唇を重ねたまま指先で肌に触れると、ぴくんと彼女の体が跳ねた。
照明を落とした室内でも、彼女の瞳が潤んで頬が紅潮しているのが分かる。始まる時恥ずかしそうに目を伏せるクセが愛しくて、わざと音を立てて頬に口付けた。
頬から耳、耳から首筋へとキスを降らせ、もう一度唇に戻る。キスを交わすと触れ合った場所から熱が移って、柔らかいその感触を確かめながら彼女の服に手を掛けると、彼女が小さく笑みをこぼした。
「カイトの手、冷たい」
「ごめん、いやだった?」
「ううん、ひんやりして気持ちいい」
「ならよかった」
彼女の衣類を優しく取り払ってから自分のTシャツを適当に脱ぎ捨て、彼女の体にかぶさって直接肌と肌が触れ合うと、「冷やっこい」と嬉しそうに俺の背中に腕が回る。最近は寝苦しい夜が続く。冷えピタ代わりにどう、と尋ねると、こんなおっきな冷えピタじゃ私が潰されちゃうわと彼女が返して、俺たちは笑いあった。
「そういえば今日ね、レンに変なこと聞かれたわ」
「変なこと?」
「うん。『夏場にカイト兄が引っ付いて、暑くないのか』って」
「…へぇ」
あいつ、俺がいないところで彼女にそんなことを。
確かに夏場は彼女が薄着になるため、そんなの目の毒だよとか適当なことを抜かしてお構いなしに引っ付くことが多い。まぁ冬だって寒いから暖めあおうとか適当に理由を付けて引っ付いているわけなんだけど。とりあえず彼女に余計なことを聞いたレンには明日愛情たっぷりの抱擁を朝イチで贈ってやろう。
「…それで、めーちゃんはなんて答えたの」
華奢な体を抱いたままころんと横になる。俺の左肩にちょこんと頭を乗せ、彼女がぐりぐりと額をこすりつけた。
「んー、体温低いから冷たくて気持ちいいわよって」
「え?」
「え?」
「そう言ったの?」
「うん」
予想外の返答に思わず目が泳ぐ。
今けろりと答えたけど、それって。どう考えたってそういう意味にしか取れない。
それとも俺の邪推?いやいやでも今のは思春期ど真ん中の弟にとっては刺激が強いっていうかなんていうか。
「…レン、そのあとなんて?」
「『あっそう』って言って、部屋に戻ったわ」
「それだけ?」
「うん」
どうして?という問いかけに答えを持ち合わせていない俺は、なんでもないと誤魔化すのが精一杯だ。
歯切れの悪い俺をきょとんと見つめ、彼女は首を傾げる。
…ああもう、普段しっかり者のくせに、なんでこの人はたまにこう、無防備なんだろう。
――これだから、いつまで経っても俺は君に敵いやしないんだ。
「…めーちゃん」
「なぁに」
「…いや、やっぱいいや」
「なによ」
「なんでもないです」
「なによ、言いなさいよ」
「んー、言っても怒らない?」
「怒らないわよ。だから早く言い」
「好きだよ」
今度は彼女が予想外だったのだろう。絶句した後、今まで以上に頬に朱が差して彼女が目を丸くする。
その様子を見て満足した俺はにっこりと微笑んで、手持ち無沙汰だった右手をようやく彼女の体に添わせた。可愛い声が唇から漏れて、その一滴さえも零さないように、俺はまた唇を重ねた。
彼女の高い体温。
俺の低い体温。
肌を重ねればそれは溶け合って、やがて同じ温度になる。体も心も一つになって、俺たちは世界に二人きりになって。
ほら。
もう、君のことしか考えられない。
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A 聞き飽きたテンプレの言葉 ボクは今日も人波に呑まれる
『ほどほど』を覚えた体は対になるように『全力』を拒んだ
B 潮風を背に歌う 波の音とボクの声だけか響いていた
S 潜った海中 静寂に包まれていた
空っぽのココロは水を求めてる 息もできない程に…水中歌
衣泉
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ご意見・ご感想
マーブリング
ご意見・ご感想
熱い2人に、朝からニヤニヤしちゃいました\(//∇//)
キョン子さんのカイメイは、元気がでますね。
毎度ステキなお話をありがとうございます!
薄い本に、根を詰め過ぎないようお気をつけください。でも、楽しみにしてます(*^^*)
2011/08/11 08:19:15
キョン子
>マーブリング様
いつもメッセージありがとうございます!
今回は最初からめーちゃんがデレている糖度高めの作品でしたが、そういってもらえて嬉しいです!私こそいつもマーブリング様からのメッセージに元気を頂いております!//
いかんせん初めての薄い本なので、不安ばかりが先に立ってしまい…(;ω;)たまに短編を書いて気分転換をしないと頭が飽和してしまいそうで…
カイメイの気分転換がカイメイという辺りが完全に病気ですがww
長編でも短編でも、少しでもより良いものが書けるよう頑張ります!
追伸:
携帯からの投稿のため、なんだから送信を幾度かミスった気が致します…申し訳ありません!
2011/08/13 08:00:50