「先程は失礼なことを言って申し訳ありません……申し遅れました、私は富岡初美と申します。この子は息子の和也です。」

 「はじめまして、巡音ルカです。こっちは家族の初音ミクに鏡音リン・レン、それにメイコと(バ)カイトさんです。」

 「ルカちゃん!?今こっそりバカイトって言わなかった!?」

 「えー、気のせいよカイトさーん(棒」


 少年・和也と、その母親・初美の加わったボーカロイド一行の席は、実ににぎやかになっていた。

 はしゃぎ疲れて眠っている和也の頭をなでながら、初美は申し訳なさそうに笑った。


 「本当にすみません……突然押し掛けてしまって……。」

 「いぃえぇ、気にしませんよ!……それに……!」


 ルカはちらりと周りを見る。先ほどの楽しそうな様子を見て気を許したのか、一時は離れていた他の乗客も元の席に戻って、興味深そうな顔でルカ達のことを見ていた。


 「……お二人のおかげで私達も誤解が解けたみたい……!ありがとうございます!」

 「あ……い、いえ……!」


 そこから、ルカ達は自分達について話しだした。



 「ええ……!?皆さん……機械人間なんですか!?」

 「そうなんですよー!あたし達こー見えてもバイオメカなんです!」

 「全然気づきませんでした……!人間にしか見えませんよ……。」

 「まぁ僕らは人間に近づくのがコンセプトにあったみたいですから!」

 「カイト兄、それカイト兄の自慢することじゃないぞ?」

 「あ……そう?」

 『あはははは…………。』



 ひとしきり笑った後、初美が急に話題転換してきた。


 「ところで、皆さんは今日家族旅行か何かで?」

 「ええ!私が久しぶりに休暇をもらえて……それで皆で慰安旅行に来ているんです。初美さんも和也君と旅行ですか?」

 「あ……え、ええ!そうなんです……。」


 一瞬、初美の声が乱れた。それに少し眉を動かしたルカは、一瞬間をおいて。


 『そうなんですか!やっぱり旅行っていいですよねぇ~!』


 はっとした顔でメイコが振り向いたが、ルカはお構いなく話し続ける。


 『どちらまで行かれるんですか?』

 「終点の八又町まで……。」

 『えっ!?私達と同じですね!もしかしたら海岸で鉢合わせしちゃったりして!』

 「え、ええ、そうですね。」

 『……あ、ちょっと私はしゃぎすぎましたね、すみません。』

 「あ、いえ、気にしないでください……。」


 そんな少しぎこちないような会話をしばらく続けているうちに。



 《終点、八又町ー八又町ー、お出口はー左側ですー…》



 「あ、着いたぁ!」


 『ぱあああっ』と言う効果音が似合いそうな声を上げてミクが立ち上がった。

 駆けだすミクに続いて、リンとレンもきゃぴきゃぴ騒ぎながら走っていく。

 それをあきれ顔のメイコと苦笑いするカイトが追っていく。


 「さ、行きましょ初美さん。和也君、着いたよ。」

 「う~ん……あれ、着いたの?」

 「そ!着いたの!」

 「ホント―!?ねールカさん、後で海で遊ぼうよ~!」

 「いいよー!?おねーさんのNice body見せつけてア・ゲ・ル♪」


 他愛無い(?)会話をしながら、ルカ、初美、和也が電車の扉を出たそこでは。



 「う~~~みだぁ――――――――――――――――っっ!!」



 ミクが大はしゃぎしていた。

 駅から見える大海原はどこまでも果てしなく、そして日の光を反射して眩しく輝いている。

 ミク達にとって、感動モノ以外の何物でもなかった。

 思わずルカまで見とれていると。


 「それではみなさん、私達は一度ホテルに向かいますので、これで……。」


 初美が和也を引き連れてその場を離れようとしていた。


 「あれ、もう行っちゃうんですか?」

 「ええ、いろいろと準備もありますので……。」

 「それじゃあ、また海水浴場でお会いできるといいですね。またね、和也君。」

 「またねー!ルカさーん!」


 手を振りながら去っていく和也と、その手を引く初美をルカはいつまでもにこやかに見送っていた。

 そしてしばらくして初美の姿が大分小さくなった、その時だった。

 メイコがルカの肩にポンと手を置いて、囁いた。



 「―――――さて?そろそろ教えてもらいましょうか、ルカ?初美さんと話してる時、途中から『心透視』を使って話してたわけを……!」



 『えっ!?』


 驚いたミク達がルカの顔を見上げた時、彼女らは確かに見た―――――いつもの優しいお姉さんである『巡音ルカ』の顔が、一瞬にしてヴォカロ町最強の刑事―――ヴォカロ町警察署捜査一課全捜査班兼任特殊刑事『巡音流歌統括警部補』の顔に変わるのを―――――。


 「…あの人、息子と一緒に心中するつもりよ。」

 「ええっ!?あんなに明るかったのに!?」

 「空元気よ、空元気。話の途中で口調が暗くなったから、ちょっと心の中探らせてもらったんだけど……あの人、旦那がギャンブルで莫大な借金作って蒸発して、半年ぐらい前から女手一つで和也君を育ててるみたい。でも数週間前、突然仕事をリストラされて借金を返す手立てがなくなり、どうしようもなくなったから最後に旅行と称してこの町まで来て、ちょっと和也君を楽しませた後に、バッグに忍ばせてある七輪と練炭で無理心中図るつもりなのよ。」


 ミク達の顔から血の気が引いていく。もしもこのまま二人を行かせてしまったら。きっと初美は、だれも邪魔することのないホテルの一室で、和也を寝かせて練炭に火をつけるだろう。

 ミクの考えを読み取ったのか、ルカがキッと前を見て口を開いた。


 「そうなる前に―――私が止めてくる!皆は海で楽しんでてよ。後から行くから。」

 『はあああああ!?』


 ルカの爆弾発言に、全員から絶叫の嵐だ。

 そしてメイコがルカの頭をつかんで無理やり自分の方向に向けさせる。


 「あだだだだ!!何すんのめーちゃん!?」

 「そりゃこっちのセリフよ!!せっかく課長さんにもらった休暇でそんなことしてどうすん――――――――――」



 「マスターがこの場にいたらっ!!……絶対に言う。『旅は道連れ世は情け……旅で出会った人は皆家族、危険な目にあってたら必ず助けろ』って!!」



 ルカの強い意志が、その場に響き渡った。

 圧倒される。目の前にいるのは警察の制服を着た、いかにも刑事なルカではない。いつもの衣装を着た、気品あふれるボーカロイドのルカでもない。私服を着た、どこにでもいそうなお姉さんのルカだ。

 そんなルカから、まるで息ができなくなるような強いプレッシャー、そして息をのむような強い想いが発せられていた。

 しばらく呆気にとられていたメイコ達。しかししばらくしてため息をひとつついて。


 「……分かったわよ。ただし行くなら、絶対に止めてくること。そして速やかに合流すること。いいね!?」

 「OK!!ありがと、めーちゃん!!じゃみんなー楽しんでてね―!」

 「あ、ちょっ、ルカ姉!?」


 ミクが止める間もなく、ルカは風のように走っていってしまった。


 「……メイコ姐、いいの……?」

 「……ああなった時のルカはだれにも止められないよ。マスターノートを読んで以来、心の中のアンドリュー博士の言葉に忠実に生きるようになったルカは、おそらくアンドリュー博士以外の人には止められない。……まったく、ホントにマスター大好きっ子なんだから……。」


 呆れ顔で笑うメイコだったが、それでも心の内には喜びが生じていた。

 なぜなら―――――このルカの変貌はメイコにとって、嘗てのルカが帰ってきたようなものだったから。


 (……アンドリュー博士。あなたの言葉のおかげで、あたしが昔一緒に飲んだ、あの頃のルカが帰ってきてくれましたよ。)


 天を仰ぎ、今は亡き天才科学者に思いを馳せるメイコ。そしてパン!と顔を両手でたたいて。


 「さ!ここで遠慮して遊ばなかったら、ルカの気持ち全力無視になっちゃうから!今はルカの分まで、しっかり遊びましょ!」

 『う…うん!』


 未だに少し戸惑うミク、リン、レン、カイトを引き連れ、メイコは自分達の泊まるホテルへと、そしてその前に広がる海水浴場へと向かった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボーカロイド達の慰安旅行 Ⅳ~巡音流歌警部補は休まない~

とことん刑事なルカさんwwwこんにちはTurndogです。

ルカさんは休むということにつくづく縁がない人ですなぁ。
そしてこのマスターっ子がwwwカッコイイのになぜか可愛いぜルカさん!

そしてカイトの扱いはまだぞうき(だからさぁ


次回!ミクとリンとレンがhshshsな裏で、俺の真骨頂が唸りを上げる!!

閲覧数:321

投稿日:2013/03/06 21:35:19

文字数:3,488文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

  • 関連動画0

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    根っからの仕事人っぽいですね、ルカさんww

    ↓いいですねえ、みなさん……
     私もほしいです……

    2013/03/10 08:33:29

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      ルカさんに打ち勝てる仕事人は絶対いないwww

      機会があれば買うといいですよwww
      千本桜のルカさんの可愛さは破壊兵器。

      2013/03/10 20:37:23

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    ルカさんが、かわいくなったよねw
    でも、相変わらず反則というか、法律ぎりぎりの能力ww

    DIVA-Fのルカさんかわいくてww←

    2013/03/08 21:01:41

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      プライバシーの侵害?
      ルカさんだから許されるのさ!!←

      千本桜で後ろでスライディングずっこけしてるルカさんが最強に可愛いwww
      リンちゃんなうのルカさんが最強すぎてもはや何も言えないwww
      ルカさん襲ってもいいですk(黙れ変態

      2013/03/08 21:27:44

  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    皆さーん集合ー!
    いいですか?今から初美さんを苦しめた旦那をぶっとばしに行きますよー((コラ
    『ルカさんをhshsし隊』のゆるりーでs((←

    カイトwwwどんまいwww
    ヴォカロ町警察署捜査一課全捜査(ry!?漢字多くて頭が混乱してきました←
    っていうかルカさんすごいな!

    旅行に行っても刑事なのですね!
    ルカさんは忙しいですねw
    そんな人現実にいたら凄いですけどww
    体壊れますよ。

    皆さーん!!明るくて可愛くて美しくてhsh…なルカさんが戻ってきましたよ―――!!
    アンドリュー博士―――!!ありがとうございま――――s(((

    ミクリンレンがhshs!?気になりますw
    感想になっていなくてすみませんw

    2013/03/07 22:20:31

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      まぁ待つんだゆるりーさん、
      ここは『ルカさんをhshsし隊』隊長の俺が(いつ隊長になった

      カイトはまだぞうk(やめたげてよぉ
      ルカさんは最強なのです!www

      ルカさんは基本仕事しかしませんwww
      自分の体の利点をよくわかってる人www

      アンドリュー博士も最強(いいから

      ちょっとだけねwwwhshsは。

      2013/03/07 22:50:18

オススメ作品

クリップボードにコピーしました