「ああ、リンちゃん、レン君と接触しちゃったんだ。あらら、もう駄目ジャン。仕方ないなあ。レン君と一緒に処分してあげなくちゃね」
「カイトさん!行きましょう!」
「はい!?」
「行くってドコへ?!」
「レン君の所です!早く!」
あれからしばらく月を眺めていたルカさんは、何か、ビビッと感じ取った、そんな顔をすると、そう言って勢いよく立ち上がった。雑誌を散らばしたミクと、あぐらをかいて座っていたままの俺は呆然とルカさんを見やり、二人で顔を見合わせた。いきなりどうしたんだ。こうも予想外のことが続くと頭が痛くなってくるし、話にもついていけない。
「・・・ルカ姉、レン君の場所わかったの?」
「ええ、そして今、・・・アイツが」
「アイツ?」
ほら、またワケ分からんのが出てきた。
「・・・先程説明致しましたように、我々は本来、人間と接触してはいけないのです。・・・私共は、ちゃんと上から許可を貰っているので問題ありませんが・・・、レン君はリンちゃんと許可を貰わずに接触してしまったようです。・・・これは、我々の規律を破った事になるのです。・・・そういう時、我々の一つ上の者達に、規律を破った者を排除・・・つまり罰する方々がいるのです。・・・規律を破ったリンちゃんも、レン君までも罰せられてしまうかもしれない。・・・彼らは乱暴なので・・・。だから早く行かないと。彼らにも二人の居場所がバレてしまったようです。我々も二人の居場所がわかりました。ですので早く、早く行かないと・・・!」
ルカさんはそうイッキに捲くし立てると、先程二人が入ってきた時から開けっ放しの窓に手をかけた。どうやら本当に急がないとヤバイらしい。
「ルカ姉、それって、グミ達が・・・!?」
「そうよ、早く、カイトさんも!」
そう言ったルカさんは、窓から身を乗り出した。そして、ゆっくりと下へ、身を降ろしていく。危ない、そう思って近寄ったとき、窓から小さな風がひゅう、と吹いた。なんだ、そう思う間もなく、次の瞬間にとても強い風が吹いた。思わず両腕で顔を覆う。ゴオウ、と音が聞こえる程に、風は室内をぐるぐると巡っていた。先程ミクが散らばしていた雑誌が、ぐしゃぐしゃになって旋回しているのが顔をふさいでいた両腕の隙間から見える。そうこうしている間に風はどんどん強くなり、俺は目も開けられなくなってしまった。この風もコイツ等の力なのか。
「ルカさん、ミク!」
目が開けられない。大きく声を振り絞りながら、片腕を必死に伸ばす。風の抵抗が強いせいで、うまく前に突き出せない。
「何してるの!こっち!」
ミクの声が遠くから聞こえた。そう思うと同時に、伸ばしていた俺の片腕がぐいっ、と誰かに強くつかまれた。そのまま強く引っ張られる。そうすると風が強よすぎるもんだから体が宙に浮いてしまった。
・・・待て。
浮 い た ?
!!!
「えええぇぇぇぇぇぇえええ!!?」
「ああ、もう、うるさいわね!」
「カイトさん、落ち着いてください!大丈夫ですから!」
「これが落ち着けるかああ!!」
ルカさんとミクは慣れているのか、極めて普通に話しかけてきた。どういう事だ。そうか、さっきも浮いてきたんだった。って冷静に何考えてんだ俺ええ!!
そんな事を思っている内に、ブワッ、と音が聞こえ、風が静かになった。しかし体は浮いたままだ。なんだ、なんだ、ぐるぐるした頭を持ち上げ目を開けると、
・・・広い、綺麗な夜景が広がっていた。
焦っていた心が、スーッ、と静まっていき、逆に興奮が湧き上がってきた。
「しっかりつかまっててよねー、あ、窓開けたままだ。まいっか」
俺の片腕はミクにしっかりと握られていて、そのまま空高くを飛んでいた。なんだこれ。こんなアニメを見たことあるような無いような。
・・・しかし、上空を飛ぶのはいい気分だった。広い夜空の闇を横切って裂いていく感覚は悪いものではない。風を胸一杯に吸い込んで吐く、それだけでヤケに清々しい気持ちになった。
「よし、急ぐわよ!グミには色々ムカついてんだから!」
ミクはそう言って、俺の腕を強く掴んで旋回し始めた。目が回ってるんだがそんなことお構いなしにぐるぐると回る。やめいと言うこともできない。遠くでルカさんの笑い声が聞こえた気がした。
それでも夜空は、ステンドグラスを粉々にして散らばしたようで。
それはとてもとても。
--続く--
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