***ルカーナ=エンジェラント ―奴隷収容室S室にて―***
「…カーナ…ルカーナ…」
誰かが私を呼んでいる。好感のある声。誰だろう。
「ルカーナ!」
ミーリア様…?やっぱり…ミーリア様だ…。
嗚呼、無事だろうか。どうしよう。目を開けたいけど、開けられない。体も動かない。
「ルカーナ!ルカーナ!」
ミーリア様が呼んでいる…。いけない、今すぐに返事をしなくちゃ…。
でも、何もかもが動かない…。
「ルカーナ!…何でこんなことに…。」
嗚呼、すいません。ミーリア様…。私のせいです…。私のせいなのです…。
もっと私が注意深くしてれば…。
嗚呼、せめて、謝りたい。いや、お礼も言いたい。
だけど、何も動かない。
動かない。
…もう、ダメだ…。
「ルカーナァ!!………ナァ!!………………ナ!」
嗚呼、ミーリア様の声が……消えていく。





……消えてしまった。


***イーリア ―奴隷収容室S室にて―***
「…ありゃ、こりゃ死んでるな。」
レッカルが女を見ながら言った。
「手加減したつもりだったわよ。殺すつもりはなかったわ。」
「まぁ、こっちは大丈夫だろう。本願はあっちだからな。」
レッカルが指をさしながら言った。その方向には、三角座りをしてうずくまった少女。
緑色の長いツインテール、顔は見えない。私が着せた奴隷服の短い白いワンピースを着ている。
「…あっちは…どうする?」
「教官から指令があったら動かせばいいさ。S室だしな、しばらくは生き延びられるだろう。」
S室とは、A~Gまである収容室のほかにある特別な奴隷を置くところだ。
設備が整っており、脱獄なんて奇跡が起きない限りできない。
特別な結界がはってあり、10日くらい飲食しなくても生きていける。
「よーし。ほかの見回りに行くかぁ。」
レッカルが背伸びをしながら面倒くさそうに言った。
「…うん。」
私が返事をすると、レッカルは歩き出した。
私も後を追った。チラッと少女の方を見た。
目が合った。
大きいその目は、なんだか人間の目ではないように感じられた。

そして、どこか懐かしさが感じられた。……ような気がした。



***ミーリア=グランシェラ=リンヌ=アリンネ ―奴隷収容室S室にて―***
ルカーナが死んだ。
さっき、二人の男女が来て死去を確認した。
男女が来てから、部屋が少し明るくなった。
そこで見たルカーナは、ぐったり倒れていて顔は髪にかかって見れなかった。
服は血まみれで、白い細い足からはぎょっとするほどの真っ赤な血が流れ出ていた。
髪を顔からどかそうかと思ったが、怖くってできなかった。
今さっき、ルカーナが運ばれた。2人の大男に。
止めたかったけど、そんな勇気と力はない。

ルカーナ。ルカーナ。
小さいころからお姉さんのようだったルカーナ。
優しく、厳しかったルカーナ。
美しかったルカーナ。

…ルカーナ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

<時の遺跡>Episode 3

ルカーナ、死んじゃいました。
残念、ルカ様。

3話にして出番なし(笑)

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投稿日:2012/07/25 18:20:07

文字数:1,206文字

カテゴリ:小説

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