「おうら―――――!!喰らえジャイアントミサイル―――――!!!」


 カイトの咆哮と同時に、卑怯マシーンの両肩からミサイルが飛び出した。

 ミサイルは逃走するリンに向かって一直線。リンは振り返り、音波砲を放った。


 「リイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!」


 音波砲が二本のミサイルを貫く。とその瞬間、ミサイルは爆発―――――せずにポン、と情けない音を立て、リンの頭上で薄茶色の煙幕を大量に放出した。


 「な…なに…!?…ふ、ふぇ…ふえっくしょい!!へっくし!ふえっくし!!」


 その煙幕を吸いこんだ途端、いきなりリンはくしゃみを連発しながら眼をこすりだした。


 「かかったな!そいつに詰まってたのは爆薬ではなくかやくとコショウだ!!火薬ではなくカップラーメンの具の方の加薬というところがみそだ!!」

 「くっ…なんて卑怯な…ひきょ…きょ…ふえっくしょい!!」

 「今のうちに喰らえ卑怯なエンジンキック!!」


 カイトの猛攻は、卑怯ながらも徐々にリンをセンターステージに追い込んでいた。

 ミクが後方から、「Solid」で追い打ちをかける。音波の刃は、リンの足元を滑らかに抉る。

 リンは自分が誘導されていることに気付かずに、どんどん追い込まれていく。


 「っ…調子に乗りすぎだよ、二人とも――――――!!!!」


 叫んだリンは、音波砲を放った。ミクとカイトに向かって一直線だ!!

 ギリギリでかわしたミク。しかし、カイトの卑怯マシーンは腹部に直撃を食らってしまった。不運なことに二体のロボットはどちらも音波砲の軌道上。胴体を撃ち抜かれた卑怯マシーンは、哀れ爆散してしまった。

 咄嗟に飛び降りたカイトは地上に降り、センターステージに向かって走って行った。

 それを確認したミクは、飛びはねていくリンとセンターステージの距離を確認する。

 
 (センターステージまで…あと200m…100m…50m…!!よし、今だ!!)

 「レン!!行っけえええええっ!!!!!」


 ミクが叫ぶと同時に、


 「任せろミク姉!!リン!!止まれえええええええっ!!!!!!」


 センターステージに降り立ったリンに向かって、叫びながらロードローラーに乗ったレンが突っ込んでいった。

 ギリギリでロードローラーを急停止させ、レンは飛びだしリンにとびかかる。


 「!?レン!?」


 ようやく誘導されていたことに気付いたリン。しかしすでに遅かった。飛びかかったレンにより、リンはセンターステージに抑えつけられていた。


 「リン!!やめろもうこんなこと!!」


 抑え込んだまま、レンはリンを怒鳴りつけた。

 リンはたじろぎながらも抵抗する。


 「いやよ!!なんでみんな邪魔するのよ!!私は…自分の力で生きていきたいだけなのに!!」

 「馬鹿!!何が自分の力だ!!その力はリンの力なんかじゃない!!そいつはネルの力だろうが!!」


 レンの言葉に、ぐっと言葉を詰まらせるリン。


 「ネルの手を借りて、改造してもらって、手に入れた力は結局はめーちゃんの力を組み込んだだけじゃないか!!力の「器」は―――姿かたちは「リンの力」かもしれない!だけど、その本質はめーちゃんの力だろう!!リンは自分の力でなんて、守ってない!!結局はめーちゃんの力を借りているだけだ!!」


 リンは悔しそうに、何か言い返そうとするが、何も言い返せない。


 「リン!!目を覚ませ!!そして戻って来い!!俺たちのところへ!!」


 リンはしばらく肩を震わせていたが、やがてポツリと言った。



 『もう…遅い。』



 「うっ!?」


 突然レンは跳ね飛ばされた。リンがレンの腹をけり上げたのだ。

 地面で一回転して体勢を立て直すレン。そのそばに、カイトとミクが駆け寄ってきた。

 リンを見る三人。そこには、修羅の表情でゆらりと立ち上がるリンがいた。

 リンは覚悟を決めたような表情をして、ヘッドセットに手を添えた。


 「ここまで行ってもわかってもらえないなら…もういい。この町ごと、何もかも消し飛ばしてやる!!」


 ヘッドセットに添えた手は『Lv』のスイッチに伸びる。そして、ついに「Lv」を最大の「5」に引き上げた!!


 「最大レベルはメイコバ―ストの20倍!!聞いてるよね…こいつでみんな消し飛ばせば、すべて丸く収まるんだ!!」


 ミク達の顔から血の気が引いていく。


 「馬鹿!!やめなさいリン!!」

 「やめろ、やめるんだ!!」

 「やめるもんか!!はあぁぁぁぁぁぁっ…!!」


 リンは息を大きく吸い込み始めた。同時にリンの口の前の空気が揺らぎ始めた。

 終わりだ。何もかも。ミク達はそう思っていた。





 その時、護送車の中でネルの警報ランプが赤く輝き、鳴り響いた。

 それを見て慌てる刑事二人。そしてネルは、はっとした顔をしてパソコンの別の画面を開き、大急ぎでたたき始めた。

 その画面には『Rin's HeadSet Apoptosis System』が。

 「あんのおバカ!!最大出力はダメだって言ったのに!!」



 リンのチャージが進む。


 ネルの手がパソコン上を舞う。


 リンの眼が見開かれる。


 プログラムが次々連鎖式に起動される。


 リンが叫ぶ。


 ネルが叫ぶ。



 互いの相反する願いが、共鳴する――――――――!!



 「消し飛べえええええええええっ!!!!リン・リン・サウンド・ビックバ―――――――――――――ン!!!!!!」


 「止まれええええええええええっ!!!!『Rin's HeadSet Apoptosis System』ON!!!!!!!」



 リンが撃ちだそうとその瞬間!!



 ネルの指が、パソコンのエンターキーを力強く叩いた―――――――!!!!!




 「リイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!!」


 リンの爆砕音波が響き―――――渡らなかった。

 突如、リンの口の前に出現していた音波の弾が消滅したのだ。


 「へ…?」


 ミクとカイトとレンはもちろんのこと、リン自身もぼうぜんとしていた。

 すると突然、リンのヘッドセットの赤い光が点滅し始めやがて元の黄色い光に戻った。

 そして突然、


 「きゃあっ!?」


 パキィン…と涼やかな音を立ててヘッドセットが弾けた。そしてリンの頭から外れ、崩れ落ちた。

 唖然とした顔で落ちたヘッドセットを見つめるリン。

 そこに、一台の護送車がやってきた。

 中から出てきたのは、二人の警官。そして、疲弊し切った様子のネルだった。


 「ネ…ネル!?」


 レンが驚きの顔をする。そのレンをちらりと見て、なにが起きたのかわからないといった顔をしている一同に向けてネルは説明を始めた。


 「…私はヘッドセットを渡した時、最大出力にはしないようにと注意はした。だけどリンの性格では、だんだんとヒートアップしてしまったら、間違いなく出力を上げていくだろうなと思ったわ。だから、万が一最大出力まで上げてしまった場合、こちらから緊急停止できるように、リンのヘッドセットに自爆装置を組み込んでおいたの。その名も『Rin's HeadSet Apoptosis System』―――――「リンのヘッドセットにおける自己破壊装置」。「アポトーシス」とはプログラムされた細胞死のこと。リンも、この町も危険にさらさないように作った、ヘッドセット自身の自殺プログラムってわけ。」


 感心した顔をしてネルを見ているレンと目があって、慌ててネルは否定する。


 「べっ…別にレン君に謝りたかったからとか、ひどいことしちゃったお詫びとか、そういうつもりじゃないんだからね!私も…この町を守りたいだけなんだから…っ。」


 すねたような言い回しをするネルを見て、静かに微笑むレン。


 「うん、わかってるよ、ネル。昨日は酷い事いって、ごめんな。そして、リンを救ってくれてありがとう。」

 「…!!……はぅっ//」


 ネルはゆでダコのように真っ赤になって、ふらふらしてぶっ倒れてしまった。

 「わああネルぅ~大丈夫―!?」とか言って慌てるミクをよそに、レンはへたり込んでいるリンに近づく。


 「…何でよ…何でみんな認めてくれないのよ…。」


 ぼそぼそと呟くリンの前にしゃがみこみ、レンは言葉をかけた。


 「みんな、皆傷ついた。ミク姐も、カイト兄も、めーちゃんも傷ついた。ルカさんやネルも傷ついた。町のみんなも傷ついた。そうやってみんなを傷つけてでも、リンは自分の力で守りたいのか?」

 「!!」


 顔をあげると、そこにはうっすらと涙を浮かべた目でリンを見つめるレンがいた。


 「ルカさん…前に言ってた。町全体を『心透視』で覆うのは、ものすごく体力と精神力を使うことだって。今頃、ボカロマンションの屋上で倒れているかもしれない。ネルも相当リンのおかげで傷ついた。おそらくこの後、きっつい事情聴取が待っているだろう。何より、めーちゃんはまだボカロマンションで寝込んでいる。全身の機械がダメージを受けたおかげで、なかなか治らないんだ。…わかるか?今回リンが大暴れしたことで、たくさんの人が傷ついたんだ。それでも、自分の力がほしいのか?」

 「…レンは…ほしくないの?」

 「ほしくないと言えば嘘にはなる。だけど思い出せ…あと一年!あと一年我慢すれば、俺たちにだって音波術が覚醒したはずなんだ!リン!なぜそれを待てなかったんだ!!」


 「…うっ…!!」


 リンは言葉に詰まった。そうだ。作られて十四年。後一年で、リンとレンにも音波術が覚醒したはずだった。本物の「自分の力」が。

 ミクが優しく声をかける。


 「リン…私は目覚めた時から力が使えたから、リンの気持ちはわからない。でも…なんでわかろうともしてあげられなかったんだろうって、反省してる。ごめんね、リン…。」

 「……う…っ…。」
 

 リンの目から、涙が一筋こぼれおちる。

 レンが再び、優しく声をかける。


 「リン。リンはこんなにも心配してくれるミク姉や、ルカさんやめーちゃんを悲しめたんだ。それ相応の、罰を受けなければいけない。だけど…その罰を受け終わったら、また俺と…俺達と一緒に暮らそう。」

 「…いいの…?私は…皆を…!」


 レンはにかっと、明るく笑ってみせる。


 「俺が許すと言ってるんだ!誰が許さないと言っても、俺がねじふせて見せるさ!俺はリンの、リンは俺の、最後の砦なんだろ?」


 レンは振り返った。そこでは、ミクも、カイトも優しく微笑んでいた。

 リンの目に、涙が盛り上がる。そしてうつむいたかと思うと、


 「…う…うあ…うああああああああああん!!うわああああああああ…!!」


 レンの胸に飛び込み、大声で泣き出した。ずっと心の中に抱えていた、孤独と不安を吐きだすかのように。

 レンはそれを、優しく、優しく抱きしめていた。





 こうして、最も幼き少女の小さな対抗心から始まった、町を巻き込んでの大作戦「鏡音リン捕縛計画」は、静かに幕を下ろしたのであった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

RIN RIN SOUND BURST!!Ⅷ~決戦!!リン・リン・サウンド~後編

決着しました!!こんにちはTurndogです。

リンの為に、レンが心をぶつけ、リンと町(とレン君)の為にネルが技術を結集しリンをとめる…!!レンとネルの、想いが勝ったのです!!

因みに。最初、リンが最大出力のリン・リン・サウンドを撃っちゃうっていうのも考えてたんですけどね。どうしてもみんな消し飛んで終わっちゃって、そこからリンを救うのに繋げられなかったのでとめましたwwwみんな消し飛んじゃったら物語終わっちゃうもんねwww

次回。レンが大騒ぎの物語を締めくくります。落ち着いたリンが最後に大胆行動に…www

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閲覧数:442

投稿日:2012/01/28 23:20:05

文字数:4,721文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    リンちゃーん!!レン君がいてよかったね!ネルがいてよかったね!

    でも、ダークリンちゃんも好きかもしれない!!ww
    君はいつか私の方にも…ふふふ

    2012/01/29 03:12:52

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      みんながいるから、私がいる。そういう関係、憧れますwww(←自分で描いた物語だろwww

      おっとお!何やら意味深なことを言った気がするのは私だけか!?www

      2012/02/01 11:47:37

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