「あらKAITO、マスターなんだって?」
「あ、めーちゃん。よくわからないけどアイスくれたよ。何だろうね、明日は大雪かな」
MEIKOに少しつめてもらい、KAITOもコタツに足をつっこむ。
コタツの反対側でリンとレンがゴロゴロと寝転がりながら、空中に開いたモニターで動画を眺め、爆笑している。
季節感を演出するために置いたコタツのデータだが、皆が自然と集まれて良いなぁとKAITOは思う。
「コタツでアイスってのも高級感があって良いよねー」
KAITOは独り言を言い、アイスカップから一口分スプーンですくい、パクリと頬張る。
そういえばミクとルカがいないなぁとKAITOが思った時、キッチンからわぁっと声が聞こえ、二人が料理当番なのを思い出す。
ひーひーとお腹を抱えつつ、リンはモニターを閉じ、むくりと起き上がる。
「あー面白かった。あれ、KAITO兄お帰りー」
「ただいまー」
言いつつアイスを食べると、リンが、あーっと羨ましそうな声を上げる。
「KAITO兄だけいーなぁー! リンにも一口ちょーだい、ちょーだいっ!」
「一口だけなら良いよー。はい、あーん」
KAITOは手を伸ばし、リンはスプーンのアイスをぱくりと食べる。
「ん! すっごいおいしー!! 百円アイスじゃないな!」
「マスターから貰ったんだよ、良いでしょー」
大人げなく胸を張るKAITOに、レンがふとなにかに気づき、頭を捻りつつ尋ねる。
「……兄貴って誕生日いつだっけ」
「んー今月のー14と17かな」
「あーやっぱそれだな、うん」
レンは、モニターを開き直し、違う動画を見ようとするが、引っかかりを覚えたKAITOがレンを引き留める。
「ひとりで納得してないで、僕にも分かるように説明してよ」
「んじゃあそのアイス半分頂戴」
説明料、とアイスを請求するレン。
KAITOは、アイスをかばうように抱きかかえて、拒否する。
「やだ。だってこれマスターがくれたんだもん。まだ誕生日じゃないのに……あ」
「そーいうこと」
「誕生日プレゼントなのかー……当日にくれればいいのにー」
マスターの大ざっぱさにがっかりするKAITOに、MEIKOはまぁまぁと慰める。
「覚えているときに渡そうと思っただけいい方よ」
そう言って遠い目をするMEIKO。
「そーそー、リン達だってクリスマスと一緒にされたよ!」
「それに兄貴の場合、誕生日が2日ある時点でメンドイじゃん」
「む、2月はKAITO強化月間! ということでどうかな」
良いことを思いついたとドヤ顔のKAITOに、舌打ちをしそうになったレンだが、何かを思いついて悪い笑顔を浮かべる。
「兄貴、誕生日祝いにオレの料理当番2月中ずっと譲ってやるよ。兄貴、料理好きだもんな!」
「あ、はいはい!! リンの掃除当番も譲ってあげる! 心ゆくまでフォルダ内、綺麗にしていーからね♪」
リンがにこにこと続け、MEIKOも悪のりする。
「そうねー、MEIKOさんの肩をMEIKOさんが満足するまで揉ませてあげるわ。嬉しいでしょう」
「うん、うれし……くない!! それじゃ当番制にした意味がないじゃん!」
MEIKOの肩もみとか敬老の日のお祝い!? とKAITOはうっかりつっこむ。
目が笑っていないMEIKOがにこりとKAITOに笑いかける。
「くじ引きに戻す?」
「当番制でお願いします!」
コタツからでて土下座するKAITO。
うむ、よろしい、とMEIKO。
「ていうか、少しは頑張ろうよ!」
もそもそとコタツに戻りつつKAITOは不満を言う。
「……でもさ、今日の料理当番、ミク姉さんなんだぞ兄貴……」
「手伝い当番はルカちゃんだし……」
「不安よねー……」
うー、と肩を振るわせるレンとリンにMEIKOもぽそりと付け足す。
タイミング悪くキッチンから、焦げた臭いと「きゃーやっちゃったぁ」と、ミクの不吉な声がする。
「ま、まぁ一日ぐらい食べなくたって僕ら問題ないし」
強がるKAITO。先日のミク特製『ネギの炭素風』を思い出して少しだけ涙が出る。
「朝ご飯と夕ご飯はみんなで一緒に、っていうのも中々難しいわねぇ。嗜好品に対して手間の方がかかりすぎかしら……」
「そうだよ。そもそも僕ら、マスターみたいに食べ物が必要じゃないし」
そういいつつもアイスをおいしそうに食べるKAITO。
「でもさ、兄貴。アイスは旨い方がイイだろ!」
「そりゃ美味しいと更に嬉しいけど」
だろ? とレンが必死に訴えにKAITOにも不安が募る。
「僕、ちょっと見てくる……」
KAITOは食べかけのアイスをコタツに置き立ち上がる。
MEIKO、リン、レン頼んだという視線をKAITOに送り、KAITOも任されたと茶目っ気混じりに敬礼で返した。
「る、る、ルカちゃんどうしよう、どうしようこれ」
燃え上がるフライパンを眺め、おろおろとするミク。
「ミクさん落ち着いてください。とりあえず火を止めましょう」
「う、うん、そうだよね、そうだよね。えいっ!!」
「ミクさん、逆です」
火力が最大になり、更に燃え上がるフライパン。
うっわぁーとKAITOは頭を抱える。
「……はーい、そこまでー」
KAITOはコンロの火を止め、濡れた布巾をフライパンに被せ、鎮火させる。
「お兄ちゃんっ」「KAITO兄さん…」
救い主が現れた、とホッとするミクとルカ。
「……今日は何を作るつもりだったのかな?」
「んっと、えっと、動画サイトで見た創作料理を……」
ミクがモニターを開き、KAITOに渡す。
どうして難易度が高そうなのをミクは選びたがるんだろう、と映像を見ながらKAITOは悩む。
モニターの中では手際よく料理を作っていくから簡単そうに見えるのだろうか。
「お兄ちゃん、手伝ってぇー」
ふえぇえ、と半泣きでお願いするミク。ルカも後ろで静かに頷いている。
元々そのつもりだったKAITOは残った材料と、時計を見比べて、そうだなと考える。
「うーん、時間的にチャーハンで良いかな」
「ネギいっぱいチャーハン!!」
ぱぁっと顔を明るくして、ミクは嬉しそうにリクエストする。
「おぉおお!! 兄貴の飯だ!」
「黄金のネギチャーハン!!」
ひゃっほー、と歓声を上げるレンとリン。
「ミクだって手伝ったもん」
ネギとか刻みなおしたもん、とめそりとするミク。
「うん、ミクも頑張ってたよね」
よしよし、とKAITOがミクの頭を撫で慰めていると、ルカがじっと見つめていることに気づく。
「あ、ルカちゃんも頑張ってたね」
「はい」
頷いて、頭をちょっと下げるルカに、あぁ、そういうことか、とKAITOはルカの頭も撫でる。
「リンもーリンもー! リンお皿とコップ並べたよ!!」
「はいはい、お手伝いありがとうねー」
わーい、と頭を撫でられて喜ぶリン。
何が嬉しいんだか、という風にレンがぶすっと膨れている。MEIKOが苦笑して、レンを抱き寄せ頭を撫でる。
ガキじゃねえんだから、と口では嫌がりつつも、顔を真っ赤にして照れ、どこか嬉しそうなレン。
「さて、冷めない内にいただきましょう」
MEIKOの号令で、皆が席に着く。
「「「「「「いっただきまーす」」」」」」
「そーいえばさぁ」
チャーハンをすくってふと、KAITOが思い出したように呟く。
「僕のアイス、どこに置いたの?」
冷蔵庫に入れてくれたの? と首を傾げるKAITO。
チャーハンを作り終えて戻ってきたときにはアイスはコタツ上から消えていた。
その一言に、リン、レン、MEIKOはバッと視線をそらし、ミクは何のこと? と首を傾げ、ルカは黙々とチャーハンを食べている。
「まさか……」
固まるKAITOを見て、レンが真っ先に弁明する。
「オレは一口しか食ってねーもん! リンがさ!!」
「だってだってー美味しいかったんだもん! ねぇルカちゃん!!」
「KAITO兄さんのだったんですか、美味しかったです」
淡々と答えて、ルカはパクリとチャーハンを食べる。
「いいなぁミクも食べたかったなぁーお兄ちゃんのアイス」
お兄ちゃんの手作り? と話の流れが分かっていないミクが首を傾げる。
「えーっと、ゴメン、ね?」
最後にMEIKOが可愛らしく謝る。
自室のフォルダに鍵をかけて閉じこもったKAITOに向かってMEIKOが叫ぶ。
「私たちは誕生日当日にちゃんとお祝いしてあげるからー、機嫌なおしなさいよ」
「そうだよKAITO兄、二日間ともちゃんとお祝いするから!」
リンも続けて叫んで、レンにほらあれ出して、と目で要請する。
「兄貴、代わりのアイス買ってきてやったぞ! だからそろそろさぁ」
余分に買ってきたアイスをパクリと頬張りながらルカが言う。
「ミクさん、これ美味しいですよ」
「あ、ホント……でもお兄ちゃんの手作りアイスが食べたいなぁー」
KAITOがフォルダから出てくるまで、あと一押し。
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