赤ちゃんに会えないという現実は、時が経てば忘れられるような軽いものではなかった。

「嫌なことばっか…」

どうせなら夢で終わってほしいのに。
それなのに私はまたクオを求めていて。

「あぁっ！もうイヤっ！」

最近、部屋にこもってばっかだ。
多分お母さんはまた泣きはらしてる。

ごめんね。出来の悪い娘で。
ごめんね、ごめんね。



ピリリリリと、携帯が電話を知らせていた。
仲がいいクラスメイトからだった。

「もしもし？テト？」

『あっミク？今日ヒマ？』

「うん…どしたの？」

『今日合コンやるんだけど人数足りなくってさ…ミク来ない？』

クオが居るから行けない。
そう言おうと思ってた。けど…

「うん。いいよ！何時にどこ？」

クオは私なんかに捕まってないで、自由になったほうがいいんだ…




＊





「お待たせ…」

カラオケの室内には、男の人3人。
女の子の方は、電話をかけてテトと知らない金髪の子。

「おっ花形も来た事だしはじめようかぁ！」

「花形って…言い過ぎ！」

「じゃ、自己紹介しようか！この子はあたしの幼馴染のリン」

金髪の女の子はぺこっと頭を下げた。
見た目は元気そうだから人見知りなのかもしれない。

「この子は同じ高校の友達のミク」

「よろしくお願いします…」

向かい側に座っていた青い髪の毛の人が笑ってくれた。
後の自己紹介で、その人はカイトさんというのだと知った。

そこで、テトにちょっと来て、と言われてトイレへ。

「実はさ、リンって彼氏いるんだよね」

「え？なに、浮気？」

「違う違う、人数足りなくって協力してもらったんだ…あの3人の中のレン、いるでしょ？あれ、リンの彼氏」

それって合コンじゃないと思うけど。

「あと、ミクが人数あわせってのもウソ。カイト先輩がミクに気ぃあるらしくってさぁ、皆で協力してあげてんの。あと・・・あたしもテッドが好きだしさぁ(はぁと」

ますます合コンじゃないと思うし・・・
しかもテトに好きな人？

「考えられない…テトがそんな乙女だったなんて…」

「こら！ミクぅ！」


その後も順調に進んでいった。
進んで言った中でカイトさんはクオに少し似ていることに気がついた。

でもカイトさんを見るたびに、クオの顔が重なる。
カイトさんの声を聞くたびに、クオの優しい声が重なる。

外は、もう暗くなっていた。






＊





「ミクちゃん、お疲れ。オレ送るよ。もう遅いし」

「かっカイトさん！」

「別にさん付けなくていいよ・・・」

「じゃあ、カイト、先輩」

カイト先輩は笑った。


別れ際、カイト先輩は私に告白してくれた。
一瞬、クオの悲しい顔が浮かんだけれど、頭を振って掻き消した。
そして、答えを出してしまった。


「今度の日曜日、ウチに来てね」

メアドを交換して、カイト先輩は去っていった。
カイト先輩は嬉しそうだったけれど、私はクオにごめんね、と言った。
罪悪感でぺしゃんこになりそうだった。

でも、これがクオの為だから…

私はただ、免罪符にすがっていただけだったんだ。