玩具屋カイくんの販売日誌(161) “はっちゅーね”との、ひととき
投稿日:2012/07/16 21:02:24 | 文字数:1,127文字 | 閲覧数:57 | カテゴリ:小説
ナビでも家電の声でも、コトバって不思議ですね。何とは無しに、なごみます。
デフォ子さんが入居する施設、「ニコニコ・デザイナーズ・ビレッジ」、通称・ニコビレ。
ミクさんは、彼女と2人で作っている人形の“はっちゅーね”の打ち合わせに、ここに来た。
ティールームでお茶を飲んだあと、2人はニコビレの「作業室」に向かった。
デフォ子さんが部屋の引き戸を開けると、室内には先客がいた。
ファッションデザイナーのルナさんだ。
彼女は、部屋の壁にいくつか並べられたミシンに向かって、布を縫っていた。
「あ、ルナさん」
「あら、デフォ子さん。こんにちは」
手を休めて、笑顔を向ける。
「ちょっとお邪魔するね」
「どうぞどうぞ。あら、そちらはもしかして、ミクさん?」
デフォ子さんの紹介で、ルナさんとミクちゃんは挨拶を交わした。
●おぬしが開けた穴でしょ!
「ミクさんとデフォ子さんの“はっちゅーね”、楽しい商品ですね」
「わあ、有り難うございます」
彼女たちが離している間、デフォ子さんは室内の壁をジロジロと見まわしている。
「ねーえ、あのさ、変な声が聞こえる穴、ってどこだっけ?」
のんびりと、唐突に言い出したデフォ子さん。
ルナさんは、話を中断して、オヤオヤという顔をした。
「あそこの窓ぎわの下の方よ。でも、もしもし、おぬしが開けた穴ではないですか」
笑いながら言う彼女に、デフォ子さんは舌を出して、頭に手を当てた。
「んー、まあ、そうだけどさ。でも、もう、穴は空いてないね」
3人は、窓ぎわの下の方を見やる。
「そうなのよ。先週、業者の人が来て、壁の修繕をしたんですって」
ルナさんが答えた。
●おうちみたいなもんネ!
デフォ子さんは、がっかりしたように言った。
「なーんだ、そうか。じゃあ、もう、その、“謎の声”ってのは、聞こえないんだね」
ルナさんは、うなずいた。
「そうね。ここ数日は、そういう噂もないし。あたしも最近は、聞かないけど」
「あれ、そうなんですか。なんか、ちょっと、残念ですね」
ミクちゃんも、残念そうだ。
「まあ、その方がいいや。あんまり、変なことは起こらない方がいいよ」
そう言って、デフォ子さんは、肩から大きなトートバッグを下ろす。
そして、中から“はっちゅーね”の人形を取り出した。
「この部屋は、この人形が生まれた場所だしサ」
「そうね。かわいいなあ」
人形の頭をなでるルナさん。ミクちゃんとデフォ子さんは、それを嬉しそうに見やる。
その時、はっちゅーね人形が、可愛い声で、こうつぶやいた。
「そーそー。ここは、おうちみたいなもんだもんネ」
デフォ子さんはつぶやいた。
「ううむぅ。反応したな。ブキミ、ではないが、ちょい生意気だな!」(-_-メ)
作品へのコメント1
ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!
新規登録|ログイン-
ご意見・感想
今晩は!
いかにもなデザイナーの部屋って感じですね。ミシンなどでダダダダっと縫っては検証。
それと、ついに、『はっちゅーね人形』が始動ですね! これは楽しみです!
めっちゃ暑い毎日ですが、もう、本当に、ご自愛下さいませ。
ではでは~♪2012/07/16 21:23:17 From enarin
-
メッセージのお返し
コメント有難うございます。ほんと、暑いですね?。
この施設のモデルは、もと小学校の校舎を利用して、デザイナーさんが入居してるところで、たまに仕事場の公開があり、行ったことがあります。
何気に手作業とかが多くて、地味なんですよね。
でもお話の舞台には、しやすいですネ。
また感想を聞かせてください!
2012/07/16 22:11:50
tamaonion
オススメ作品10/23
-
狂い世界
お前が笑うと苦しい
この世界は黒と白に別れて
白は黒を悪だと決めつけていた
光があるから影がある
そんなことすら分からないなんて
狂い世界
-
【自己解釈】ヴェノマニア公の狂気
ヴェノマニア公の狂気
プロローグ
アスモディン地方に、ある少年がいた。
少年の名前は、ガスト=ヴェノム。
ガストは、どうも冴えない顔だった。ガストはこの冴えない顔のせいで周りに嘲り笑われていた。
【自己解釈】ヴェノマニア公の狂気
-
Twilight ∞ nighT【自己解釈】
いったいどうしたら、家に帰れるのかな…
時間は止まり、何度も同じ『夜』を繰り返してきた。
同じことを何回も繰り返した。
それこそ、気が狂いそうなほどに。
どうしたら、狂った『夜』が終わるのか。
Twilight ∞ nighT【自己解釈】
-
推し事
推しが尊い過ぎてヤバすぎる
マジでヤバいのどこがヤバいって
語彙力無すぎて
推しの良さが伝えきれない
誰か語彙力を下さい
推し事
-
幼なじみ
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
幼なじみ
-
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 2【自己解釈】
少女の後を追って建物の中に入ると、そこはまるでどこかの屋敷のようだった。
「ひ、広い…」
「…そう?普通ですよ」
「え…」
「むしろ…けっこう前に住んでた家に比べると…狭いほうです」
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 2【自己解釈】
-
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 1【自己解釈】
気が狂ってしまいそうな程に、僕らは君を愛し、君は僕らを愛した。
その全てはIMITATION,偽りだ。
そしてこれは禁断。
僕らは、彼女を愛してはいけなかった。
また、彼女も僕らを愛してはいけなかった。
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 1【自己解釈】
-
ブラックペッパーナイト/短編
夜を胸いっぱいに吸い込む。季節は冬が近く、空気は冴え渡っている。
明日には地下へ向かわなければならない。この星ほどの夜景を後にして。
ギラギラした夜景と天空の月光が、星を食うように光っている。
高層ビルの上から見る夜景って言うのは、「沈み込みたくなるような衝動」を起こさせるものだ。
「何かお願いしてみたら?」と、彼女は言う。「最期の願いくらい、叶うかも知れない」
ブラックペッパーナイト/短編
-
【KAITO】止まない雨に病みながら【オリジナル曲】歌詞
陰鬱な雨 灰色の空
窓から見てた
あなたはまだ帰らない
今日も残業なのでしょう
いつも疲れてるあなた
【KAITO】止まない雨に病みながら【オリジナル曲】歌詞
-
或る詩謡い人形の記録『終焉の歌姫』
その昔 魔物に脅え 暮らしていた時代
隻眼の魔女の元 美しい娘がいた
彼女はかつて至上の歌姫と呼ばれたが
今はもう謡わない その歌は死招くから…
呪われた 娘でも傍に置く魔女のこと
或る詩謡い人形の記録『終焉の歌姫』
雑貨の仕事をしてます。
キャラクター雑貨がらみで、キャラクターも好きです。
音楽も好きですが、好きな曲の初音ミクバージョンを聴いて感心!
ボーカロイドを聴くようになりました。
機会があれば、いろいろ投稿したいと思ってます。
宜しくお願いします。
twitter http://twitter.com/tamaonion