「うにゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅ…………………………」





ミクが頭を抱えて悩んでいる。

『TA&KU』との戦闘でもなければ悩むこと自体が殆どないあの子が唸りながら悩むとすれば。



まぁ、『あの子たち』についての問題かなんかあるんだろうな。



そう思いながら、久々の休暇をとった私は紅茶を静かにすすっていた。










「ね~~~~~~~~~~~~~~~ルカ姉~~~~~~~~~~~~~~~」

「自分で考えなさい」

「まだなんも言ってないよ!!?」


言わなくてもわかる。この年収めの時期に悩むとすれば、大掃除ともう一つぐらいしかない。

が……ミクは基本大掃除で悩むことはない。この子は掃除が基本大好きなのだから。

つまり結論は一つ―――――





「大方リンとレンの誕生日についてでしょ?」





「う……うん……」


案の定でした。わかりやすい子だ。


「……まったく。大分日が近づいてきてるってーのに、まだ悩んでるの?」

「まだ……って、ルカ姉はもうどうするか決まってるの!?」

「まぁね。一応ケーキ作るつもり。ミカンとバナナふんだんに使った特大ケーキ! 去年の誕生日の頃さ、あの子たちマスターたちがいたころに作ってもらったミカンとバナナのケーキ、食べたがってたから」

「つ……作れるんだ……………」


唖然としているミク。自炊経験がめーちゃんの次に長い私をなめんな。


「う~~~~~余計にどうすればいいかわからなくなってきた……」

「……はぁ……」


とは言え……気持ちはわからないでもない。

ミクとリン・レンは歳が近く、同じマスターを持つ者同士絆がだれよりも強い。その分だけ、プレゼント選びにも酷く気を遣うのだろう。


大切な家族を想うが故の悩み……か。


「……ミク」

「?」

「ちょっと耳貸しな。面白いこと考えた」

「……???」





そして―――――来る27日。



「リーン!! レーン!! 誕生日おめで……とうっっ!!!」


《どがんっっ!!》



凄まじい重量感を秘めた特大ケーキを、私はテーブルの中央に叩き付けるように置いた。

その巨大かつバナナの甘ったるい匂いとミカンの甘酸っぱい匂いをぷんぷんさせるケーキを、双子は感動の眼で見つめていた。


「わああぁぁぁ……る、ルカさん!? これってもしかして……マスターたちが昔作ってくれたのと同じ……!!?」

「全く同じとはいかないかもしれないけど……昨日から仕込んだ特製ケーキだからね! ちゃんと味わうよーに!」

「ありがとルカさん……ううう、懐かしい匂いだぜ……マスタぁ……」


レンなどは感極まって泣いている。そ、そんなすごいもんじゃないんだけどなぁ。

続いてめーちゃんやカイトさんもプレゼントを渡していく。……未成年相手に酒とか、この真冬にミカンシャーベットとバナナアイスはどうなのとか聞かない。


……さて、そろそろ来るはずなんだけど……。




《バターン!!》




突然豪快に扉が開かれ、全員の眼が入ってきた人物に向けられた。

そしてその表情は―――――驚きと困惑に包まれた。


『……ミク姉!?』


リンとレンの声が重なる。飛び込んできたのは―――――ミク。

息を切らしている彼女の服装は―――――サンタ服だった。


「え……えへへ。ごめんごめん、ちょっと準備に時間かかっちゃった」

「わぁ……ミク姉かわい~~!! ……でも、どうしたのよこんなに遅くなって?」

「……リン。レン。ちょっと外来て? あ、ついでに皆も!」

「???」


サンタコスのミクに連れられるまま、一同が外に出る。



そこで―――――息を飲んだ。



「……これって!!?」

「まさか……!!」


リンとレンの声が震えている。そらそうよ、一番あんたたちが驚くであろうデザインを、ミクに進言したんだから。


……もっとも、この完成度は、その私でさえも息を飲まざるを得ないんだけど。





そこにあったのは―――――『Soft』の音波で形作られた、巨大な『鈴橋喬二』像。

即ち―――――彼女らのマスターの『音像』だ。


「……あ……あ……!!」

「すげぇ……でっかい……でっかいけど、マスターそっくりだよ、ミク姉……」

「これ……ホントにミク姉が作ったの!?」


リンが上ずった声で叫ぶと、ミクは少し疲れたような表情でそれでも精一杯笑った。


「まぁね……二人が共有部屋に入ってから作ったから、かなり突貫なんだけど……それでも満足いくものができたと思う」

『うわぁ……』


二人は目を潤ませながら像を眺めていた。



……リンとレンが長年求めていたもの。それは『マスターに祝ってもらった誕生日』だった。

最初は嫌っていた喬二博士。だけど誤解が解けてからは、誰よりも大好きな存在だった喬二博士。

マスターたちがいなくなる4日前、最後に祝ったのはリンとレンの誕生日だった。

巨大なバナナとミカンのケーキ、ロードローラーのラジコン。パーティーの最後には、歳をとって力も衰えたはずのマスターからの力強い抱擁。

直後にいなくなってしまった分だけ、その幸せな誕生日の記憶は、二人の中にしっかりと刻み込まれてしまっていたんだ。


……ほんの少しでも、あの楽しかったひと時を思い出してもらえれば。

そう思った私は、自分で思い出のケーキを作るとともに、ミクに『音像』の作成を提案した。

マスターノートに貼り付けられていた写真―――――奇しくもそれはリンとレンの誕生日の時の写真だった。その時の喬二博士をモデルにすれば。


……その結果がこの凄まじい完成度の、喬二博士の像。


「……なんだかまるで、マスターが祝いに来てくれたみたいだね、レン……」

「ああ……15年前の誕生日を思い出したよ……マスターはあの時も、こんなふうに笑ってた……」

「……『オレハココニイル』」

「写真の裏の言葉だっけ、それ?」

「うんっ! ……ここにいるね、ますたぁ……!!」


うれし涙が、二人の頬を伝っていく。


「……やるじゃない、ミク」

「……あったりまえ!」


こつん、と拳を合わせた私たち。


「……でもさ、これ最終的には壊さなきゃならないんだろ、ミク姉?」

「う……そうなんだけど―――――」



『心配いらないわよ』



「え!?」


突然の声に、リンとレンがバッと振り向いた。

そこに立っていたのは―――――ネル。小脇に紙袋を抱えている。


「……ミクがなんか画策しているのは数日前から噂に聞いてたわ。あたしも突貫だけど、二人のために良いもの作ってきたんだから!」


そう言って紙袋から取り出したのは、2つの大きなオルゴール。

二人に渡すと、小さく微笑んだ。


「……開けてみな?」


言われるがままにそれを開いてみると―――――



《―――――ヴオン!》



「わっ!?」

「……え!?」



開かれたオルゴールの上に―――――3D映像の喬二が立っている。その姿は、ミクが作った『音像』と全く同じものだ。


「……ネル!」

「……ミク、あんたがここで一生懸命像作ってるの見て、少し感動しちゃってさ。あたしもこれ、ちょっととっときたいなーって思って、速攻でオルゴールに3D映像装置を組み込んだのよ。……どう?」


二人に恐る恐る感想を聞こうとするネル。

二人は……答えない。その代り、その眼からこぼれるものが、その答えを表していた。


「……っ……ますたぁ……これで……ずっと一緒に……」

「……ああ……」


嬉しそうに笑いながらオルゴールを抱きしめる二人。

その様子を見ながら、ネルとミクが微笑み合っていた。










その様子を――――――――――影から見守る一人の男がいた。

紫の髪を風に揺らしながらその様子を眺めていた彼は、小さく笑って踵を返し、ボカロマンションから離れていった。





「……リン殿にいつぞやの礼を……と思ったが、ここに紛れるのは無粋というものだろう……誕生日おめでとう、リン殿。そしていつかまた会おう……」










皆に愛される小さな双子。

彼女らが奏でる音が、永久に鈴の様に清らかに、そしていつまでもハーモニーを奏でんことを。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リンレン誕】愛する双子に追憶の音を

リンちゃんなう!リンちゃんなう!!リンちゃんリンちゃんリンちゃんなう!!!
リンレン誕生祭と言ったらリンちゃんなうですよね。レンなどはとりあえず置いておけばいい(まさにレンきゅんなう
こんにちはTurndogです。

頑張ったはずのミクさんが猛烈な噛ませ犬になってしまってます。
ネルがレンに個人的誕生日プレゼントを挙げられてません。
最後美味しいところを全部紫色の武士が持っていきやがりました。

これはひどい。

とりあえずルカ誕はがんばろう。

あと投稿時間も頑張りましたw

閲覧数:225

投稿日:2013/12/27 12:27:06

文字数:3,477文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    ホントに12:27にやりましたかwwさすがですwww

    魔法で博士の幻像をポン!と出したわけじゃないですからね……時間も労力もかかるような代物を、ホントにやり遂げたミクちゃんは凄いです
    しかもネルちゃんまでそれに便乗して作っちゃうなんて、ねぇ?
    結論:ミクちゃんとネルちゃんマジチート

    2013/12/29 16:05:40

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      冬休みの昼ですからこれくらい訳ないですよwww
      問題はルカさん……24時間表記だから深夜1:30じゃないと……

      ミク曰く『Soft』は扱いにくい音波だそうです。
      いいとこはとられましたがMVPはミクです!
      ネルはまあ通常運転かなww

      2013/12/29 21:16:17

  • しるる

    しるる

    その他

    あー、ネルちゃんは、もっと勇ましくかくべきだったのか
    SSの話ね

    ミクって、主役なのに影うすくなりがちだよね
    私のボカロ観察も、最終回あたりなければそうだった

    2013/12/28 12:09:49

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      勇ましくっつーか、まぁいい意味でぶっきらぼうな口調でもありますなw

      よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏。
      それがミクさんのつけられやすいキャラですw
      ずば抜けたところがないからねぇ……w

      2013/12/29 21:14:16

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    ふはぁぁ……感動です……
    ターンドッグさんだから成せる業ですねですねこれは!!
    あと、投稿時間も感動ですww
    その頃は私ご飯食べてましたねww

    2013/12/27 20:50:07

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      喬二博士ネタを持ってきたからイズミさんには【こうかは ばつぐんだ!▼】じゃないかとw
      朝飯が遅かった御蔭でうまく投稿できましたww

      2013/12/27 21:17:28

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