◆MEIKO◆



「MEIKOお姉ちゃん、おかわりー！」
　ミクが納豆の入っていた器を持ってくる。
「納豆0.1、ネギ9.9でお願い♪」
「もう全部ネギにしてあげるわ」
「やったー！」
「ミク姉ばっかりずるい！」
「え？　リンネギ好きだったっけ？」
「好きじゃないー！　ミク姉好きな物食べれてずるい！」
「みかん買ってきたわよ」
「バナナは？」
「あの……マグロって……」
　にぎやかな食卓。
　私、ミク、リン、レン、ルカ。そしてマスター。
　私は、この人たちといれて幸せだ。
　ずっと、この人たちと過ごしていきたい。


「あ、新しくまたVOCALOID買おうと思うんだけど、どうかな」
　マスターが肉をつつきながら言った。
「今度出るGUMIちゃん？」
「ううん、ミクの前に出てたやつだよ。KAITO」
　マスターは家計のため私たちのため、それから新しく買うためのVOCALOIDのためにずっとバイトをしている。
　正式に働いた方がお金は入るのだけれど、すぐ入れてすぐやめれるところがバイトの利点だとずっとバイトの収入に頼りっきりだ。以前はホストをやっていたこともあったけど、すぐやめさせられていた。そりゃあね、とマスターの顔を見て失礼な事を思った。
「まずはクリプトンをそろえたいんだ」
「コレクションみたいに言わないでよ」
「ごめんごめん。でもさ、よそ者が一人ぽつんといるよりみんなで楽しくいたいし」
「会社だけで仲間外れになるなんてないよ！」
「とっ、とりあえずクリプトンから出ているのをそろえようと思ったんだ……」
　まあマスターのコレクター性癖は前々から知っている。
　フィギュアにCDにポスターに漫画、いろんなソフト、ゲーム機。
　VOCALOIDも最初は人気だからという理由で買ったんだろうが、マスターはハマってしまい、CVをそろえ、最近はどうやって他社と海外組をそろえようと悩んでいる。
　でも、そんなコレクションの中で、一番私たちを大事にしてくれる。
　私たちは、そんなマスターが大好きだ。
　もちろん、その大好きなマスターに異議を申し立てる事なんてしない。
「い、いいかな？」
「いいんじゃない？」
「ほんと!?　よかったぁ」
「でも一人増えるとなると、バイト時間増やさなきゃいけないんじゃない？」
「もっと時給いいところ探すよ～」
「今より条件がいいところなんてあるの？」
「がんばって探すよ。んじゃさっそく買うね」
　マスターはその３分後に『KAITO』を購入した。



　KAITO。

　私がこれから、



　好きになる相手。



　ずっとずっと、


　想い続けていた相手。




　そしてきっとこれからも、


　好きになる。