先に動いたのはリリィだった。
「シャア!!」
猛スピードで突っ込んでくる。速い!!
高速で振り下ろされる大鉾『鬼百合』。
ルカが飛びのいたその場所で響く爆音。その音と土煙が収まったそこでは、地面が爆撃されたかの様に深々と抉られていた。ルカの背筋を冷たいものが走る。
(それにしても…あの超重武器を背負ってあのスピードって…まさか…!?)
「…音波術ねっ!?」
鬼百合を担いで、リリィはにっと笑った。
「そ!その名も『サウンドマッスル』。あたしの筋肉はあたしの声に共鳴して通常の数千倍の筋力を発する特殊鋼線で出来てるの。声の大きさに比例して強くなるんだけど、簡単な声でもこの通り………ハッ!!」
叫びながら地面に拳を叩きつけるリリィ。直後、轟音が鳴り響いてリリィの周り半径5m強の地面が弾け飛んだ。
呆然とするルカたちにリリィは鬼百合を突き付け、誇らしげに嗤う。
「さらにこの鬼百合も、あたしの筋肉の鋼線と同じ金属で作られているため、サウンドマッスルの影響を色濃く受ける…この意味、頭のいいルカさんならわかるでしょ?」
鬼百合の持つ様々なエネルギーの増幅と筋力の増幅の共鳴。ルカの顔から血の気が引いていく。
「ふふふ…!さぁ、もう一発食らいな!!」
再び突っ込むリリィ。ルカに向かって鬼百合を振り下ろそうとした瞬間!
「せぃ!!」
気合の籠った声がして、鬼百合を2本の手が受け止めた。メイコが咄嗟に割り込んで、鬼百合を掴んだのだ。
僅かに驚いたような表情のリリィにメイコは囁く。
「悪いけどね、馬鹿力で負けるわけにゃあいかないのよ、あたし!!」
そしてそのまま鬼百合ごとリリィを放り投げた。瞬時にリリィは体勢を立て直したが、
「メイコバ―――――――――――――ストっ!!」
出力全開のメイコバ―ストが間をおかず叩き込まれた。咄嗟にリリィは鬼百合で防ぎ、地上に降りる。そして再び一気に加速し、メイコに向かって鬼百合を振りぬいた。
しかしその一撃はいとも簡単にかわされ、巨大な刃が虚空を切り裂く。
「大鉾の様な超重刀剣は薙ぎ払うか振り下ろすかのどちらかしか方法がない…至極読みやすいのよ!!」
そういってメイコは再び空中からメイコバ―ストを放とうと構えた。その時だ。
「ホントにそう思うのか?」
はっとしたメイコが見下ろすと、鬼百合の剣線が彼女を狙っていた。―――そう、空中のメイコを狙い撃つ、刺突の体勢だ!
「せい!!」
気合の籠った声とともに、捻りを加えられた刺突が繰り出された。その瞬間、渦を巻くような衝撃が、メイコの喉を貫いた!
「―――――!!」
苦悶の表情を浮かべながらも、メイコは無言で吹っ飛ばされ、地に墜ちた。
「めーちゃん!?」
慌ててリンが近づき、そこで思わず口を押さえて立ち尽くした。
メイコの喉は破壊され、機械部品が露出していた。貫通はしていなかったが、メイコバ―ストはおろか、まともに音を発することもできなさそうなほど機械声帯が破壊されていた。
鬼百合を地面に突き立てたリリィが嗤う。
「薙ぎ払うか振り下ろすしかない?至極読みやすい?そりゃ普通の人間の場合だろ?このあたしにその常識を当て嵌めんじゃないよ。…まぁ、この『鬼百合の芽吹き』を食らって、喉がぶち抜かれないのは大したもんだと思うけどね。何はともかく、これでメイコさんは戦闘不能…さ、次は誰が来るの?」
全員が一瞬躊躇する。しかしそこで、倒れているメイコの前に飛び出した者がいた。ミクである。
メイコをちらりと見て、ミクは小さく、しかし鋭くつぶやいた。
「…『Solid』…いいよね…!!」
メイコは無言のまま、苦しそうに、だがしっかりとうなずいた。
「リン!レン!メイコ姐の回復をお願い!」
リンとレンがツイン・サウンドでメイコの回復を開始したその瞬間、ミクの髪と目の色が薄い金色に変わり、姿が消えた。無音無動作の『Light』発動だ。
鈍い金属音がして、リリィの鬼百合が傾いだ。ミクの高速連打が、リリィと鬼百合全体のバランスを崩したのだ。
「うっ!?」
「やっぱり…!!たとえどれほど強い力を発揮できようとも、リリィさんの声と共鳴しない限り鬼百合もサウンドマッスルも発動しない!!…『Solid』!!」
リリィの背後に現れた、灰緑色の髪のミク。放たれた人斬り音波『Solid』が、容赦なくリリィに襲い掛かった。
その時だ。瞬時に反転したリリィが地面に鬼百合を突き立て、
「おおおおおおおおおおっ!!!!」
強い叫び声を上げた。威力のある超重低音!それに反応した鬼百合は、辺りの地面を破壊し一気に跳ね上げた。舞い散る岩石の破片。それは、ミクの『Solid』をあっさりと遮った。
「なっ…!?」
驚いたミクの動きが一瞬停止する。そのほんの一瞬の間に、リリィは次の行動に移っていた。
地面に突き刺さったままの鬼百合の元から、ふっとリリィの姿が掻き消えた。
「え!?」
思わず辺りを見回すミク。
その瞬間、背後にリリィが現れた。そのミクの首裏を狙う両手の形は―――貫手…!
「シャア!!」
奇声とともに、両の貫手による高速連打がミクの首裏に叩き込まれた。
「かは…!」
苦しそうな息が漏れて、ミクはその場に倒れこんだ。リリィはほぼ同時に鬼百合の元に戻り、誇らしげに笑っている。
「六種類の音波を操る…『Append』だっけ?対した音波術だけど、その仕組みのアタリはついてんのさ。それほど複雑な音波を瞬時に切り替えるには、脳幹…特に延髄からの高速の信号が必要さ。ならばその信号を狂わせてしまえばいい。気絶させるほどの力はいらない…ただ延髄のある位置を連打すれば、それだけでミクの音波変換は困難になる。…もっとも?あたしの最低レベルの力でも、ミクにはちょ~っと強すぎたみたいだけどね?」
リリィの言う通りであった。ミクは完全に白目をむいて痙攣している。
ぎりっと歯を食いしばったルカは、鞭を強く振るった。蛇のようにうねる鞭はリリィを跳ね飛ばし、同時にミクの体を優しく包み込んで手元に手繰り寄せる。
ミクを自分の後ろに寝かせた後、ルカはリリィに向き直った。
「リン!レン!めーちゃんの回復は!?」
「まだまだ時間がかかりそう…!見た目以上にひどい損傷だよ!」
「…!!二人とも、一旦中断して私を援護して!!」
リンとレンはメイコの元から離れ、ルカの後ろで構える。
そこへ、カイトが駆け寄ってきた。
「ぼ…僕も何か手伝うよ!」
しかしルカはカイトを鋭く睨み付け、突き放すように叫んだ。
「カイトさんはミクとめーちゃんのこと見てて!悪いけど、リリィの前じゃカイトさん役に立たないわ!!」
「なっ…!?や…役に立たない!?」
愕然とするカイト。
「そうだよ!カイト兄ちょっと足手まとい!」
「しばらく下がっててくれよ!ちょっと邪魔くさいから!!」
さらにリンとレンが追い打ちをかけてしまう。
「う…ああ…あ…!!?」
必死に声を出そうとするけど、出せなかった。出そうとしたときには、すでに三人はリリィに向かって突っ込んでいた。
「『蛸足滅砕陣』!!」
『ツイン・サウンド・サンダ――――――――っ!!!!』
いきなりのルカの奥義と、リンとレンの奥の手。共に上方からリリィを狙い撃つ!
しかしリリィは全く動じていない。それどころか、余裕の笑みを浮かべ、
「せいや!!」
と一声、そして鬼百合を空に向かって真っすぐ掲げた。
その鬼百合が避雷針となったのか、ツイン・サウンドによる電撃が鬼百合に降り注いだ。
帯電した鬼百合とリリィの体。本体が鉄であるルカの鞭は、そこに強く引き付けられる。
そして鬼百合に触れた瞬間―――一気に放電された莫大な電気は、鞭を伝わってルカの身を激しく焼いた。
「うあああああああああっ!!」
喉が避けるような悲鳴を上げて倒れこむルカを見て、激しく動揺するリンとレン。その隙を、リリィは見逃さなかった。
「せい!!」
一気に突っ込み、リリィは鬼百合で薙ぎ払った。気づいたリンとレンが慌ててバリアを張るものの、生半可なバリアでは防ぎきれるものではなかった。
バリアは弾き飛ばされ、吹き飛ばされた二人は激しく地面にたたきつけられ、そのまま気を失ってしまった。
鬼百合を背負い、ゆらりと立つリリィの視線の先には―――ただ一人立つカイトの姿。
「さぁ!あとはあんただけだよ、カイトさん!?」
リリィの声に思わず身を縮ませるカイト。が、それでもしっかりとリリィを見据え、息を思い切り吸い込んだ。
『卑怯は…褒め言葉だ――――――――――っ!!!』
全力を込めて声を放つ。『脱力砲』だ。
しかしカイトの渾身の一撃は、リリィのたった一撃の掌打により弾き飛ばされてしまった。
「うっ…。」
たじろぐカイトに、リリィは深いため息をついた。
「何これ…だっさ!!カイトさんだけやたらと弱いじゃん!!期待して損した…あまりの強さに切り札として後ろに控えてるのかと思ったら、ただ単に弱いから追いやられてただけなのかよ?」
「いっ…いや…そ…そんなことはっ…!!」
しどろもどろで全く説得力がない。そんなカイトを無視して、リリィは離れたところで固まっているグミに振り向いた。
「それともグミが来るのか?少なくともカイトさんよりはできるだろ?」
「ひっ…や…やだ…勝てないよ…!!」
グミはひきつった表情で首を振る。やれやれと手を振ったリリィは嘲笑を浮かべる。
「ほんっと期待はずれだったよ。特にカイトさん…やっぱり足手まといなんじゃない?全然役に立ってないよ?ケルディオ博士があの世で泣いてるよ?ふふ…あははは!!あはははははははははははっ!!!!」
高らかなリリィの嗤いが、カイトの耳に入り込む。
その瞬間、カイトの思考は吹き飛んだ。
アシデマトイ?ヤクタタズ?
―――ドクン―――
ボクハイラナイ?ココニイラナイ?
―――ドクン―――
チガウ!ボクハイラナクナンカナイ!
―――ドクン!―――
アシデマトイジャナイ!ヤクタタズジャナイ!
―――ドクン!!―――
『僕は……足手まといなんかじゃないんだアァぁああァぁァああァァぁぁぁアァぁアあ!!!!!!!』
カイトが狂ったような絶叫を上げた瞬間!
―――フッ。
周辺の建物や街灯の電気が、一瞬にして消えた。
いや、それだけではない。あっという間に、そのまわり―――いや、町全体の電気が消えていく。
その異変に反応したルカが、意識を取り戻しあたりを見回し、そしてカイトのほうを見た。
「…何?何が起こってるの!?」
未だに叫び続けるカイト。その肌は徐々に浅黒くなっていく。
そして突然前かがみになったかと思うと―――
『グルオオオオオッ!!!!』
魔獣のような叫び声とともに、カイトの背中を突き破って、6本の金属の骨組みが現れた!!
「きゃあああああああああああああっ!!!?」
グミが悲鳴を上げる。ルカもまた絶句し、固まってしまっている。
やがて骨組みの上を、黒い羽根が覆っていき、出来上がったのは―――6枚の黒い大翼であった。
筋肉質になる手足。手の指にはカミソリのような鋭い爪。膨らんだ脚は、靴を破ってこれまた鋭い爪をのぞかせる。
ふわりとカイトの体が浮き上がる。巨大な翼が、揺らめくように羽ばたいたのだ。
『グオオオオオオォオオオオォォォオオォォォオオォオォォオオン!!!!!!』
その緩やかな動きとはまるで対照的な、魔獣・カイトの咆哮がヴォカロ町に響き渡った―――――。
蒼紅の卑怯戦士 Ⅲ~鬼神リリィとカイトの異変~
デストロイヤー・リリィ!!こんにちはTurndogです。
超重兵器・鬼百合!!こんなもんを持たせたからにはそれを怪力で振り回すってのが一番ダイナミックでいいですよね。でもる○剣でこんなのは薙ぎ払うか振り下ろすしかないと言っている。だったらそんな大剣で突きができるぐらい全身筋力モリモリいやっふううううう!!がリリィの音波術『サウンドマッスル』の始まりです。
おかげで「C'sボーカロイド」の諸君が霞む霞むwww馬鹿力ならめーちゃんも負けないはずなんですけどねぇ。あのルカさんですら一瞬www
そして気づいたかな?グミちゃんがすんごい空気っぽくなっていることにwww
最後のカイトの葛藤…これは一昔前の自分の心境をほぼ表してます。考えることだけで言えば、カイトは自分に一番似てるんですよねwwww
カイトの突然の暴走!!そして次回、あの金髪サイドテールが本気出す!!乞うご期待!!(よくわかんねーよこれじゃwww
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sis
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振られる度に見つけて
いまは見えないあなた
【A1】
儚い意識は崩れる
私と言うものがありながら...【♪修】スレ違い、あなた。
つち(fullmoon)
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
デビルカイト降臨!!
めーちゃんの台詞…まんま剣○がいってなかったっけ?www
六枚の翼って大天使の証拠だっけか?wwあれ八枚だったかな?ww
今後、グミちゃんがヤ○チャ化しないことを願おうww
2012/05/19 23:23:11
Turndog~ターンドッグ~
デビルってますよー!!www
ぎくり。…気のせいです。気のせいだということにしておけばすべて丸くおさまr(やかましい
または堕天使ルシフェンの証でもありますね。カイトはどっちかっていうと今堕天中です!!www
意外と使いづらいよグミちゃん(汗)
2012/05/19 23:31:49
雪りんご*イン率低下
ご意見・ご感想
カ……カイトォォォォォォォォォォ!!!!!
カイトが暴走した! このあとどうなるんだ!??
……どうでもいいけど、“6枚の大翼”とか“肌の浅黒さ”とかで「悪ノ娘 赤のプr(ry」を思い出した(((
ブクマ頂きm「ていっ(←!?)」───ぐはッ!
2012/05/19 22:16:11
Turndog~ターンドッグ~
乞うご期待!!超乞うご期待!!…でも次にうpできるのいつだろうwww
あ、りんごさんならきっとわかると思ってましたwww何を隠そう!!モデルはまさしくそれなのです!!
何が起こったあああああ!?ありがとうございますw
2012/05/19 22:27:58