私は,円尾坂の上に住む,仕立屋の女主人

そんなに,儲ってるお店じゃないから毎日,一所懸命,一生懸命頑張らないといけないの
周りからは『シザーさん』とか呼ばれたりしてるわ

『あそこの子は,容姿も整ってるし,性格も良い。しかも,腕も確かなもの。
 絶対良いお嫁さんになるわね』なんて,言われてた

私自身,そんなに意識はしてないんだけど……
そんなこと言ったら『またまたぁ,謙遜しちゃってー』とか言われるんだけどね



そんな私の今の悩みごと
それは愛するアノ人の浮気症
とっても良い男なのよ

容姿
性格
仕事っぷり

どれを取っても満点をあげれる人なんだけど……
ねぇ
本当,嫉妬しちゃうわ
私というものがありながら最近はもう,家にも帰ってこない……
はぁ……
まぁ,これもアノ人の魅力といえば魅力なんだけどね……
何ともいえない気持ちね







あら,私としたことが布が足りなくなっちゃったわね……
下町に買いにいかなくちゃ


今日も平和なこの町
今まで大きな事件が起きたなんて聞いたこともない
女性でも夜に心配せずに出歩けるのよ
私はこの町が大好きよ



あ……
あそこにいるのはアノ人!
久し振りに顔を見た気がするわ
もう!
今日こそガツンと一発言ってやるんだから!


あ……
あ………
あ…………

あははぁ?
うふふぅ?
なんでかなぁ?

アノ人の隣にいるその女はだぁれ?


真赤な綺麗な着物を身に纏った短髪の女
私は,そんなに稼ぎが無いからそんなに高価な物を買えないのを知ってて……

!

そんなにくっついて……
嗚呼……
見てられない……


私は,その場を走って逃げ去ったわ

悲しかった
哀しかった
悔しかった
苦しかった

恨めしかった
怨めしかった



走って走って家に帰った私
あんな,悲しいことがあったけど仕事は頑張らなくちゃいけない……
頑張ってお金を貯めなきゃ

別に『お金』が欲しくて働いてるんじゃないわよ?
母様の形見の鋏
これが私を働かせる
これが私の働く理由
この店は元は母様の物だったから
それを受け継いで私もやってるだけ

それと,アノ人にふさわしい女になるために……



今日は普段,布屋で買うような薄っぺらい布じゃなくてもっと上等な布を手に入れ
たわ
綺麗な綺麗な真赤な着物

ちょっと穴が開いちゃってるわ……
まぁ,安く手に入ったものね
でも,使おうと思うと穴を塞がなきゃ……







あら,私としたことがまた,布が足りなくなっちゃったわね……
下町に買いにいかなくちゃ


『シザーさん,シザーさん』

何かしら?

『何かね,下町で事件が起きたらしいよ』

まぁ! 平和なこの町で?

『うん』

窃盗とかかしら?

『ううん,殺人みたいだよ?』

さ,殺人!?

『うん,シザーさんも,下町行くんだったら気をつけてね!』

ありがとうね



恐いわね……
殺人だなんて


現場には人だかりができてて,道を進むのが少し大変……
橋を渡らないと,お店には行けないのに,橋の前に人だかりが出来ちゃってるもの
だから
もう

あ……
あそこにいるのはアノ人!
久し振りに顔を見た気がするわ
もう!
今日こそガツンと一発言ってやるんだから!


え……
え………
え…………

えへへぇ?
いひひぃ?
どうしてかなぁ?

アノ人の隣にいるその女はだぁれ?


緑の帯を身に纏った緑の髪が綺麗な女
私は,そんなに稼ぎが無いからそんなに高価な物を買えないのを知ってて……

!

そこの女!
どうしてそんな悲しそうな顔をしてるのよ!
何で泣き出しそうなのよ!
泣きたいのはこっちよ!!
嗚呼……
そういう子が好みなのね……
私みたいな気の強い女より,そこの女みたいな弱々しい子が好みなのね!!


私は,その場を走って逃げ去ったわ

悲しカった
哀シかった
悔しかっタ
苦しかッた

恨メしかった
怨めしかっタ



走って走って家に帰った私
泣きながら走ったわ
眼が真赤になったけど,仕事は頑張らなくちゃいけない……
お客さんも来るし,来なくても今日は仕事が一つ増えたの
今日手に入れたのは普段,布屋で買うような薄っぺらい布じゃなくてもっと上等な

綺麗な綺麗な緑の帯

ちょっと綻びが出来ちゃってるわ…………
まぁ,安く手に入ったものね
でも,使おうと思うと綻びを直さなきゃ……







あら,私としたことが裁縫針が足りなくなっちゃったわね……
どのお店に行けば売ってたかしら?
とりあえず,下町に買いにいかなくちゃ


『シザーさん,シザーさん』

何かしら?

『下町でね,また事件が起きたらしいよ』

まぁ! また!

『うん』

もしかして,また殺人とかかしら?

『うん,殺人みたい』

怖いわね……

『うん……シザーさんも,下町行くんだったら気をつけてね!』

ありがとうね



恐いわね……
再び殺人だなんて



現場には人だかりができてて,道を進むのが少し大変……
道を通ったら……
あ,そうだわ
あの裁縫針は特別に簪屋に頼んでたんだったわ!

あ……
あそこにいるのはアノ人!
久し振りに顔を見た気がするわ
もう!
今日こそガツンと一発言ってやるんだから!


う……
う………
う…………

うふふぅ?
おほほぉ?
なんでなのかなぁ?

アノ人の隣にいるその女はだぁれ?


まだ小さな子供よ?
そんな子に黄色い綺麗な簪を買い与えて……
私は,そんなに稼ぎが無いからそんなに高価な物を買えないのを知ってて……

!

一体何をしようというのよ!
子供も子供よ!
アノ人と一緒にいれるんだからもっと楽しそうな顔をしなさいよ!
アノ人も何を考えているの?
そんな子供にまで手を出すようになってしまったの?
嗚呼……
本当に見境がないのね……


私は,その場を走って逃げ去ったわ

悲しカッた
哀シカった
悔しカっタ
苦シかッた

恨メしかっタ
怨めしカッた



走って走って家に帰った私
呆れるような,あんな子供に負けた私が悔しいようなことがあったけど仕事は頑張
らなくちゃいけない……

今日は普段,簪屋で買うような安っぽい簪じゃなくてもっと上等なモノを手に入れ
たわ
綺麗な綺麗な黄色いな簪

ちょっと傷がいっちゃってるわ……
まぁ,安く手に入ったものね
でも,使おうと思うと傷を消さなきゃ……







いらっしゃい

『布,切ってくださる?』

はい,畏まりました

?

鋏の色……
こんな鮮やかな色だったかしら……?







ようやく混み時も終わって,仕事も一段落
考えることは……
最近の事件のことも気になるけど…………


アノ人に逢いにいきましょう


そうねぇ
私は仕立屋なのに自分の服に関しては結構無関心なのよねぇ……
でも,今日は別よ?
とっておきの服があるんだから!
アノ人が見たら飛び上がって慶ぶんじゃないかしら?


赤い着物
緑の帯
黄色いかんざし


完璧ね
これでアノ人好みの女になったわ!!
それじゃあ,逢いにいきましょうか?







『シザーさん,シザーさん』

何かしら?

『下町でね,また事件が起きたらしいよ』

まぁ! また!

『うん』

また殺人かしら?

『うん,今までは女の人だったけど今回は男の人なんだって』

あら,意外ね

『シザーさんも,下町行くんだったら気をつけてね!』

ありがとうね



恐いわね……
殺人だなんて
でも,男が殺されたのは意外ね



現場には人だかりができてて,道を進むのが少し大変……


今回は男らしいですね?

『そうだよ,これで家族四人全員が殺されたみたいなんだ』

まぁ,そうなんですか?

『ああ,一番上の紅がよく似合ってた娘さん,三番目の碧がよく似合ってた娘さん,
四番目の黄がよく似合ってた娘さん。そして最後に二番目の四人兄弟唯一の男の
子だった子だよ』

あらまぁ,あらまぁ……







アノ人に逢ったときに私はこう言ってやろうと思ってたの
『もう! アナタは家にも帰って来ずに他の女と遊んでばかりで…… もう赦さない
わよ!』

でも,言えなかった

アノ人を見つけた時,私は嬉しすぎて,何も言えなかった……
でも,何か言わないとアノ人は私に気付かず行ってしまう……


ア,アナタ!!

『?』

あ,愛シてるワぁ!!!

『??』

だカら!
だから家に帰ってキて!!

『???』

そレ以上は何も望まナいかラ!!

『あのぉ……』

なぁに?

『誰ですか?』

?

『会ったこと……無いですよね?』

??

『はじめましてこんにちは』

???







ぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁ ぁぁあああぁぁあぁあぁぁああ ああぁぁあぁあぁあぁぁぁぁああぁ  ぁぁぁぁぁあぁあ  ぁぁ ぁぁあああぁぁあぁ  あぁぁああああぁぁ  あぁあぁあ  ぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁ       ぁぁあああぁぁあぁあぁぁああああぁぁあぁあぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁ  ああ ああぁぁあぁあぁあぁ



あぁ、そういうことなのね?
私を驚かそうとしてるのね?
御馬鹿さんね
そんなお茶目さんしなくたって私は貴方のこと……



ぁぁああ  ぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあ   ぁぁああああぁぁあぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあ ああぁぁあぁあぁぁあ  あぁぁあぁあぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁああああぁぁあぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁ  ぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁあ   あああぁぁあぁあぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁああああぁぁああぁあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁああ  ああぁぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁあぁあぁぁああああぁぁ あぁあ








ドウシテ?
ドウシテソンナコト云ウノ?
マルデ,マルデ他人ミタイジャナイ……
マルデ他人ミタイジャナイ……



はぁ
今日は何だか疲れたわ
でも息抜きをする暇も無いわね
仕事,しなくちゃ

今日は何を買うわけでもなく,帰ってきちゃたわねぇ


何をしようかしら?
そうだわ!
久し振りに母様の形見の鋏の手入れでもしましょうか
研げば研ぐほどよく切れるこの鋏

私の愛用品よ?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

円尾坂の仕立屋  ……らしきモノ…………

悪ノP様の曲で、代2弾です!!


またまたマイワールド爆発ですww

良ければ読んでくださいまし……
そして、感想を書いてくださいますと誠に嬉しゅうございます

閲覧数:824

投稿日:2011/04/22 08:37:22

文字数:4,337文字

カテゴリ:小説

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