虹が出ないのを知っているのは何故だろう
通り雨だと言い聞かせながら耐えたって
破れて骨の折れた傘を今もまだ握っている
長靴を履いたってすぐに溢れるんだろうな
当てにならない誰かの降水確率を気にして
どこの軒先も雨宿りするには心許なくて
次第に暗くなる空を何も感じずに眺めた
時計も壊れて雨なのか夜なのか両方かも
ありがとうって何度も呟いてみたんだ
今だけは涙が溢れたって気付かれない
元気でねって一度だけ見送ったんだ
私の中の微かな雫を雨に還す
ずぶ濡れのまま歩くのは難しくて
水着の方がマシだなとか思ったりする
大粒の雨が叩き付けるよう降ってきて
逃げ込むトンネルはすぐ水に沈んだ
涙の中を泳ぐように進んでいって
脇道の階段を少し上って服を絞って
ため息ついて重たい流れを眺めて儚い
誰かの心の淀みをまとめたみたいな色
楽しいなって何度も呟いてみた
今だけは笑顔でいても気付かれない
なんでかなって一度だけうつむいた
こぼれた雫が新しい川になる
目が覚めたら窓を叩く雨の音
濡らしたまくらに気付いても
雨のせいにしちゃえば良いかって
あの頃から雨は止まなくなった
私の拙い声を掻き消すように
私の醜い言葉を打ち消すように
私の気怠い闇を撒き散らすように
私の脳髄を焼き溶かすように
「雨が降るなんて聞いてなかった」
雨しか降らないこの街で何が出来る?
傘はもう無い誰かが持ってった
あの淀んだ流れの中に漂ってた
私の気持ちはずぶ濡れのままで
いつまでもずっとここにいる
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