私は自分を殴りつけたい気分だった。愛する娘にも、娘が愛するあの少年にも、憎まれて仕方がない。言い訳がましいことだが、こんなことはしたくなかった。立場を使ってあの少年を苦しめ、殺してしまったのだ。
 あの時少年に殴られた生傷が、ずきずきと痛む。
 ノックをする音がした。
「入れ」私は溜息混じりに行った。
私の自室に入ってきたのは、兵士だった。
「先ほどガス室へ入れたものたちは、全員死にました」そう告げた兵士の顔は、快活そうだった。
「・・・・そうか・・・・」私は両手を組み、祈りを捧げるようにうつむいた。
「――それから、こんなものがガス室に落ちていました」
 兵士が差し出したのは、一つの紙飛行機だった。ところどころに、黒っぽくなった血がついている。
「ああ・・・・それは私が入れたものだ。私が預かろう」
「え――?」兵士は不意をつかれ声を上げたが、すぐに仕事口調に戻った。「ええ。分かりました」
 私は紙飛行機を見つめて、少し黙り込んだ。そしてまた、重々しく口を開く。
「・・・・ガス室に入れた、金髪の少年のことだが――」私は下を向いたまま行った。
「ああ、あの緑の目の髪が長い奴ですか?あいつなら、他の奴と一緒に死にました」兵士はせせら笑いを口元に浮かべて言った。
「あの少年を、“上”に気づかれないようにガス室から運び出して、埋葬しろ」なるべく無感情な声を作った。
「なんですって!?」兵士はかなり憤慨して、聞き返した。「しかし、将校――」
「黙って言うことを聞け!将校命令だ・・・・」私はまだ下を向いていた。
「・・・・分かりました。では失礼します」
 兵士は一礼し、首をかしげながら部屋を出て行った。
 私は机の上にある、くたびれた紙飛行機を取り上げた。自分の娘であっても失礼なことだ、と分かっていたが、紙飛行機を開き、血で読みにくい字を読んだ。リンに宛てた、少年の手紙だった。

    For you
 だんだん状況が苦しくなってきたんだ。
 僕の知ってる人たちも殺されているみたい。
 生きてるのかどうかも、知らされないから・・・・・。
 でも、僕は大丈夫だよ。
 前に君が、僕がはじめての友達だって、そう教えてくれたよね?
 今の僕にとっても、友達は君しかいないんだ。
 だから早くここを出て、君といっぱい話したいな。約束してくれる?
 じゃあ、また明日。あの場所で。
            Friendship from

 目頭が熱くなった。リンは、本当に素晴らしい友達を見つけた。それなのに・・・・私は何てことをしてしまったのだろう・・・・。リンの病状が悪化しようと、あの子は命より大切だと思えるものを見つけたというのに、私は――・・・・。
 後に残ったのは、後悔と自責の念だけだった。

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  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

囚人―Prisoner―13#追悼

個人的にパパは大好きです。
なのでパパだけの章を書いてみました。
この章は最初から思い描いていたので、
書くの楽しかったです。でも辛かったorz
あと残るは2章なので、
最後までお付き合いくださると、本望です。

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閲覧数:968

投稿日:2009/07/10 01:05:54

文字数:1,159文字

カテゴリ:小説

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