昼の3時過ぎ頃。
俺はふと目を覚ました。
なんか腹の辺りがやけに重たい。
不思議に思った俺は少し身体を起き上がらせて、目に入った光景にそのまま固まった。



「な……」



そこには何故かミクがいた。
しかも俺の腹辺りにしがみついて、スヤスヤと眠っている。
予想外の事態にどうしたら良いのか分からなくなって、俺はそのまま微動だに出来なくなる。



「ミクー……起きろー……」



とりあえずこの状況に耐え切れず、俺は小さくミクを揺り起こしてみた。
だがミクは小さく身動ぎしただけで、一向に起きない。
思わず俺はため息をついた。
この状況は俺の精神衛生上に宜しくない。
色んな意味で非常に宜しくない。
だから俺はもう一度ミクを揺すってみた。



「ミク……ミクー。起きろ。今日は歌うんだろー?」



さっきよりも少し声を大きめにして声をかける。
するとミクはまた少し身動ぎをして、今度はパチリと目を開いた。



「おはようミク。よく眠れたか?」

「アレ?マスター……?」

「気がついたら早く退いてくれないか?起きれない……」

「えっ?!あ、わ、ごめんなさいっ」



ミクはアワアワとしながらそう言って、慌ててベッドから立ち上がった。
俺はそれを見ながら少し安心する。
幾らミクが可愛いからって朝飯の代わりに食べてしまう訳にはいかない(性的な意味で)。
第一作者が永遠の島流しにあってしまう。
それだけは避けたい。



「マスター?」

「ん?なんだ?」

「どうかしたんですか?」

「いや、こっちの話」



ミクが不思議そうに首を傾げたが、俺は誤魔化す様にそう言ってベッドから出た。
とりあえず飯を後回しにして、パソコンを起動させる。
今は少しでも早く曲を完成させたかった。
俺は寝室のベッドの横に置かれたパソコンの前の椅子に座って、後ろにいるミクを振り返る。



「声の調子はどうだミク?良かったらこのまま歌を録りたいんだけど」

「大丈夫です。今すぐにでも歌えます!」

「そっか。じゃあ早速録ろうか」

「はい!」



ミクは元気よくそう言って、俺はとりあえず簡単に歌を録る為の準備をする。
そんなに時間もかからないのですぐに準備は整い、また俺はミクを振り返った。



「いけるか?」

「はい。いつでもOKです」

「よし、じゃあ流すぞ」



俺はそう言って曲を流した。
パソコンから、ミクの付けたヘッドフォンから、
音がこぼれ落ちて、ミクの歌声がその音に乗って部屋を満たしていく。
ミクがヘッドフォンに手を当てながら、幸せそうに歌う。
ふとミクと目が合った。
幸せそうに微笑むミク。
その笑顔に歌いたいと泣いていたミクの姿を思い出して、
俺はミクの笑顔に釣られて笑いながら思った。


歌を作って良かったと。

歌が終わる。
俺はすぐに録音を止めて、ヘッドフォンをし、再生して完成を確かめた。

ミクの希望通り奇跡を願ったその歌は、今まで聴いたどの曲よりも良かった。

俺が作って俺のミクが歌ったからかも知れないなんて、
そんなバカ言いたくなるぐらい良い仕上がりだった。
俺はその完成にこの上なく満足して、それをそのままニコニコにアップする。
反応が悪くても、批判されても良い。
俺はこの曲を誰かに聴いて欲しくなった。
静かに隣りに立ったミクに俺は振り返らず言った。



「みんな気に入ってくれたら良いな」

「はい」



時刻は起きてからまだ1時間が経った位。
一仕事終わり余裕が出た途端、
昨日から今まで何も食べてないせいで急に腹が空いた。
俺は寝室を出て台所に向かう。
気付くとミクも後ろをトコトコついてきて、
俺達二人は並んで台所に立って飯を作る事になった。
とにかくすぐにでも飯が食いたい俺は料理に手間をかける気になれず、
とりあえず作るのが簡単なモノを作る事にした。
冷蔵庫にうどんを見つけたのでうどんを作る事にする。
10分もすれば出来上がり、俺達は一心不乱にうどんを食った。
昼飯には遅すぎ、夕飯には早すぎる時間だったがとにかく無心で食った。
やがてカラン、と食べ終えた器に投げ入れる様に箸を置いて、
俺はゴロリと床に寝転がる。
満腹になったせいで眠気が襲っていた。
ウトウトとし始めた俺を気遣ってか、
ミクが食器を片付けてくれるのを目の端で見る。
それからすぐに台所から水の流れる音が響き、
俺は洗ってくれてるんだな、と思いながらいつの間にか眠りに落ちていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Song of happiness - 第6話【5日目 前篇】

話が長いので分けました。
此処から一気に最後まで駆け抜けていきます!!

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投稿日:2010/11/19 14:17:29

文字数:1,863文字

カテゴリ:小説

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