閉まるドア。
 流れ出す車窓の景色。

 ガラスに左手をついて、眺めてた。


 景色を、じゃなくて。


 空いた、薬指―――……。


*********


 出会いは15の冬。

 高校入試、開始5分。


「すいません!遅れました!」

 しん…と静まり返った教室内に、声が響いて。

 彼は荒い息で入ってきて、私の前の席についた。


―こんな日に遅れるなんて…。


 最初の印象。彼は絶対に落ちると思った。

 だけど。

 再会したのはその年の春。

 高校入学、当日。


『――新入生代表……』

 呼ばれて立ち上がったのは、遅刻してきた「彼」だった。

 * * *

「トナリ、よろしく」

 クラスは同じ、席は隣、なんて偶然。

「よろし……」
「あ!」
「……何?」

 差し出された右手に返そうとして、鼻先に人差し指が突き刺さる。

「入試の時、後ろにいたよな!」

 笑顔が綺麗、だと思った。



 彼とトモダチになるのに、時間はかからなかった。


 一緒にクラス委員やったりとか、好きなものが同じとか、いつの間にか隣で過ごす時間が一番多い相手になってたから。

「だからお前、モテないんだよ」
「アンタには言われたくないっての!」

 喧嘩してもすぐに笑い合える、心地よい関係だった……。


 * * *


 変化は17の冬。

 バレンタイン前日。


 みるみる背が伸びて、日に日にかっこよくなって、年齢問わず女の子に好かれていく彼を真横にして、私は何もできなかった。


 トモダチ、だから。


「……これ」
「え?」

 顔が見れなくて、そっぽ向いたまま差し出したチョコレート。

 バレンタイン前日にしたのは、当日じゃ彼が身動き取れないのはわかってたから。


『いつもお世話になってるし?進路別れるから、クラスも離れるし。義理チョコだから!』

 言おうと思ってた言葉、全部出てこなかった。

「まじで……?」

 かすかに震えた声に釣られて向き合えば、顔真っ赤にして、嬉しそうに笑う彼。

「オレもお前のこと、好きだ」
「………っ」

 声が出なかった。

 代わりに涙が出た。


 『義理チョコ』なんて、今の関係壊したくない私が隠した『本命チョコ』の隠れ蓑……。


 素直じゃない私を、優しい彼が受け止めてくれた。

 一番好きだと思ったあの表情で。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【歌詞創作用小説】遠距離恋愛。(1)

歌詞創作用に書いてるお話です。

《09.6.15追記》続きです↓
http://piapro.jp/content/qxdbuylydpbzfn2d

*****

イメージとかはあるのにうまく歌詞にできなくて、先にお話にしてから考えようみたいな……。

登場人物の名前がないのは仕様です。読み手様が思うキャラでどうぞ。……とか言って、高校卒業してるキャラつったら……ねぇ?(何)
書き手のイメージは、めーちゃんですが(言うのか)

そしてラストがまだ決まってません。
ハッピーエンドにするか悲恋にするか……迷う……。
タイトルは完成してから考えます。

あ、これまだ続きます。
あと2話くらいの予定…。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
お粗末様でした。

風編 哀

閲覧数:165

投稿日:2009/06/12 10:37:52

文字数:1,009文字

カテゴリ:小説

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