かなりあ荘だって人の出はいりがある。
ほぼ常駐の人(まぁ主に俺だけと言っても過言ではない)、比較的頻繁に顔を出す人、たまに顔を出す人、ほとんど顔を出さない人、いつの間にかいなくなっていく人。
中には、忙しかったけど多少の暇ができたから顔を出す人や、新しく入ってくる人もいる。
そんな中。
浅葱色の髪をふわりとなびかせながら、しるるさんすらも尊敬の念を抱く『彼女』がかなりあ荘に顔を出してきた。
同じころ、ゆるりーさんによって、彼女の『親友』が新しく入ってきた。
かなりあ荘は、また新たな賑わいを見せる。
「ターンドッグさーん!」
不意に後ろから声を掛けられ、廊下を歩いていた俺とどっぐちゃんは振り返った。
とたとたと軽い足音を立てながら、しるるさんが駆けてくる。
因みについこないだまでは歩けばぎしぎしと軋み、踏み込めば『めきぃっ』と恐ろしい音を立てるほどボロかった。先日またもどっぐちゃんがリフォームしてたけど、まさかここまで劇的に変わるとは……。
「しるるさん! ……とそれにつかさ君も」
「えへへー、こんにちはターンドッグさん!」
しるるさんの後ろから、ツインテ少女がひょこりと顔を出した。つかさ君だ。
かなりあ荘の中でもトップクラスの常識人である彼女。それでいて大勢のキャラの濃い面々に負けない明るい性格のおかげで、しるるさんに溺愛されている。なんというか、ゆるりー⇒どっぐちゃんやりんご⇒カイトに近いぐらいの溺愛ぶりだ。
因みに「少女」なのに、多くの者につかさ≪君≫と呼ばれるのは彼女がボクっ娘だから―――――と俺は勝手に解釈している。実際に理由を聞いたことはない。
だって理由を聞いてずっしりと重い話が返ってきたり、知りたくなかった驚愕の事実とか返ってきたら怖いじゃん。億に一つもあり得んと思うけど、どうすんのよこの娘っ子が『実は昔男の娘だったのでこっちのほうがしっくり(以下略)』とか言い出しちゃったら。ないと思うけどさ、流石に。
そんな話はともかく。
「どしたんです、二人ともいきなり」
「あはは、つかさ君は私が途中で拾っただけなんですけど、ターンドッグさんやゆるりーさん、あとりんご辺りにもちょっと言っておきたいことがありまして」
つかさ君の扱いがみゃーみゃー泣いてる捨て仔猫と同類になっていることは置いといて、言いたいこととは何だろうか。
「今日から新しくかなりあ荘に入ってくる人がいるんです! ターンドッグさんたちの知り合いだということなので……」
「ほぉ? 誰?」
「Tea catさんって人。茶猫さんって呼ばれてる人ですが……」
「ああ!! 茶猫さんね!!」
彼女の事ならよく知っている。ゆるりんごの大親友だ。年も同じである彼女らは見ている周りが思わず微笑むほど仲がいい。
彼女が来るともなれば、それはそれは賑やかになることだろう。
「……んで、その茶猫さんは今どこに?」
「えーっと、さっき来てたような気がしたんだけど、玄関見てもいなくて……」
「はぃい?」
そこまで言った時―――――
「ゆ―――るりぃぃぃぃぃんっっ!!!」
「ふおあ!? てぃあちゃん!? もう来てたの!?」
しるるさんのななめ後ろ―――――202号室から元気な二人の少女の声が響いた。
続いて二つの人影が飛び出してきた。一人はゆるりーさんだ。
そしてそのゆるりーさんにしがみついているもう一つの人影―――――黄色の長髪を横っちょで束ねた少女がいた。……Tea catさん、通称茶猫さんだ。
「ゆるりぃぃぃぃぃぃ会いたぁったy」
『チョーク★アタァック!!!!』
「みゃふっ!!?」
鮮やかなゼロ距離チョーク★アタックが決まったぁああぁ―――――っ!!?
しかしどうも受けなれているらしい―――――ちょっと吹っ飛んだだけですぐに体勢を立て直し、何事もなかったかのように笑っている。
「あはは、ごめんごめん♪」
「もー……毎度のことながらほんっと何やって……ん?」
そこでようやく気付いたらしい―――――しるるさんとつかさ君の『(°Д°)』とした顔と、どっぐちゃんと俺の『楽しそうで何よりです(棒)』といった表情に。
「え……え~~~~~と……さ、最初から見てました……?」
「う、うん、まぁね……」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ/////」
真っ赤になってへたり込むゆるりーさん。いやあの、今まで散々どっぐちゃんLOVEによる暴走を見せておいて何を今さらという感じなんですが。まぁそこは乙女の事情というもんがあるのだろう。うん。
そんなゆるりーさんとは対照的に、茶猫さんは意に介さずといった風にこちらに振り向いた。
「お久しぶりです! Turndogさん! それと、改めまして……初めまして!しるるさん、つかささん!」
『はじめまして~』
「久しぶり、茶猫さん。どぉ、受験勉強のほうは?」
「ぼちぼち……ですね、あはは」
ちょっぴり苦笑いだ。話によると、国数を必死で鍛えてるのだとか。
因みに俺は高校受験時、『12月から本気出す』みたいな酷い勉強だったにもかかわらず、受けた高校に全て受かるという偉業を成し遂げている。思えばあの時が一番輝いていた……今ではすっかり落武者だ。
「そんな俺と同じ道歩まないようテストしたる!! 原子番号39番!!」
「イットリウム!! 記号はY!!」
「希ガスを上から三つ!!」
「ヘリウム・ネオン・アルゴン!!」
「語呂合わせ『ぼくのふね』に該当する部分!!」
「ホウ素炭素窒素酸素フッ素ネオン!!」
「その一つ下の周期!!」
「アルミニウムケイ素リンちゃん硫黄塩素アルゴン!!」
『途中でなんか入ったよ!!?』
しるるさんとつかさ君、そして復活したゆるりーさんからマジツッコミ。
でもリンは俺もやったね。『黄燐は空気中に出すと自然発火する』⇒『空気中で『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYNNN!!!!』してるリンちゃん』で覚えたよ俺は。
「しかし見事だねぇ……ゆるりーさんも見習ったら?」
「私は文系なのでそこまでできなくてもいいんですよーだ!」
ならお互いに教え合えば完璧だね―――――そう思ったのは俺だけでいい。
「あ! 茶猫さん来てたんだ!」
今度は雪りんごさんが騒ぎを聞きつけて飛び出してきた。
「そう!てぃあちゃん来てたの!」
「やっほー雪りんごさん!」
受験生トリオの雑談が始まった。因みにゆるりーさんは茶猫さんのことを『てぃあちゃん』と呼ぶ。どっぐちゃん以上に仲がいい証拠だ。
「どーお? かなりあ荘の住み心地は?」
「すっごくよさそうで安心したよー! ……ただ……」
『ただ?』
「時々なんか変な“気”を感じるんだよねー……さまよえる幽霊みたいな? で、それがしるるさんを避けて動いてるような……」
ギクゥ!!!!!
「私少し霊感あるからさー♪……あれ、皆さんどうしました?」
『い、いや、何でもないよ……』
実際にはなんでもなくない。事情を知っている我々5人の脳裏には、『彼女』のことが思い浮かんだ―――――
――――――――――清 花――――――――――
「……しるるさん、こないだつかさ君から聞いたんですが、また何かやらかしたそうで……?」
「うううう……言わないでターンドッグさん……家賃倍増とか意地悪しないからホントやめてぇ……」
『どよ~ん』とかいう効果音が似合いそうなぐらいあからさまに落ち込んでいる。
話せば長いので割愛するが……どうやら相当なミスを犯してしまったようだ。
こりゃ長引きそうだな……どっぐちゃんに頼むほかないか。
――――――と、その時である。
「し~~~るるさんっ!? なーに落ち込んでるんですか!?」
明るい声とともに―――――誰かがしるるさんに飛びついてきた。
「ふわっ!? ……って、ああ!!!!」
振り返ったしるるさんが目を見張っている。俺やつかさ君も振り返ってみると―――――そこにはよく見知っているけど、最近見ないあの人が……!
「久しぶりですー!! しるるさん、ターンドッグさんにつかさん!」
―――――かなりあ四天王、イズミ草さん!
「ふあああああああ!! イズミさん!! 久しぶり―――――!!」
「おおっ!! イズミさん!! なんかすうげぇ久しぶりな気がする!!」
「センパ―――――――――――――イ!! やっと来たんですねー!!」
「ほんのちょっと暇ができたからねー……ちょこっとね!」
結構な勢いでしるるさんとつかさ君が飛びついていくが、全く動じないまま笑いながら二人を受け止めるイズミ草さん。心が強いのか足腰が強いのかはたまた実はああ見えて二人が加減しているのか。
今日はずいぶんと賑やかになりそうだ。
dogとどっぐとヴォカロ町! Part8-1~新たな色~
はい!一気に三人新登場!
こんにちはTurndogです。
★弁明タイム★
①つかさくんの扱いについて
周りの面子みたいに盲目的愛(どっぐちゃんLoveとかカイトLoveとかゆるりーLoveとかつかさくんLoveとか)をふりまく姿を(少なくとも自分は)見たことがないつかさ君は、常識人として成長させるチャンスがありましたが、同時に他の面子に飲まれて空気になる可能性大でした。もう≪君≫の部分でいじって、あとはしばらくイズミさんLoveさせといて、常識人キャラを確立させようとしてます。男の娘とか言わせてマジ御免つかさ君。
②ゆるりんてぃあ
茶猫さんがゆるりーさんにチョークアタック喰らってるのは仕様です。茶猫さんの希望。これマジです。あと攻撃方法がチョークアタックなのはゆるりーさんの希望。元素記号ぺらっぺらなのは茶猫さんの希望。燐(リン)《元素記号P》をリンちゃんでやったのは俺の希望←
あと茶猫さんに霊感がある設定にしたのは、初めて来た茶猫さんが知らないはずの清花ちゃんの気配を感じ取れたらすごくね?という安直な発想からw
③かなりあ四天王とイズミさん
かなりあ荘発足頃、しるるさん曰く私とイズミさん、そしてゆるりんごの4人がかなりあ四天王のつもりwなんて言ってましたが、dogとどっぐとヴォカロ町の中では『かなりあ四天王(個人)』みたいな状態でイズミさんを扱いたいと思います。理由はしるるさんの信頼がずば抜けてることと、実力もずば抜けてるところ。特に恋愛小説とイラストがずば抜け。私はともかくとしてゆるりんごも四天王として固定しちゃってもいい気がしますが、そうすると『私なんか私なんか』と二人とも後ずさりしそうな気がして、これまでの傾向から。受験生は『私なんか』はダメダメよ☆
以上、罪重ねた論理《いいわけ》終了。
コメント4
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ご意見・ご感想
ゆるりー
ご意見・ご感想
最近、幽霊と聞くだけで清香ちゃんを思い出します…w
鮮やかな零距離チョーク★アタックwww
下でてぃあちゃんが開き直ってますが、実話ですw
たまたま掴んで投げたものが辞典だったんですよ…しかも鳩尾に決まったという…w
てぃあちゃんには悪いことをしました。
霊感…私にはないですね。
むしろ、見えないほうがいいとは思いますが。
元素記号のリンがリンちゃんな件について。
結構前にてぃあちゃんがやってましたw
2013/09/14 23:13:50
Turndog~ターンドッグ~
末期ですねわかりm(((
マジで実話かwww
鳩尾に事典はいったいよ!!
そりゃね……あるよりはないほうが一般人としてはねw
俺はあった方がいいかもしれない←
ボカロ×化学好きなら一回はやらにゃあねww
2013/09/16 22:31:29
Tea Cat
ご意見・ご感想
おおお!!!
私が「dogとどっぐとヴォカロ町!」に出ている!!
ゼロ距離チョークアタックw
ただしゆるりーに辞典を投げられたことがある私には痛くも痒くもない!!
霊感…
昔はあった←ぇ
今は…気配を感じるか感じないかw←オイ
まあ、ばーちゃんの家でしか分かんないですけどね!!
ブクマ、もらいます☆にゃぁ
2013/09/14 19:08:57
Turndog~ターンドッグ~
生かしきれてない感真っ盛りですがこんな茶猫で大丈夫か?((((
辞典っ!!?痛いって痛いって!!ww
ごっつんじゃすまないよそれ!!www
うぉwwマジでありよったwwwww
俺はない。……と思うw
だが多分俺の背中には数多の昆虫霊が憑りついてるんじゃないかなぁw
ブクマありがとです!御蔭でなんか注目入りしました!
2013/09/14 20:52:56
イズミ草
ご意見・ご感想
四天王!!!??
私すっごい偉くなった気分www
何というか、他の人の作品に自分が出てるのはなんだか嬉しいというか照れくさいというか……
2013/09/13 19:47:57
Turndog~ターンドッグ~
いや元からイズミさんは御偉い方なので何をいまさr(はい?
まぁ、そうでしょうねw
だからもし暇ができてかなりあ荘をテーマにしてなんか書くときはTurndogをがりがり使っていいですよw
2013/09/13 21:11:22
しるる
その他
みんな飛びつきすぎじゃね←お前がいうな
四天王に関してですけど……親友度じゃないですよ?
私が勝てないなと思った人を入れているだけです
ターンドッグさんの戦闘には勝てないですし、ゆるりーさんの背景の描写は毎回驚かせられます
りんごはユーモアありますし、色んなアイデアに挑戦してるなって感じてます
イズミさんはいうまでもなく、構成が素晴らしいでしょう?イラストまで出来ちゃうすんごい子なんだからww
ちなみに信頼度だと、つかさくんがかなり上位ですw
2013/09/11 21:28:46
Turndog~ターンドッグ~
主に全力で飛びついてるのはしるるさんなんじゃ(家賃・・・・・
あれ? 前に信頼度とか親友度とか言ってなかったっけ?
まぁいいや、ここでそう言うならそういうことにしておこう。
裏を返せば戦闘以外は勝てるとかいうやつですねわかりm(ネガティブやめい
2013/09/11 22:36:23