また朝が来てしまった。

私は今日も学校へ行く。それが私の仕事であり、使命でもあるからだ。

「行ってきます」

特に返事もない。これが日常。



人気のない通学路を歩く。

自動販売機の前に、1人の学生の姿があった。
私は歯を食いしばる。

あいつはお兄ちゃんを殺した人だ。



あれは2年も昔の話になる。



この街に引っ越してきた。

私とお兄ちゃんは、仲良しがたくさんいた学校を離れて今の中学に転校した。
私もお兄ちゃんも0からのスタートだった。



1週間、私には友達ができない。
お兄ちゃんには1人の友達ができた。

・・・それがあいつだった。

あいつとお兄ちゃんはどんどん仲良くなっていき、毎日帰りが遅くなっていった。
お父さんもお母さんも、それを良い事と捉えていたので別に怒らなかった。



2週間、私は些細ないじめに遭うようになっていた。
下駄箱の靴が無かったり、教科書が中庭の池から見つかったり。

お兄ちゃんはその事に気づかなかった。



3週間、私は肉体的ないじめにも遭うようになる。

やっとお兄ちゃんが気付いてくれた。

でも、あいつとの友情に夢中で何も手を差し出してくれなかった。



・・・ある日からお兄ちゃんとあいつが部屋に篭って、何かするようになった。

隣のお兄ちゃんの部屋からはギターの音がして、さらには笑い声が聞こえた。
なんだか悔しくて、私は小さく地面を蹴ったのだった。



動画サイトにお兄ちゃんとあいつの作った曲が投稿されたのは、その2週間後だった。
お兄ちゃんのパソコンをこっそり覗いてその事を知った。

「パラジクロロベンゼン・・・」

その歌はすごくバカバカしく、ムカついた。

何が善だ、何が悪だ。
こんな歌が晒されて、お兄ちゃんは何が嬉しいの?



いじめは日を追うごとに度を増していく。

お兄ちゃんは部屋に篭るようになった。
お兄ちゃんの部屋から、キーボードを叩く音がずっと聞こえていた。



ボロボロになっていく、私とお兄ちゃん。

ある日、叫び声を上げてお兄ちゃんが家を飛び出していった。

あいつが私の家に呼ばれて、部屋に入ってく。
そしてあいつも飛び出していく。

私もこっそり後を追う。



あいつは夜の街を駆けていく。



途中から別の道に行ってみる。

そして私は見てしまった・・・。
川に浮いているお兄ちゃんを・・・。

膝から崩れ落ちていく。



ありえない、許せない。

あいつはまだ生きている、お兄ちゃんを殺した罪人なのに。
あなたのせいで、私達の家族がどんなに苦しんだと思ってるの?



あいつがコーヒーを飲みながら空を見上げる。

遠くから車の走って来る音がする。



私はあいつを車道に突き飛ばす。



この詩に意味はあるの この詩に意味はないよ

この詩に詩は罪あるの この詩に罪はないよ

あの詩に意味はあるの あの詩に意味はないよ

あの詩に罪はあるの

あの詩の罪は・・・

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

アンチクロロベンゼン

ピアプロ初投稿作品「パラジクロロベンゼン」http://piapro.jp/t/4e06
の続きみたいなものです。

加賀峰の妹視線から書いております。

一応は曲の二次創作になっておりますが、ほとんど歌詞を拾って書いておりませんのでご了承下さい。

閲覧数:338

投稿日:2012/05/14 19:05:48

文字数:1,254文字

カテゴリ:小説

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