「オールドラジオ」(KAITOオリジナル曲 自己解釈)

―機械が無くなった、ずっと未来―

僕が生まれる前にあったと言う大きな争い。

それが終わってから、この街は大きなドーム状の壁に囲まれ、

さらにその外にも高い壁が囲み、その2つの壁の間を毎日警備員が銃を持って見張っている。

「壁の外では、人は生きてはいけない」

皆、そう教えられたから、誰も外へは出ようとしなかった。

出た人もいたが、その全てが警備員に撃たれ、血まみれで帰ってきた。

この街の偉い人が言うには、

「壁の外へ出た者が、昔のような争いの引き金になるかもしれないから、無理やり止めるために銃を使っている」

のだそうだ。

皆、争いは嫌だから賛成して、壁の中で暮らしている。

そんなある日の事だった。

引き離され、一人で生きてきたからか、いたことすら忘れていた父が、

『死んだ』と知らせが届いた。

遺言が入っている。開けてみると、白い便箋にたった一言。

『荷物を引き取れ』

なんて簡潔な遺言だろう。

封筒には、父が暮らしていた家の鍵と地図が添えられていた。

仕方なく、父の暮らしていた家へ行った。

鍵を開け、入ると玄関に手紙が落ちていた。

『私はあの壁の向こうへ行きたい』

父は、街を壁で囲む事に反対していた。

「壁の向こうを見てみたい」と、いつも言っていたような記憶がある。

とりあえず、部屋に入って、引き取る荷物をまとめよう。

部屋に置かれた机に、見たことの無い黒い箱が置いてあった。

何かの仕掛けだろうか?その仕掛けに取り付けられた鉄の棒を伸ばす。

・・・何も起きない。

<カチッ>

仕掛けの、出っ張った所に指が当たり、音がした。

突然その箱は、聞いた事の無い言葉で歌い始めた。

最初はびっくりしたが、少し慣れた。荷物の整理をしよう・・・

部屋の奥に目をやると、そこには人形が眠っている。

「・・・なんだろう?」

近付いてよく見てみると、その人形は幼い僕の顔をしていた。

よく出来ている。が、これは一体・・・?

「・・・?」

よく見ると、後ろの方から糸が出ている。隣の箱に繋がっているようだ。

箱を覗き込もうとした時、下にあった板を踏んだ。

すると突然、その箱の中で文字が光りだした。

『sleep_mode push_Enter』

「眠っている・・・モード、押す、入る・・・?」

踏んだ板を少し見てみる。

右の方に、『Enter』と描かれた出っ張りがある。

「これを押すのか?」

恐る恐る、それを押してみた。

『moves_mode』

箱の文字が変わったかと思うと、その人形は動き出して、僕を見つめる。

<コン コン>

ドアをノックする音が聞こえる。誰か来た様だ。

持っていた歌う箱を投げ出し、僕はドアへ向かう。

父の遺体が帰って来た。

2つの壁の間で撃たれたらしく、弾丸を取り出す手術をしていたらしい。

記憶に霞んでいた父の顔。本当に、もうずっと会っていなかった。

どうして僕が父と引き離されたかは憶えていない。

父の遺体を眺めていると、隣でさっきの人形が僕の顔を覗き込んでいる。

「・・・そんなに見るなよ・・・」

そう言うと、人形は目をそらした。

人形は、さっき僕が投げ出した歌う箱を抱えていた。

僕は父に尋ねたかった。「この僕の似姿に、何を託したのか」と。

父の身体に埋まっていた弾丸を握り、父が壁の向こうへ行った理由と、

この人形に託されたものについて考えてみた。

「分からないな・・・」

ため息をついてから、人形に目をやる。

「まだ、目そらしてたのか。・・・い、いいよ、ちょっとぐらい見ても・・・。」

人形は、僕の声に反応し、こっちを見た。

どうやらこの人形は僕の命令に従う様になっているらしい事が分かった。

「おじぎして。」

人形がお辞儀する。

「おきて、右手を上げて」

人形は起き上がり、右手を上げる。

「・・・もういいよ、手、下ろしても良いよ。」

人形はまた箱を抱えなおし、僕を見る。

歌う箱から流れてくるものが、いつの間にか変わっていた。

『ザ・・・だ・・・か・・・・ザ・・・も・・・ん・・・は・・・・ない・・・・・ら・・・ザ・・・』

途切れ途切れに、何か聞こえる。

『だれ・・・き・・・さ・・・・・が・・・・ら・・・・・わ・・・・・も・・・・ま・・・・す』

「・・・聞き取りにくいなぁ・・・どうやったらもっと聞こえるんだ?」

思わずつぶやくと、人形が動き出し、外を指差す。

「壁の・・・外?」

人形はうなずく。

「無理だ!壁の外へ行ったら・・・!!」

人形は、この命令を聞かずに走る。

いつの間にか、街は暗くなっていた。

「おい!・・・待てよ!!」

人形が止まる。最初からこうすればよかった。

『だれか・・・せんそう・・・・も・・・・しないから・・・・』

箱から聞こえる声が、少しはっきりしてきた。

「戦争はもうしないから・・・?」

『だ・・・・・わたし・・・ち・・・・・まけ・・・・です・・・・か・・・・きて・・・・・さい!・・・』

「私達はもう負けたんです・・・誰かきてください・・・!?」

SOSか?分からないが、助けを求める声だ。

もしかしたら、父はこの声を聞いて、壁の外へ行きたかったのだろうか?

壁の外に住む誰かを、助けるために・・・?

人が生きていけないはずのところに住む、誰かを・・・?

「よし、行こう!!」

僕は、人形を抱え、壁に向かって走った。

一つ目の壁のドアを、無理やり開ける。

ドアを潜ると、とたんに鳴り響く銃声。

僕を狙っている。

<ドンッ!!>

「うっ・・・!」

腕を撃たれた。人形が手から離れてしまった!

「先に壁の前まで行けるか?」

人形はうなずいて、走って行った。

小さいからか、玉があまり当たっていない。

警備員は人形に夢中だ。

僕は、近くの石を拾い、警備員に投げつけた。

とにかく投げて、数人気絶させる事が出来た。

銃の弾がきれたのか、殴りかかって来るのもいた。

そいつらを蹴り倒したりして、何とか人形に追いついた。

「悪い、待たせたな・・・」

体中が痛い。だいぶ撃たれたみたいだ。

人形は、幼い僕は、歌う箱をその腕に抱え、主人の言葉を待つ。

僕は、幼い僕に向かって言った。

「命令はたった一つだ

その声が強くなるほうへ」

幼い僕はうなずいて、背中から生えた筒から、物凄い風を出し、

軽々と壁を乗り越えて、消えた。

「お前、今のは何だ!!」

「いまの・・・人形か?」

「無くなったはずの機械か?」

後ろから、警備員達が迫ってくる。

僕は傷を押さえながら、振り向いて言った。

「彼は・・・いつか繋ぐ・・・だろう。断ち・・・切られた・・・全てを・・・」

傷が痛くて、細かくは言えなかった。

でもまぁ、いいだろう。あいつらに分からなくたって、何も損は無い。

「最期に言う事はそれだけか?」

僕を殺す気らしい。構わない。

だって、父がやりたかったことも、僕がしようとしたことも、

全てあの人形に託したのだから。

だから僕は、ここで朝を待とう。

壁で囲まれた、四角い空の下で―――・・・

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【自己解釈小説】オールドラジオ【KAITOオリジナル曲】

助かったかどうかは個人の妄s(ry
想像でお願いしますw

そしてブログからのコピペwwwうん、自分の。

ちなみにニコニコにあるいくつかのPVの解釈もちょっと混ぜたりしてます。

まぁ、参考程度に。ね。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

ではっ!

閲覧数:194

投稿日:2011/01/18 18:04:14

文字数:3,165文字

カテゴリ:小説

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