「KAITO、さっき、何言おうとしたの?」
同じベンチに座り、マスターが先ほどの言葉の続きを促してくる。
「べ、別に、何も…。」
気まずくなった俺は、誤魔化すことにした。だって、俺だけを、なんて…。ずうずうしいにもほどがある。
「嘘だ。」
俺の頬をがっちりつかんで、マスターは俺の目をまっすぐに見つめてくる。
「う、嘘なんて、ついてないですよ。ただ、俺は…。」
「ただ?」
やっぱり、マスターは俺達ボーカロイドを、ただのアプリケーションである俺を、人扱いしてくれる。だからだ。期待してしまうのは。マスターには、俺以外だってボーカロイドは居る。俺だけじゃないんだ。
「ただ…、寂しいなって、思ったんです。」
ちょっと恥ずかしくて、俺は視線だけをそらす。
「拗ねちゃって。子供みたい。」
くすっと笑うと、マスターは俺を抱きしめる。
そして、ぐずる子供をあやすみたいに、俺の背をとん、とん、と優しく叩く。
「安心して大丈夫よ。KAITOはね、いつまでも特別だから。」
KAITOが一番の私の相棒よ。そう、マスターが耳元で呟いてくれた。マスターには、何もかもお見通しだ。
「ありがとうございます、マスター。」
戸惑いがちに、俺はマスターの背に手を回す。
「よし、帰ろうか。」
しばらくの抱擁のあと、マスターは静かに離れた。マスターは、俺が寂しいと感じていたのを知っていたのだろうか?
「ううん、わかんなかったよ。」
俺が何を考えていたかを知っているみたいに、マスターは独り言のように呟いた。
「マスター、早く帰りましょう!」
少し先を歩くマスターにはや歩きで並び、俺はそう進言した。
家に帰ったら、妹たちや弟と、MEIKOと一緒に遊ぼう。もちろん、アイスを買ってからですよね、マスター。
――END
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氷雨=*Fortuna†
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フォルトゥーナです。お疲れ様でした!
良いですねー、こういう複雑な心境ってヤツは。(←何様)
私は冬馬さんの心理描写がすごく好きです!
そしてKAITO。やっぱり最後までアイスなのか……(笑)。
2009/04/14 16:27:40