いま、女性たちに人気の雑貨、「アマガエルのフォギー」。

その作者のデザイナー、霧雨きょうこさんが、個展を開いている。
カフェ・ギャラリーの「ゆうひ」の店内だ。

ところが、3人の男の子たちが、ちょっとしたもめごとを起こし出した。
「アマガエルのフォギー」が、自分たちの好きなキャラクターの、パクリだと言い出したのだ。

ちょうど、店内で展示を見ていた、キディディ・ランドのカイくんは、
男の子たちと、霧雨さんの言い合いを、はらはらしながら聞いていた。

と、どうしたことか、男の子の一人が、カイくんの方に近づいてきたのだ。
「あのー、あなたはどう思いますか?」


●似てるじゃんよ!

ふいを付かれて、カイくんは飛び上がらんばかりに、あわてた。
彼は、今、ある事情があって(?)、女装しているのだ。

彼は、ケンカは苦手だ。しかも、男の子たちは、彼を女性だと思っているようだ。
さりげなく、その場を逃げようとしたが、3人の男の子は、カイくんを囲むように立ってしまった。

仕方なく、彼は自分の意見を言うことにした。
声はもちろん、ウラ声で。ちょっと聞くと、落ち着いた女性の声に聞こえる。

「ええ、ワタシも最初は、似てるなと思ったけど...でも、パクリではないと思うな...」

「ええー」「似てるじゃん!」
3人は、勢い込んで言った。
ギャラリーの中は、なんとなく険悪な雰囲気になった。


●もめごとは良くないですよ

「おや、どうしたの?なにか、あったのかい」

そこに、ひょっこりやってきた男の人。
カイくんの友人で、雑誌の編集者の、野呂間アル夫さんだった。

「なんだよ、君たちは。ゆっくり絵が見れないじゃないかい」
恰幅がいい大男の、アル夫さんが、低い声で言う。

3人の男の子は、気勢をそがれて立ちすくんでいたが、
つまらなくなったとみえて、やがてブラブラと店を出ていった。

「まあー、すいません。アル夫さん」
霧雨さんが、すまなさそうに、お礼を言う。

「いえいえ、もめごとは良くないですよ」
アル夫さんは、照れくさそうに笑って言った。
「しかも、こんな素敵な、女性に向かって。失礼な子たちだ」


●キゼンとした、素敵な女性

やれやれ、とホッとした、カイくん。
どうやら、アル夫さんは、彼を本物の女性と思っているようだ。

実は、さっきカイくんは、3人の男の子に問われて、
「もしかしたら、パクリかもしれないな」
と思ったのだ。でも...

3人の男子に、イロイロと言われても、ひるまず、
応戦している霧雨さんに、好感を持ったのだった。

しかも、ここは彼女の展示会場。
優しいカイくんは、あえて男の子たちに、反対の態度を見せたのだ。

ところが...

その、キゼンとした男(女?)らしい態度に、
アル夫さんは、好感を持ったらしい。
にこやかに笑いながら、カイくんを見つめている。

カイくんは、身を硬くした。少し、汗が出てきた。
「一難去って、また一難...」(・_・;)

(次回に続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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玩具屋カイくんの販売日誌 (113) ギャラリー・ゆうひの対決 (Part2)

人に会いたくないときに限って、次から次へと人が話しかけてきます...

閲覧数:75

投稿日:2011/07/24 20:41:13

文字数:1,261文字

カテゴリ:小説

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  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    読了! 本当に、一難去ってまた一難な感じですね(笑 作品の構成としても、問題解決→新たな問題発生の流れはテンポ良く楽しめて良いと思います。
    実際、このカイくんと同じ状況になったら冷や冷やするだろうなあ(笑 執筆GJです!

    2011/07/25 11:35:56

    • tamaonion

      tamaonion

      日枝学さん
      感想ありがとうございます!

      なるほど、次回への流れも、連作だと重要なんですねー。
      これまで、落し噺みたいに、完結するのが多かったので、
      指摘して下さって、ハッと思いました。

      その辺りも、これから意識していきたいな、と思いました。

      また、ぜひ感想を聞かせてください!!

      2011/07/25 22:49:17

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