白粉(おしろい)はたいて紅引いて
金の簪(かんざし)笄(こうがい)髷(まげ)に差し
仕上げに打掛かさねれば これがあちきの戦装束
おいでなんし旦那様 ここは泡沫(うたかた)夢の園(その)
今宵も鐘の音(ね)が響き 大門(おおもん)が開かれる
濡れたまなざし一つで囲い込み 甘い吐息ひとつで絡めとる
手練手管の限りをつくして 艶(あで)やかに戯(たわむ)れる夜の蝶
栄枯盛衰はこの世の流れ 散りゆく命も数多(あまた)ある
ここにあるのは我が身一つだけ 信じられるのは己だけ
この道から見えるのは先の見えない未来だけ
不安に押しつぶされそうな心に蓋をして
たおやかに佇(たたず)む夜の蝶 金糸銀糸で織られた帯しめて
禿(かむろ)を先導に新造(しんぞう)つれて
外八文字(そとはちもんじ)で練り歩く
色とりどりの花を飛び回り あふれるほどの蜜を集めんしょう
色と欲がうずまくこの街で
一夜(ひとよ)帯紐(おびひも)解いて私語(ささめごと)
枕の数だけ虚言(そらごと)かさね
虚飾(きょしょく)の褥(しとね)で眠るまで
一寸先は闇なれど この道を進みんしょう
大輪の徒花(あだばな)見事咲かせてみせんしょう
今宵もまた、鐘の音(ね)響いて大門(おおもん)が開く
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