※ カイミクで現代パロです。
「……ミク?」
「あっ!はい。何ですか、マスター?」
ぼーっとしていたのか、突然話しかけられたわけではないのに大げさな反応をしてしまった。
(やっちゃったなぁ……)
私は内心、自分に呆れる。
あの人はもちろん、マスターにもこんな自分は見せまいと思っていたのに……。
「いや……最近、元気がないからさ。相談事だったら聞くよ?」
「い、いえ。そんなことないですよ?大丈夫!私は元気ですから!!」
ね!と言って、マスターの目の前でファイティングポーズをとってみせる。
すると、そんな私の姿を見て安心したのかマスターは「早く寝ろよ」と一言だけ残し、自室へと戻っていった。
しかし、実際の所はマスターの言った通り、自分は元気がない。
原因はわかっている。
マスターの親友であるカイトお兄ちゃんのことだ。
彼とは、私がマスターに拾われてきた当日に会った。
青い髪に優しい微笑み――。
“王子様”
その言葉がぴったりな人だと思った。
親に捨てられた私にとって、マスターは父。カイトは兄のような存在だった。
だから私はカイトのことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っていた。
マスターのことはさすがに「お父さん」とは呼べなかったので、そのときに丁度見たテレビの登場人物が使っていた「マスター」という呼び方を使うことにしたのだった。
そして月日が経ったある日、街を歩いていると私はお兄ちゃんを見つけた。
(あ、お兄ちゃんだ!)
「お兄ちゃ……」
呼びかけながら駆け寄ろうとして、やめた。
近づいてくるお兄ちゃんは一人ではなかったのだ。
今まで死角となっていて見えなかったお兄ちゃんの隣には……。
(綺麗な、ヒト……)
自分とは比べようもないような大人っぽく、綺麗な女性が、お兄ちゃんの隣で楽しそうに会話をしていた。
お兄ちゃんも、いつも私に見せるような顔ではなく、とてもリラックスした表情をしていた。
(やだ……見たく、ない、よ……)
段々と近づいてくる二人から逃げるように、私は家まで走り出したのだった――。
「あの綺麗なヒト、お兄ちゃんの恋、人……なのかな?」
思い出すと、心が痛くなる。
「私、お兄ちゃんが…………好き?」
(あぁ、だから……)
あの光景を見たくない。
そう思ったんだ――。
「……ん。あ、さ……?」
気がつくと、辺りは明るくなっていた。
「私、結局ここで寝ちゃったんだ……」
いつの間にかかけられていたタオルケットを握り締めながら呟く。
(マスター、もう出かけちゃったかな?)
前々から今日は、朝から出かけてくると言っていた。
でも、お昼過ぎには帰ってくるからいい子にしててって。
とりあえず朝ごはんを食べようと思い、身体を起こすと私は固まってしまった。
「おはよう。よく眠ってたね」
「お、お兄ちゃん?!」
私が眠っていたソファーの端に、お兄ちゃんがいたのだ。
「え……?な、で……?」
「今日はミクの誕生日だからね、お姫様にプレゼントを渡しに」
「誕、生日……?」
爽やかに言うお兄ちゃんの言葉を、私はしばらく理解できなかった。
えっと、今日は――8月31日。
そっか、私がマスターに拾われた日で……カイトお兄ちゃんに初めて会った日。
「思い出した?」
「うん……」
優しい笑みをくれるお兄ちゃん。
でも、頭の中にはまだあの綺麗な女のヒトの影がちらついている。
あのヒトは、お兄ちゃんのカノジョ……なの?
「ミク?元気ないなー。大丈夫か?」
「あ、の……お兄、ちゃん」
「ん?」
緊張で、喉が渇く。
私はちゃんと笑えてるだろうか?
「お兄ちゃんって、綺麗な彼女さんがいるんだね」
「………へ?」
お兄ちゃんは、驚いている。
(あぁ、やっぱり。あのヒトはお兄ちゃんの恋人なんだ。私に優しいのは、私が“妹みたい”だからなんだね……)
「この前、街でお兄ちゃんとその人が歩いてるの見かけてね。でも、邪魔しちゃダメだと思って話かけ――」
一瞬、何が起こったのか理解が出来なかった。
目の前に広がるのはお兄ちゃんの顔。
声は出せない。
だって、お兄ちゃんの唇が私の唇に重ねられてるから。
「ぷはっ……。お、兄ちゃ……!」
やっと解放された。
でも、すぐにお兄ちゃんに強く抱きしめられた。
「ごめん、ミク……。でも、ずっと好きだったから、誤解されたくないんだ……」
「え?」
好き?誤解されたくない?
それは一体……。
「その、俺と一緒にいた女のヒトって、髪の毛が短いヒトだろ?」
「う、うん」
「それ、従姉妹なんだ」
「従姉妹?」
お兄ちゃんの従姉妹さんだったんだぁ。だからあんなにリラックスしてたんだね。
何か、申し訳ないことしちゃったなぁ……。
「彼女には、プレゼントを一緒に見てもらってたんだよ。やっぱり、こういうのは同姓のほうが詳しいしね」
メイコっていうんだけどミクに会いたがってるから今度会ってやってね、って言われた。
うん、私も会いたいな。
「それで、コレ。プレゼント……」
そう言ってお兄ちゃんが取り出したのは小さな箱。
それを私の目の前で開けてくれる。
「わぁ……!」
中から出てきたのは、綺麗な青い宝石のついた指輪。
「初めて会ったときから、ずっと好きだったんだ。だから……ミクのここをね、予約したいんだ」
私の左手の薬指を指差しながら言うお兄ちゃんに、私は満面の笑顔で答えた。
「はいっ!!私も、お兄ちゃんのこと大好きだよ」
そしてまた、甘い甘いキスをした――。
そんな、最高の誕生日。
END
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もっと見る※カイミク小説です。KAITO視点。
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何度も何度も、ごめんなさいと謝る声。そして、時折鼻をすする音が聞こえる。
誰かが、泣いている。
僕らの想い
「……ミク?」
「あ……」
突如声をかけられ、涙を止めようと目を擦るミク。
その手はすぐ...僕らの想い
sozoro
【カイト】
黄の国、青の国、緑の国。
三つの国にはそれぞれ宝がある。
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黄の国に続く歴史を持つ、最も勇壮な国の証。
緑の国には百合の印を刻んだ二つの髪飾り。
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故にカイミク(寧ろあにミク…?)が苦手な方はご注意を。
そしてあくまでベースにしただけで、妄想部分もいっぱいです。
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問題が...【小説】セカイでダレよりオヒメさま vol.1
夕映
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