ずっと二人で一緒にいようと約束した。
 鏡で写したようなもう一人の自分
 いつまでも、変わらずに一緒だと思っていた。


 リンとレンは双子の姉弟だ。
 両親は、自分たちのことに忙しい人たちだったようで、リンはあまり構ってもらった記憶がない。それでも、リンは寂しくなかった。
 それは、まるで生き写しのような、もう一人の自分――弟のレンがいたからだ。
 二人でいたから、リンは寂しいと思った事はなかった。きっとレンも同じだろう。

「ねぇリン、今日はどこにいくの?」
「『ぶとうかい』ってところにいくんだって。ごちそうがいっぱいあるってママがいってたよ」
 リンは、レンの手をつかんで、仲良く両親の後ろをついていく。
 幼いころは、男の子より女の子のほうが、成長が早いのが一般的だ。二人も例外ではなく、姉であることもあり、リンはいつもレンのお世話をみてあげていた。

 舞踏会の会場は、豪華なシャンデリアが華やかな光を放っている。
 中央のダンスホールでは、色とりどりのドレスを身にまとった女性たちが、男性にエスコートされて踊っていた。
 おとぎ話の世界に迷い込んだような光景に、リンは目を輝かせていた。
「レン、すごいねぇ!」
「うん」
 レンは生返事を返して、バイキング料理に夢中になっている。しかし、そんなことも気にならないくらい、リンはダンスホールにくぎ付けだった。
「いいなぁ……私もあそこで踊ってみたい。」
「リン、踊りたいの?踊りにいくの?」
 バイキングに夢中になっていたレンが、その呟きを聞いて、不安な面持ちでみつめてきた。自分が一人でここに取り残されてしまうのではないかと思ったようだ。
「いかないよ。ママに、ここで良い子にしててっていわれているし……それに、リンの相手をしてくれる人なんていないもん」
「相手がほしいの?じゃあ、ぼくがリンと踊ってあげる!」
 レンは、持っていた皿を近くのテーブルに置きにいき、空いた手を差し出してきた。
「ほんと?」
「うん!」
 満面の笑みで差し出された手を取って、二人でぎこちなく前後左右にステップを踏んだ。


「今日はすごかったねぇ!」
 家に帰ってからも、リンの興奮は収まらなかった。
 二人で同じベッドに横たわりながら、楽しげに話しかける。
 ダンスとはとても言えないような出来だったのだが、リンには『舞踏会でダンスを踊った』という事実が重要なので、十分満足だった。
「リンがうれしいなら、来年も再来年も、ずっといっしょに踊ってあげる。」
「ほんと!約束だよ!」
 二人は指きりげんまんをして、微笑んだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【勝手に妄想】アドレサンス【1】

Dios/シグナルP さんの『アドレサンス』を聞いて、どうしようもなく書きたくなった。妄想はなはだしくてすみません。後悔はしていない。

つづきものです。

閲覧数:1,635

投稿日:2010/09/22 21:31:24

文字数:1,089文字

カテゴリ:小説

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