことは同じ合唱のサークルに入っている俺がよく知っている。
一つ年上の先輩なのにこんなに砕けて話ができるのは、カイトの温和な性格による所が大きい。
リンのこともあって俺には特に色々してくれるし、それを除いても男女分け隔てなく優しいことなんて、サークル内だったら誰もが知っている。
でも、その性格にリンが悩まされていることをこいつは知らない。
いつの間にか相談までし合う仲になれたことは、実は結構ありがたい。
恋やサークル、バイトや様々な私生活での悩みは最近、この先輩に全て話している。
そして話されている。
そもそも、双子の片割れ、リンがカイトと付き合い始めたのがきっかけだった。
「で、話って?どうせまたリンのことだろうけど」
「ああ…あのさ、最近リンのやつガクポと仲いいと思わないか?」
「…あー……うん」
思い返すとそんなような気が。
しかし、カイトのリンへの異常なまでの執着心というか愛情はもう聞き飽きているし、家に帰ればリンからは相談のような壮絶な惚気話が待ち受けているためいつも流すように聞いている。
まったく、たまったもんじゃない。
「やっぱそう思うよな!!」
「…また嫉妬デスカ」
「心配なんだよ」
「お前リンの彼氏だろ?もっと自信持てよ」
「そんなものあったらとっくにプロポーズしてる」
「嫁にやる気なんてねぇけどな」
生クリームをスプーンで遊ばせながら適当に返事をする。
カイトもアイスコーヒーを一口含んで、話し始める。
「最近は就活で会える時間減ったし、会ってもなんかリンぎこちない感じだし…」
ああ、それは。
「俺、嫌われたのかな?」
どうして、どうしてこいつらは。
そんな答えばかりにいきつくんだ!と一喝してやりたくなる。
ある日、家の前まで送ってもらったというリンが顔を真っ赤にして家に駆け込んできたことがあった。
すぐさま思い至った俺は、さぁ一発ぶん殴ってやろうと心に決め、カイトに何されたんだ、とリンを問い詰めた。
なかなか答えなかったリンが渋々答えたのは、スーツ姿のカイトが格好良くて普通にしていられない、とのことだった。
夜でよかった、なんて言っていたリンは恋する乙女の目をしていた。
「…そんなことないと思うよ」
「ガクポ格好良いし、会えない俺より近くにいる男の方がよかったり…」
何を言っているんだこいつは。
家でのリンの行動を盗撮して見せてやりたいくらいだ。
一緒にテレビを見ていてもいつもチラチラ携帯を気にしてるし(もっと連絡してやれ!)次の日の髪型や服装を聞かれても、そんなのカイトなら、どんなリンでも好きに決まってんだから答えようがない。
特にイベント事の前はひどい。
毎回のようにプレゼントの相談をされるから、冗談で、リンからキスの一つでもしてやれよ、なんてからかいながら言うともうひどいもんだった。
赤の絵具を顔に塗りたくったように頬を染め、無理!絶対無理!!だってね、と話を続けられそうになったから全力で止めた。
どうして俺がお前たちの営みを聞かなくてはならない。
カイトからの初めてのプレゼントらしい品のあるネックレスは(見立てがいいのが余計腹立たしい)付けては眺め、付けては眺めの繰り返しで、どうしたらこんな大切に扱えるのかと思うくらいだった。
お風呂入る時も付けてたいなー…、なんて言うリンに付ける薬はもはやない。
「リンはさ、たぶん、カイトと同じこと思ってるんだよ」
「…………」
「…今いかがわしいこと考えてたらもうリンに会わせないからな」
「考えてない!考えてないです!!」
「会えなくて寂しいのも、早く会いたいのも、声聞きたいのも、カイトがどんなリンも好きなようにたぶん、」
「ありがと、レン。もういいや」
そう言って、少し感慨深そうにストローでアイスコーヒーを混ぜる姿はやっぱり大人で、たった一つと言えども歳の差を感じた。
「そのままリンに伝えるのが一番いいと思うよ」
「俺も今そう思ってた」
ふぅ、と一つ息をつくと軽い口調でカイトが喋り始めた。
「あーあ、早く会ってちゅーしたいな」
「双子の片割れの前でそういう話は謹んでください」
なにか吹っ切れたようなカイトは満面の笑みで聞いてよ、と言ってきた。
嫌だ、と盛大に断ったのにどうやらカイトには聞こえなかったらしい。
残念極まりない。
「リンてば、未だにちゅーしようとすると顔真っ赤にして身構えるの。もう本っ当かわいくって」
「それやっぱ嫌われてんじゃねぇの?ってゆうかもう聞きたくないー!」
言いながら耳を塞ぐとチラッと見えた腕時計にはっとする。
「やべ!俺次授業だわ、行かなきゃ」
立ち上がってバッグから財布を取り出そうとするとカイトに断られた。
「本当に奢るよ。なんかスッキリしたし」
「おう!さんきゅ!リン泣かせんなよ!」
「…うん」
店を出る前にもう一言カイトに告げる。
「会う時は絶対スーツで行けよ」
返事は聞かないまま外に出た。
なんだかんだで邪険に扱いながらも応援できるのは、リンをどれだけ大切に想っているか誠実に伝わってくるから。
相談はしても、俺を通してリンの気持ちを確かめるようなことをしないから。
リンが大好きな相手だから。
このプチ騒動が終わったら、また二人から散々惚気話を聞かされることはわかりきっているのだが、二人が幸せならそれでいいか、なんて。
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