＃９



「きゃ！」


ミクが尻もちをつき、刀も落としてしまった


「きえちゃえ……」


ネルの残忍な目がミクを見下す

ミクは目をつむった


(もうだめ！)



ネルの鎌が振り下ろされ……辺りに鮮血が散った……　







しかし、ミクに痛みはなく……ミクがゆっくり目をあけると……そこには信じたくない光景があった

目の前になびく桃色の髪……

防御の際に無残に二つに割れる【桃華】

そして、その人から噴き出す鮮血


「あ……あ……あぁ……」


ミクはあまりのことに声が出ない


後ろに倒れるルカをミクが慌てて支える


「ルカさん！！ルカさん！！しっかり！！」


ミクの大声が辺りに響く


「ミクちゃ……ん……大丈夫？」


ルカはミクに抱かれながら、脂汗と微笑みを浮かべている


「ルカさん！早く自分の傷を癒してください！」

「……ごめんなさい。……私、【桃華】がないと癒しの力……使えないの……」


申し訳なさそうに笑うルカ


「……そんな……どうして私なんかを……ぐすっ」


ミクは涙を流し、手が震えている

そんなミクの頬を、血に染まったルカの手が優しくなでる


「泣かないで……ミクちゃん……期待し、てるから……みんなのこと……おねがい……ね」


そういって、優しく微笑んだ後……ルカの全身から力が抜けた……


「ル、ルカさん！ルカさん！ルカさん！」


いくらミクが名前を呼んでも、反応をしてはくれなかった










ルカがいなくなった……それを一番最初に感じ取ったのは、やはりカイトだった

そして、カイトはメイコ達に連絡する


「……三人とも、落ち着いて聞いてくれ……」

「なによ！こっちは忙しいの！」


メイコはカイトの通信を邪険にする


「……ルカさんが……ルカさんの反応が……消えた」


震えるカイトの声に、一瞬、メイコ、レン、リンの動きが止まる




「くっ……うぁぁあぁぁぁぁあぁ！！」


メイコの気合の入った一撃で、周囲数十メートルの敵が吹き飛ぶ


「リン！ここはいいから、ミクのところにいってあげて！このままじゃ、あの子もやられちゃうわ！」

「わかった！」


メイコの呼び掛けにおとなしく従うリン

そのリンの目には光るものがあった


「いい！レン！ここは私たち二人で何とかするのよ！」

「わかってる！やってやる！やってやるよ！！！わぁぁぁぁ！！！」


レンが唇をかみしめ、それでも前に向かって剣をふるう



誰もが……必死だった

誰もが……悔しかった

それでも……今は前に進むしか……それしかなかった