たたたたっ

朝の町並みは晴れているせいか、いつもより輝いて見える。

レン君は今日もいるのかな―――

気がつけば私の頭の中はレン君でいっぱいだった。

レン君に触れた手は、朝になってもまだあたたかい。


＊


そもそも、何でいつも此処で待ってんだ。

俺がリンと会ったときにピンと来たのは間違いない。

元カノとは違う、もっとトクベツな感情。

昨日は勢い余って変な告り方、しかもドＳ発言。

何やってんだ俺。らしくねぇなー


＊


「いたっレン君！」

「俺も何で此処にいるのかわかんねーよ」

駄目だ。話してるだけで顔が・・・

「ところで・・・」

「いっ・・・良い天気だね！！！」

意味不明な発言しちゃった。

レン君は腹を抱えて大笑い。

「リンマジおもしれー！」

最近レン君、よく笑うなぁ・・・


＊


「リーン」

「何？グミ」

「この本さぁ、図書室に返してくれない？お願い！」

グミのことだから、何か都合があるんだろう。

「しょーがないなぁ。いいよ」

「ありがとっ」

グミって意外と文学少女だったんだ・・・

含み笑いを漏らしながら教室を出た。


＊


返却の先生、いないなぁ・・・

放課後の図書室をさまよっていると。

なんとレン君が。

ヘッドホンをして、熱心に何か書いている。

「レン君」

トントンと肩を叩くと振り返ったレン君、びっくり。

「どうした？」

「何してるの？」

「作曲」

レン君はさらりと凄いことを言った。

「凄いね！作曲なんて誰にでも出来ることじゃないよ」

「そんなことでもないと思うけど・・・リンは音楽好き？」

「うん！歌大好き！ボイストレーニングも行ってたことあるよ」

そう。つい最近まで。

「今は？」

「勉強の邪魔だって、お父さんにやめさせられた」

お父さんのプライドで奪われたものはいくつあるんだろう。

「その本、返すなら返却のところに置いておけばいいと思うよ」

「ありがとう！」

「よし行くか」

「何処に？」

レン君は悪戯っぽく笑った。

「音楽室」


＊


「ちょっと歌ってみてよリン」

「えぇ・・・恥ずかしーな」

「だって俺聞いたこと無い」

「ええー」

「歌わなかったらお仕置き」

「何するの？」

「リントとやったことあるだろ？」

顔が一気に熱くなった。

顔面で砂漠化が始まったみたいに。

「れ、レン君のバカぁ！」

～♪～♪～♪～♪

歌ったのは覚えたてのラブソング。

『あなたに気がついてほしくて』という歌詞で、歌を止めた。もとい、止めてしまった。

「どうしたの？」

私の心の中はレン君と二人だけという事実をようやく捉えたみたいで。

「レン君、ごめん。私、嘘吐いてたの」

「嘘？」

「あのね、私・・・」




















「レン君のことが――――すきです。」