【第十二話】JEALOUS

 「それは……、たぶん…、敵の攻撃を取り込んで、自分の攻撃と一緒に放出したんだろ」

 リンが帰ってくるや否や、あたしに必死な顔で『なんかへんなの出来ちゃったんだけど、あれって何ですか!!!??』と訊いてきた。

 話を聞くと、どう考えても、あたしが冒頭に言ったことしか当てはまらない。
他は、明らかに辻褄が合わない。

 「そっか…、じゃあ私の能力って、それですか??」

 この期に及んで、まだ自分の能力もわかってなかったのか。
まあ、言ってはなかったが。
自分で気づくと思っていた。

 「……違わないけど。お前の能力の本質は、光を使って攻撃することだ。その光に敵の攻撃も取り込んで、上乗せできるんだろ」

 「そうかそうか…、そうだったのか…」

 あたしの説明に真剣に頷く。
本当に、気付いてなかったのか…………。

 ほんとにこいつは…、攻撃とか、能力とかは、人より優れてるのに、どっか抜けてるというか…。

 「そのくらい自分で気づけ」

 つい、癖で、そう言ってしまった。
ちょっとでもイライラしたり、ムカついたり、気に入らなかったりすると、すぐ口に出てしまう。
 リンが黙って、下を向いた。

 「リン、気にすんなよ。グミはリーダーのくせにこんなんだから、いつものことだし」

 「……ご、めんなさい…」

 ほんとに気にしてるのか…。
なんだか、リンにこんな顔されたら、申し訳無くなってくる。

 「グミも、もっと新人には優しくしろよ?俺らみたいに慣れてないんだから」

 「お、レンくん、珍しいね―。そんな正論言うなんて」

 「うるさい黙れ話しかけるな俺の半径5メートル以内に入んな、バカイト」

 レンと、カイトの、どっかのお笑い番組に出れるくらいのクオリティーの喧嘩という名の漫才が始まった。

 「まあまあ、グミはリンちゃんが羨ましいんでしょ?」

 「メイコ…いつ帰ったんだ?」

 さっきまで、買い物に出かけていたメイコがいつの間にか、あたしのとなりに座っていた。
 正直、びっくりするからやめてほしい。

 「…?……羨ましい…?」

 さっきのメイコの発言に、リンが疑問を投げる。
余計なことを言う。
まあ、違わないけど。

 「私も、羨ましいけどね―。このグループは【ディフェクト】。ここにいる奴は全員、【欠陥品】なんだよ。だから――欠陥品じゃないリンちゃんが羨ましい。確かに抜けてるところもあるけど――それはリンちゃんとして【完成】してるから、【欠陥】とは言わない。私たちは、人間として、人として、一つの個体、存在として【欠】けてるの。」

 ―――なるほどな、説明。
メイコにこれほどまでの、説明能力があったとは。

 「欠けてるって…、どこが…?みなさん、凄いじゃないですか?」

 「……たとえば私は、家族、親戚、全部いないわ」

 あたしは知ってることだけど…、リンは「ひっ」と短く声をあげた。
まあ、普通は驚く。

 「そして、結婚相手にも逃げられ―――というか、騙されたほうが正しいわね。詐欺よ、詐欺。それで、お金も、仕事もなくなって、途方に暮れてたところに、グミに出会って、今に至るの。」

 「……カイトは、ちょっとメイコと似てるかな…?人がいいからあらゆる詐欺や、脅しやに引っ掛かって、挙句道に迷って、ここに辿り着いたってとこだ」

 あたしたちが説明する人のほうをじっと見て、悲しそうな表情を浮かべる、リン。

 「グミは―――秘密組織出身なの」

 「えぇ!!!!!?????」

 リンは目が飛び出るほどに見開いて、あたしを凝視した。
まあ、普通の反応。

 どうして、秘密組織出身の人が、その組織に対立しているのか。
それが、たぶん疑問だろう。

 「あたしは前から組織のやり方に疑問を持ってたし、いつかは出ていくつもりだった。姉のミクとも上手くいかなかったし。組織で明らかに浮いてた。そんで、家を飛び出して、途中で拾ったのが、レンだ」

 「え…レン、捨て子だったんだすか…?」

 「ああ。一人で生きてきてたみたいだけどな。でも、あのままだったら先は短かった」

 こうしてできたのが【ディフェクト】。
【欠陥品】の集まってできた【粗悪】なグループ。

 そして、新入り。
【欠】けのない、少女。

 みんな、妬まずにはいられない。

 家族も、幸せも、信頼も、友達も、居場所も、力も。
【欠陥品】のあたしたちが持っていないものをすべて持っている、少女。

 「でも、もう仲間だから」

 そう。仲間だ。
【欠陥品】であろうと、なかろうと、仲間だ。

 あたしがそう言って、リンをみると、リンは目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。

 「グミさん……、ありがとうございます…」

 おたおたしてしまう、あたし。
どうやって、泣きやんでもらおうか…?

 「あ、グミが泣かせてやーんの」

 「いつの時代のいじめっ子だ!?ちょっと手伝えよ、レン!!!」

 「やーなこった」

 「だからいつの時代だ!!!」




 【欠陥品】でもいい。





 これがあたしの――――家族だから。







ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

欠けてたっていいじゃないか。

そこを埋めればいいんだから。

閲覧数:133

投稿日:2012/08/12 14:47:30

文字数:2,152文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    美人姉妹!! 
    いや、ふたりとも、ふつくしいですww

    ルカが狙うのは、グミちゃんに期待したいww

    2012/09/26 17:35:34

    • イズミ草

      イズミ草

      ふぉふぉう……。
      さてどうでしょうか??
      もうちょっとしたら出てきますかね??

      2012/09/26 17:50:19

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    なんだよ皆泣けるじゃねえかよ!!(涙がナイアガラの滝)
    しかもそんな泣ける話なのにカイトだけバカイトっぽさが抜けきれなくて笑えてしまうのが余計に泣けるじゃないか!!www

    現実では大半の日本人は恵まれてますよね。
    最近自分は恵まれた我々は正の感情だけではなく負の感情すらも楽しむべきだ、それが恵まれない人たちに対する礼儀だと考えるようになりました。
    だから勉強すらも楽しもうと考えるのですが…せいぜい3秒しか持たないんですよねぇ、勉強を楽しむ感情…www

    2012/08/12 21:31:56

    • イズミ草

      イズミ草

      また時間と余裕と、機会があれば、1人1人1話ずつ書こうと思ってますww
      カイトはどんだけ考えても考えても出てこなかったんですよう!!!
      「出てこね―――…あ。騙されて、道に迷えば、バカイトっぽい」
      という、カイトには申し訳ない…。

      私もそれ思います。
      ご飯のときに「うわっ!私これきらーい!!ねえ、食べて―?」とか言われると、「食べれない人とか、今餓死した人だっているのに、ガチで食べれないんじゃないなら1口でも食べろや。これだから若者はよぉ」ってなりますね。私も若ものですが…ww

      勉強は楽しめないようにできてるんですよ!!
      無理に楽しんだら、寿命が縮みますww

      2012/08/13 08:36:55

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