※レンリン、カイミク要素あり
※高校生設定
「つまりはチェリーボーイ?」
――神様、神様。
くったくないカオして、いちごみるくをすする目の前のこの男。
ぶん殴っても、いいですか?
*** LOVE IS BLIND! ***
「だってそーいうことだろ?」
「意味ちげーよっつか、おまえマジいっぺん黙れ」
「や~レンが怒るよ~助けてミク!」
大げさな身振り手振りで、隣のミク姉にひっつくカイトをぎらりと睨みつけた。
っつーか大体いちごみるくとストロベリーアイスクリーム(2段)って何だ。どういう組み合わせ?どんだけいちごいちごしてんだこの男。
「ていうか、そういうんじゃなくて・・・」
「拒まれたらって思うと怖い。そういうことでしょう?」
「っ、」
「好きな女の子に拒まれたらって思うと、簡単には動けないよね・・・」
「さすがミク姉!ばカイトとは言うことが違う!」
「あんだとコノヤロー?」
やんのかコラ。そういうようにガン飛ばしてきたカイトに、あぁ?と睨み返す。
いちご男になんてひるみゃしねーんだよ馬鹿野郎。
ミク姉と俺は家がお隣さん。二つ年上の、頼れるお姉さん。
品行方正、成績優秀、眉目秀麗・・・とんだ四字熟語が並び、おまけにバレンタインには何故か逆チョコが舞い込んでくるという、とにかく素晴らしい女性。
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対してカイトの義理の妹にあたるのが、俺のマイハニー・リン。
いっこ下の、生まれて初めての彼女なんだ。惚気るわけじゃないけどめちゃくちゃ可愛いんだ。
だからカイトとの関係性を知ったときにはそれなりにショックで。たぶん本当の妹だったらショック死してたね。
「だってさ、段階が段階じゃん。たかだかキスしたいだけっしょ?」
「・・・・・・」
「・・・そうなの?」
「そーだよ」
さすがのミク姉も、少なからず躊躇いを覚えたようだ。
付き合ってもう一ヶ月になるのにと、嫌味ったらしい顔でカイトは笑う。首根っこ引っ掴んでやろうかコイツ。
「や、だって・・・だって、レン。レンはリンちゃんにキスしたこと、あるでしょ?」
「――・・・。今それを掘り返しますか」
「超慌ててたよな、どーしよう!って言って。あれは笑ったわーやっぱおまえへタレだよな!」
げらげらと容赦なく笑うカイトに、今度こそメニュー表で頭をひっぱたいてやった。
***
あれは今から2ヶ月くらい前のこと。
実に苦々しい記憶の一つ。
その日はミク姉の家に俺やリン、ついでにカイトも集まって、みんなで夕飯を食べようという話になっていた。
買出しに出かけたミク姉とカイトを見送って、残された俺とリンは、適当にゲームをしてたんだけど。
『あ、あ、あ~~!!くそ、また負けた!なんだよ最後の最後10連鎖って!もっかいやんぞ、リン!』
『・・・・・・』
『リン?』
コントローラーを放り投げ、悔しさにわめいていた俺はすぐには気がつかなかった。
物音の代わりに、リンはスースーと定期的な寝息を立てていた。
(・・・こんなとこで寝るなよ・・・)
つーか寝ながらぶよぶよ10連鎖ってどんだけ?
しょうがないから、押し入れから毛布を取り出して、うつらうつら頭を揺すらせるリンにかけてやる。
頭が、コテッと壁に当たってしまいそうな勢いだったので、慌てて背中を支えた。そのままゆっくりと、体を床に倒した。
薄い色素のちょっとくせのある髪
シミ一つない、真っ白な肌
――めったに見られるもんじゃ、なかったといっても。真っ赤な顔してガン見しかけてた自分にため息が漏れる。
(あれ俺、ヘンタイ? いやいや、そんでも男はみんなヘンタイだし)
だけど次の瞬間、俺の羞恥心もどこかへと吹っ飛んでしまった。
『――・・・!!』
嗚呼、戻れるのなら、戻りたい。
とりあえずあのときの自分に、目を覚ませ!とばかりにカウンターパンチを食らわせて、そんでマッハで逃げ去りたい。
いくら、寝返りを打ったからって。
それがいくら扇情的で、独占欲を刺激されたからって。
触れたことのなかった場所に触れてもいい理由にはならない。
理性が壊れかけた理由にもならない。
テメェの女でもないのに。
誰にも知られないように、こっそりと唇へと口付けた。あれは間違いなく、犯罪だ。
***
結局あの日、俺の犯行がリンにバレることはなかった。
泣きついたミク姉には慰められ、カイトにはさんざん馬鹿にされた。
思い出すのも苦々しい、記憶。
つまりは、そうです。
要するに。
ちゃんとしときたいだけなんです。
「レン!ごめん、遅れた!」
「んーん、気にしてないから」
駅の構内から息も切れ切れに駆けてきたリンは、申し訳なさそうに頭を下げた。相当急いだらしい、リボン曲がっていた。
部活が長引いてしまったのだという。しょうがないよね、運動部だもの。
ラクロスって楽しいんだろうか。俺には分からないけれど、リンは楽しいといって笑うから、それで十分だと思う。
手を引いて、歩き出す。
今日は、リンのみたいといっていた映画を見に行く日。嬉しそうに手を絡めた隣の彼女を見て、つい口元から本音がこぼれ出た。
「・・・なぁ、リン」
「?」
「俺のこと、好き?」
「うん!」
(・・・即答・・・)
いや、まったく問題ない。問題ないんだけれど。
ちょっとは恥ずかしがってくれてもよくない?とか思ってしまう男のロマンを分かってくれ。察してくれ。
(――きっと、二人の"好き"の比率を計ったら)
(俺の方がメーター振り切るくらいデカいいんだろうな、とか)
そんな少女漫画みたいなことを考える俺は、相当女々しい。口許から、苦笑いが零れ出た。
息をするのと同じように、リンは俺を好きだと頷いてくれた。
なのに、なのに。
――もっと欲しい、って思うのは、欲張り以外の何者でもないんだろうか。
「じゃあ、さ」
引いた手に、ぎゅっと力を込めた。
不思議そうな顔をして、リンも立ち止まる。
見上げたその瞳を、じっと見返した。
顔が赤いなんて、当に気づかれてるんだろうな。
どうか、キラわないで、お願い。
これ一生のお願いだから。
そんで、出来たら――
「ちゅー。してもいい?」
いつもみたいに、笑って?
沸騰したヤカンがごとく真っ赤な顔も
手汗をとりあえずなんとかしたい、引いた手も
暴走しそうなほどに、キミが好きだと叫ぶ心臓も
ぜんぶぜんぶ、分かってら。
だけど、でも。
好きだよなんて、愛してるだなんて、めったにいえない俺だけど。
諦められないんです、やめることなんて出来ないんです。
いくら理性がぶっ壊れそうになっても、いくらカイトに馬鹿にされても。
"LOVE IS BLIND"
――その言葉はきっと、俺のためにあるようなモン。
"キス"の二文字が恥ずかしくって、ちゅーなんて平仮名で濁す俺は、たぶん相当なシャイボーイ。
《fin》
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