タグ「巡音ルカ」のついた投稿作品一覧(192)
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告白前の失恋から、二週間がたった。
順調に花は育っているし、順調に失恋の傷もいえてきたし、順調に食欲も戻ってきて(リンいわく、ご飯三合は食欲がないときの量)、何もかもが順調だ。
「お姉ちゃん、蕾がついた! い、いんぱちお…?」
「インパチェンスね。あら、本当に蕾。リンなら三日で枯らすと思った」
...花言葉 7
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家に帰るなり、リンは自室のベッドに倒れこんだ。
「リン、晩御飯とってあるわよ」
ドアをノックして、姉のメイコが言った。
「…お腹、すいてない? 食べてきた?」
「…食べる」
起き上がり、部屋を出た。
「あんたは色気より食い気だもんね、ご飯は三合残してあるわよ」
「そんなに食べないもん」
二人...花言葉 5
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鏡音レンは、花屋のカウンターの中でうとうとしていた。
「何やってるんです、馬鹿レン」
リングノートで頭をたたかれた。しかも、角で。
「いてっ」
はっとして振り返ると、姉が愛用のリングノートとペンケースを持って、仁王立ちになっていた。
「あなた、自分がほしい花を店の経費で買ってきて赤字にしようと...花言葉 2
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まるで壊れたように笑う姉の声を、ユキはカタカタと震えながら聞いていた。
どうしよう、先生が危ない…!
「…いいんですよね? 殺しても」
「どうぞ。好きにしてください。その代わり、これ以上鏡音君たちに手出しはしないでください」
「ええ…。いいでしょう」
「それと、もうひとつ…」
「なんですか、まだ...鏡の悪魔Ⅴ 26
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リンは壁に耳をくっつけて、どうにか盗聴を試みていた。
「何してるんですか、リン様」
「だって、何はなしてるのか気になるじゃない!」
すると、メイコが言う。
「それについては、彼女に説明してもらいましょうか」
ユキが、決心したように顔を上げた。
「ミキさんは、闇商人なんです」
「闇商人?」
リ...鏡の悪魔Ⅴ 24
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メイコに一通りのことを話し終えたレンは、ミキの部屋の前にいた。
「あれ」
ミキがいるはずの部屋のドアを開き、レンは言った。
「ミキ、さん?」
部屋の中を見回してみたが、ミキの姿はない。それどころか、ミキが持ってきたはずのかばんから何から、一通りのものがなくなっていた。まるで、夜逃げでもしたよう...鏡の悪魔Ⅴ 20
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「…それは、考えてもみませんでしたわ」
カレーライスを食べながら、ルカは言った。
「いや…。俺も、ついさっき考え付いただけだから、全然確証とかはないんだけど」
「確証はないにしても、可能性としては捨て切れませんわ。…ただの風邪かもしれませんけど」
「そうだったら思いっきり笑い飛ばしてやるよ」
「ぶ...鏡の悪魔Ⅴ 19
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「――そうか」
一人でつぶやいた。
本を開き、ぶつぶつと何か言いながら、レンは帰路についていた。開いている本は、図書館で借りてきた本である。わざわざ学校の図書室よりもほんの種類が多い図書館まで行って借りてきたのだから、これで何も収穫がなければ、レンはこの本をマンホールの中に落としてやろう、と思っ...鏡の悪魔Ⅴ 18
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「♪――…♪」
流行の曲を口ずさみながら、かばんを思い切り振り回して、リンは一人で帰っていくところであった。正直つまらないが、文句は言わずに帰る。
ミクとプリマは授業が終わるなりさっさと帰ってしまったし、レンは図書室に用があるから、と図書館に走っていってしまったし、レオンと帰ると後でレンがうるさ...鏡の悪魔Ⅴ 17
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学校の先生などは、よく考えることはいいことだ、などと言うが、よく考えすぎるのも問題と言うものである。
「この問題の答えを、鏡音君、答えて」
黒板にチョークをつきたてながら、先生がレンのほうに声をかける。
しかし、答えが聞こえないので、先生は振り向き、レンにもう一度声をかけた。
「鏡音君。答えて...鏡の悪魔Ⅴ 16
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チリン、とかわいらしい鈴の音が、まるで風鈴のように涼しげだった。風になびくほど長くもない黒髪も、彼女の幼くも整った顔立ちによく似合う、清純な印象を与えた。山吹色の瞳が、純粋な少女らしくよく似合う。真っ赤なオーバーオールのスカートが、彼女の色白な肌を際立たせた。ばら色に色づいた頬、華奢な体つき…。す...
鏡の悪魔Ⅴ 14
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「――おはようございます」
朝、大きなあくびをしながら既に制服に着替えたレンがリビングに入ってくると、メイコがキッチンに立っていて、ルカが新聞を取ってきたところだった。それだけならばいつもの風景なのだが、さも当たり前のようにミキがメイコの隣で卵焼きを作っている。なぜだか妙になじんでいた。
――そ...鏡の悪魔Ⅴ 9
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-お使い-
レンが着替えを終わらせて帰ってくると、丁度ルカとメイコが買い物袋を手に提げ、帰ってきたところだった。
「あら、カイト、早かったわね」
少し驚いたようにメイコが言うと、カイトは笑顔で答える。
「だってめーちゃんに早く会いたくて」
また、へらっと笑う。
「それはいい...鏡の悪魔Ⅴ 5
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最初に人物についての注意書きを。
リン→元気で前向き。
ミク→素直でリンのいたずら仲間。
メイコ→お姉さん。でもいざとなったらすぐノってくる。
レン→多分一番常識人。
カイト→最近は妹たちが二鼓動に影響され始め、扱いがひどい。
GUMI→この家で一人だけクリプトンじゃない。ため口でも礼儀正しい。
ル...GUMIおめでとう!
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そのときだった。
「ちょっと、その話、私にも聞かせてもらえるかしら?」
いつの間にかルカの後ろに立っていたのは、メイコだった。ずいぶんと無理な笑顔を作りながら、メイコは二人に話しかけたのである。
「…お姉さま」
「今の話、私も興味があるんだけど、いい?」
「いえ、お姉さまには関係ない話ですから」...終焉向かえば 13
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「それで、いいですか、お話聞いても?」
申し訳なさそうに言うリンに、ルカはにっこりと微笑んだ。
「ええ、勿論」
先ほどの悲しい笑みではなく、やわらかい笑顔だったので、リンは安心したようにため息をついた。
「じゃあ、あっちに座るところもあるし、お茶でも飲みながら?」
ルカはそういいながら、リンの...終焉向かえば 12
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初めて立った台地は思った以上に広くて、どこまでいって持ちの果てなんて見えなくて、空との境界線ですらわからなくなって、希望は絶望に変わった。
「曖昧なものほど儚いものはないわ」
言葉を、歌をつむげばつむぐほど、『人間』にはなれない機械的な歌声が響いて、その音をただ、聞きたくなくて、けれど君の喜ぶ顔...終焉向かえば 11
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少しして二人の怒りが収まり、英語(リンに言わせると宇宙人語)での口げんかが終わると、リンはスイッチを入れた。何のスイッチかと言うと、人間で言う「耳」が機能するかしないかなのだが、いままではあまりに二人の県下の声がうるさかったので、その声を遮断するべく、スイッチを切っていたのである。声が聞こえてなく...
終焉向かえば 9
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「――れぇんっ!」
元気にはしゃぎながら、リンはレンの元へと走りよってきた。
「なんか久しぶりっ!」
「一日会ってないだけだろ?」
「でもずぅっとあってない気がするの」
「内蔵されてる時計が壊れたんだな。早急に修理が必要だ」
「そういうんじゃないんだってばぁ!」
ぽかぽかとレンを殴りながら、リン...終焉向かえば 8
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「――ひとつだけ、お二人が助かる方法があります」
静かに低い声で言い、レンは目を伏せた。それと同時に、ミクオが勢いよく顔を上げ、レンを見た。
「ほ、本当か?」
その表情は、うれしそうに輝いていた。
「ええ、勿論」
無理な笑顔だとわかっていながら、笑顔を作ってなんでもないかのようにやわらかく答え...カラフルワールド 10
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――なぜだ。
なぜ、何故、どうして…。
「――あなたが出て行った後、リンが発作を起こしたんです。あの子は元々体が弱く、その医療費を払いきれないと親に捨てられた子でしたから、いつかはこうなるとわかっていたのですけれど」
うそだ。
だって、今、三人の契約者の中で死を所有しているのはミクオでもリン...カラフルワールド 9
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「――それで?今日は何しに来たの」
紅茶を出しながら、カイトが言った。
「別にどうってことないんだけどぉ」
ティーカップを両手で持ち、香りをかぎながら言葉を濁す。
「レンガどうってことない、っていうときは、何かあるときなんだ」
「よくわかってらっしゃる」
自分を理解されているというのはいかにも...カラフルワールド 8
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先ほどからリンはずっと、指にはめた緑のガラス球がはめ込まれた指輪を見て、嬉しそうに笑っていた。それは恐らく、可愛らしい指輪を自分の金でなく手に入れることが出来たという喜び以外のものがあるのだろう。
「買い物から帰ってきてからリン、ずっとあんな様子なのよ」
「よほど嬉しかったのでしょうね。可愛らしい...カラフルワールド 7
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小鳥のさえずりで身を覚まし、朝は爽やかなレモンティーとクロワッサンを二つ、そしてマカロンを三つほど頬張って――、と言うところで、目を覚ました。しかも、ベッドから落ちたおかげで目もぱっちりである。その分、気分の悪さは数倍になってしまったが。
そんな夢を見た所為で、いつもの平凡な朝食が妙に劣化して見...カラフルワールド 5
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…こんばんは、死神の『レン』です。
現在、非常に肩身の狭い思いをしております。
「ちょっと、ルカ、そこのお醤油とって」
「あ、はい、そっちのソースとっていただけます?」
「ルカ姉、スプーン足りないよ?」
「飯まだー?」
ばたばたと忙しい四人の様子を静かに眺めながら、レンは部屋のはじによって壁に...カラフルワールド 4
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「――へえ、なるほど」
納得した、と言うようにリンがうなずいた。
「分かってもらえましたか?」
レンはまだ敬語を崩さずに聞いた。
「うん、よくわかった。ありがとう、レン」
にこっと無邪気に笑い、リンは言った。
すると、レンは少しの間目を見開いてリンをじっと見つめ、しばらくしてから、ぷっと噴き...カラフルワールド 3
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「それじゃあ、これから誰かが死ぬまでお世話になります。よろしくお願いします」
にこにこと笑顔を壊さず、少年は言った。きれいな敬語の裏に隠れた露骨に残酷な言葉が、その場の空気を鋭く凍りつかせてしまった。お辞儀の仕方も滑らかで、慣れた風である。
顔を上げると、少年は早速、とノートを開いた。
「それじ...カラフルワールド 2
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今日もめまぐるしく走り回る車と人間たちは昨日までとなんら変わらず、自分の存在をも否定するようで。
「…」
大体は街を眺めて無心になり、何度柿の上に昇って風を感じてみて、時折歌を歌って時の流れを感じる。
自分がここに存在するという事実が、時の流れを作り出していると言っても過言でない存在である彼は...僕、神様です。 8
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夜もふけた。
勿論、リンは家に帰ってしまって、神様の木のもとにはレンが一人でポツンと街のまばらな明かりを眺めているだけである。
ルカも、
「人間の世界にくることなんてそうないですもの、思い切り観光してきますわ!」
とか何とか言って、リンの手書きの地図を貰い、喜び勇んで“人間界観光”へと出かけ...僕、神様です。 7
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「――ここが…」
桃色の長髪を揺らしつつ、真っ白で清楚なワンピースを着、シルバーの落ち着いたネックレスとビアスにブレスレットを身につけた、一件どこぞの財閥の令嬢かと思われるような、美しく整えられた容姿と立ち振る舞いが、寧ろその殺風景な小高い丘には異質にも思えた。
まるでモデルのような理想的な体型...僕、神様です。 6