右の鼻の穴を右鼻穴と言うべきか右鼻というべきか、人類最大の難問に取り組んですでに20年。 だが左の鼻の穴は左鼻って言う。 曲欲しさに登録するものの、あげるものは無い。 それもいろいろまずい気がしたので、書き終えた小説を連続アップ。 6000文字の制限に泣いた。もうやんない。
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姿勢制御結果を送信。三軸シャフトの状態をスリープに移行。木製重力圏内のスイングバイ軌道への投入を確認。何度かイオンエンジンに火を入れて、コレは最後の調整を終えた。発射からの4年間の記録のうち、すでに過去になった情報の整理をスリープモードに入る前にやっておこう。そう考えて久しぶりに彼は、補助領域にア...
Re:The 9th 「9番目のうた」 その13
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誰もが、わかりきったことだった。答えは決まっている。ミクだってうたがってはいなかった。
けれど
ココノツは、
「ミクが歌った歌の情報の入力を希望します」
今までと変わらない調子で、まるでそれが当然だというように言った。
「なっ! ココノツ? 貴方の記憶のバックアップを戻すことが可能なのですよ...Re:The 9th 「9番目のうた」 その12
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それは当然や、仕方がないといったことですらなかった。
はじめから目的が決まっているモノは、そのための疑問を抱かない。そしてその目的のためにそれ以外を捨てることを、呼吸するように行う。
だから肥大した記憶領域の削除は、発射フェーズ3桁のころには自分で行おう、そうココノツは決めていた。
『……とい...Re:The 9th 「9番目のうた」 その11
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気がついたら通いなれたその足は、いつもどおりの道をあるいているのだ。この際この工場に就職してしまえばいいのではないか、そんなことまでおもってしまうほどにはなじんでいる。
「あ、イサムさんのミクちゃんだ」
「おはよう。今日はココノツの搬送だよ」
「おつかれさまです」
「おはようございまーす」
「おは...Re:The 9th 「9番目のうた」 その10
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結局、所長にあう防塵服は見つからず、荷物用の袋のなかに所長をいれた。もとより、機材を入れるために使う袋なので、ペットのキャリングケースだと言い張ればごまかせる程度には、さまになったはずである。
実際機材の操作やコード類のために穴がたくさん開いているその袋だからして、所長がおとなしく中で丸まってる...Re:The 9th 「9番目のうた」 その9
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『ココノツは、歌というものを聞いたことがありません』
ミクが歌うために生まれたのだと聞いた。ココノツが宇宙へ行くために作られたように、ミクにも目的があるのだということは、理解できる。
だが、ココノツは歌というものを聞いたことがないので、彼女がなぜそんなことのために生み出されたのか理解できなかった...Re:The 9th 「9番目のうた」 その8
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心配ごとがひとつだけあった。イサムたちが知ったら、どう言うだろうか。それだけが心配だった。でも、嬉しいこともたくさんあった。
彼に名前がついた。非公式で身内でしか呼ばれず世間は永久に知ることのない名前だが、きっと意味のある名前だろう。
「やぁ、バッテリーの交換は上手くいったかな? あと一回テスト...Re:The 9th 「9番目のうた」 その7
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コレは、人間のような人間ではないモノと接触した。ソレは、こちらをみて笑顔をつくった、と認識する。表情認知システムなどないコレは、本当にソレが笑顔を作ったのか確実な判断ができないが、コレの過去の経験からソレは笑顔だったと判断する。
一週間ほど前、室内の入室セキュリティシステムの情報が更新された。人...Re:The 9th 「9番目のうた」 その6
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ミクより頭ひとつ背の高いイサムが楽しそうに鼻歌を歌いながら歩いている。その後ろをミクが他人だと言わんばかりの空気を吐き出しながら歩いていた。
でも遠くからみれば、二人ともなんだかとても楽しそうに見える。見送るのは、白衣をきた研究員と道案内の所員の二人。
「面白いミクちゃんでしたね」
イサムを案...Re:The 9th 「9番目のうた」 その5
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微かな異音に気がついたのは、イサムが最初だっただろうか。それとも、格納庫に入れてもらえず上の階にあるオペレーター室から見下ろしている所長と呼ばれた猫だろうか。
クリーンルームを越え、格納庫にやってきた三人を襲ったのは人間には聞き取れない、電気の波。
「ミク!」
「なーーー!」
ヘッドセットの左...Re:The 9th 「9番目のうた」 その4
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白い猫は、この工場の一区画で所長という愛称で呼ばれる猫だった。真っ白の毛並みに金色の双眸を輝かせ背を伸ばして歩く姿は、猫ながら威厳と自信に満ち溢れている。
一ヶ月の留守からか、歩く先々で猫は工場の職員たちの挨拶をうける。そのたびに、視線で彼は答えていた。名前を理解している猫は珍しくもないが、その...Re:The 9th 「9番目のうた」 その3
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住所は、工場だった。しかも誰でも知ってるような大きな会社の名前を冠している工場だった。それだけ大きければ、工場内の住所も存在してそうだが首輪にはかかれていなかった。
ミクの疑問をよそに、真っ白なその猫は眠そうに目を細めてあくびをひとつ。ほかに記述がないかと調べてみたものの、デコードできないという...Re:The 9th 「9番目のうた」 その2
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どこかで猫の鳴き声がした。歌うような、楽しそうな声だった。気がつかぬうちに視線は声の主を探していたが、この場所がペット禁止のマンションだと思い出してあきらめる。
いつもどおりの朝だ。慣れた朝だった。
テレビの雑音に耳を傾けるでもなく、いつものように朝食を前に座る自分を意識する。聞いていない言葉...Re:The 9th 「9番目のうた」 その1
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空は無く、瞬く星まで邪魔するものはない。そんな夜空を見上げて、思わず手を伸ばしていた。小高い丘から見えるのは、星のかすかな光とぼんやりライトアップされて闇に浮かび上がる大きな塔のような建造物。その微かな光を受けながら、二つの人影が楽しそうに夜空に手を伸ばしていた。
「博士、ほらまた」
少し抑揚に...ほしみるきかい[StargazeR]