タグ:捜し屋と僕の三週間
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「今よりもっと、豊かな時代・・・10年前の戦争よりもずっと前、もう50年は前の話になるかの」
シーカーは「この間」と言っていた戦争は10年前の話だったらしい。
「ワシは一人のお嬢様に、恋をしていた。伯爵家のお嬢様での、ワシなんかとはとても釣り合わないような高貴なお方じゃった」
生まれてこの方そんな人...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・13
零奈@受験生につき更新低下・・・
シーカーに頼まれたのは、今日の夕食の買い物だ。
「んー・・・」
メモを睨みつけながら、僕はリストの1番上にあったパンを買うべくパン屋のドアを潜った。
シーカーは買う物の横にどの店に行けばいいのかを書いていたから、僕は迷う心配だけはいらなかった。何がいるのか読めない時は、店の人にメモを読んでもらう。
...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・12
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サンディを見送ったシーカーは、ため息を一つつくとその姿を同僚にしか見えぬ物にした。
「・・・ふぅ」
身体の芯に始まり、指先まで重い倦怠感が蝕む。
ヒトと触れ合うのは―――ヒトに認識されるのは、今の彼にとってこんなにも重労働だ。
それでもかつて妹と触れ合った幼い日よりは成長したらしく、一、二週間ほどな...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・11
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―――それからシーカーと過ごした日々は、黒の魔術師といるにしては温かい毎日だった。少しなら、世界を許してみてもいいかもしれない。そう思ってしまう僕自身に、僕は苦笑した。
「サンディ、仕事だ」
『捜し屋』を名乗る奇妙な男に拾われてから二週間。シーカーは『捜し屋』を掲げるだけあって、犬でも猫でも人で...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・10
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二人で夕食を食べた後、約束通りシーカーは僕に字の読み書きを教えてくれた。たどたどしかったけど、彼は物覚えがいいと言ってまた冷たい手で僕の頭を撫でた。
「サンディ、今日はよくできたから私からプレゼントだ」
そう言って彼が渡したのは、いくつかの子供向けの本と題名のない1冊の本。その本はページをめくっても...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・9
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シーカーがカイトという人と店の奥、寝泊まりしている方へ消えていき、僕だけが残された。
とりあえずカウンターと思しき机の黒い椅子に座り、机に頬杖をつく。
「おとなしく店番してろ、って事だよな・・・多分」
冬の短い日は暮れ、夕闇がひたひたと迫って来ている時間。
こんな危ない時間に、客なんて来るのだろうか...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・8
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「―――レン君」
「その名前、サンディの前で出したら許しませんよ? カイト先輩」
二人はシーカーことレンが普段寝室にしている部屋に入り、そのまま鍵を閉めた。ちなみにシーカーは殺気を含んだ最上級の笑顔だ。
「分かったよ、『シーカー』君。で、本題なんだけど」
「また戦争か何かですか?」
シーカーは心底...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・7
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市場で、シーカーは僕に本と日記帳を買ってくれた。
「シーカー、僕は文字が読めないが」
そう言うと彼は、家に帰ったら僕に文字の読み書きを教えると言った。
夕焼けが、石畳に影を伸ばす帰り道。その橙色が暖かくて綺麗だと思えるのは、人間になった利点だと思う。
家の鍵を開け、ドアを開いたシーカーが突如硬直した...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・6
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次の日。
僕はシーカーと共に部屋を掃除していた。
「シーカー、この部屋何年使ってない!?」
埃が盛大に積もった部屋。その量が尋常ではない事は生まれてからが短い僕にも分かった。
「多分・・・10年以上は使ってないかと」
さらりと凄まじい事を言ったシーカーの頭を容赦なく殴る。やっぱり、その身体は冷たかっ...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・5
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サンディは寝入った途端に仔犬の姿に戻った。
それを確認したレンは姿こそ見えるが世界には干渉できない身体になると、自室へと引っ込む。
10年前に起きた戦争で、レンは沢山の人の魂を奪った。冷えた心をリーリアとの日々という蝋燭で温めていたが、どんな物にも限界が来る。
レンは再び、人恋しさに囚われてしまった...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・4
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シーカーは僕の姿を人間にして、僕に人間の暮らしを教えてくれた。
「シーカー、目も鼻もおかしいんだが・・・失敗したのか?」
見え方が奇妙な視界や全然効かない鼻の事を告げると、シーカーは咳込むまで笑った。
「サンディ、それが人間と犬の違いだ」
そういってシーカーは人間の嗅覚は犬より数段劣る事、色という物...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・3
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「シーカー、お前本当にここで暮らしているのか?」
サンディはシーカーに連れられ、街から大分外れた家に来た。よく言えば古き良き時代の面影を残した家、悪く言えばただのボロいあばら家である。
「雨漏りもしないし普通の家ですが?」
きょとんと幼い表情で、平然とシーカーは言う。
「お前は何なんだ、シーカー・・...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・2
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人間なんて嫌いだ。
世界だって嫌いだ。
僕は、箱の中で世界を呪っていた。
空はどんよりと暗く、はらはらと雪が降っている。
生憎、それを綺麗だと思えるだけの余裕はない。
僕はぶるりと身体を振るわせた。
身体はもうすっかり冷えていて、芯まで凍るのも時間の問題だ。
その時に、僕は死ぬのだろう。
生まれてす...【白黒P】捜し屋と僕の三週間・1
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深々と、雪が降っていた。
10年前の戦争に負けて以来、この国からは活気という物が消えた。
「―――おや」
黒いマントに身を包んだ、冬色の少年はふと路地裏に目を向けた。
そこには、雪に震える1匹の子犬がいた。寒さに震える砂色の仔犬は、鼻先をくすぐった雪にくしゅん、とくしゃみをする。
「君、可愛いな」
...【白黒P】鎌を持てない死神の話・エピローグ/捜し屋と僕の三週間
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