僕らの想い
投稿日:2008/07/31 01:00:26 | 文字数:2,431文字 | 閲覧数:962 | カテゴリ:その他
以前ブログに載せてたもの。
妹をあやす兄の図とKAITOの膝枕で眠るミクが書きたかっただけというのは内緒。
※カイミク小説です。KAITO視点。
静まり返ったディスプレイ内に、小さな声がこだまする。
何度も何度も、ごめんなさいと謝る声。そして、時折鼻をすする音が聞こえる。
誰かが、泣いている。
僕らの想い
「……ミク?」
「あ……」
突如声をかけられ、涙を止めようと目を擦るミク。
その手はすぐに声をかけた誰かによって遮られる。
代わりに柔らかい感触のものが涙をふき取った。
「そんなに擦ったらダメだよ」
「お、にいちゃ……」
マフラーで涙を拭われ、ミクは大人しくそれを受け入れた。
一通り拭い終わると、カイトは眉を顰めた。
「やっぱり赤くなっちゃったね」
カイトの言う通り、ミクの目の周りがうっすらと赤くなっていた。
それを見られまいと顔を逸らすミクの隣に、カイトは腰を下ろす。
「ミク、お兄ちゃんでよければ相談に乗るよ?」
「……………」
「やっぱりお兄ちゃんじゃ力になれないかな?メイコでも呼んでくる…」
立ち上がろうとしたカイトのマフラーを、ミクは慌てて引っ張りカイトを止める。
驚くカイトに、ミクはただ首を振った。
あまりにも必死な様子に、カイトは大人しく腰を下ろす。
「お兄ちゃん、誰にも…言わないで。私が泣いてた事…」
「……うん。でも、何か悩んでる事があるなら話してくれないか?ミクが泣いてる姿を見てじっとしてられない」
「……………」
再び黙り込み、時折何かを口に出しては悩む仕草を見せるミクを、カイトは心配そうに見守った。
きっと、これはミクにとって重要な悩みなのだろう。しっかり者のミクが自分に弱みを見せることは滅多にないから。
だから、ミクが人知れず涙を流していた事がショックだった。
強そうに見えて脆い所もある…。
なにより、ミクの異変に気づけなかったことが情けない。
「お兄ちゃん…あのね、マスターの…ことなんだけど…」
ぽつりぽつりと、頭の中で整理しながら話しだす。ミクの表情は決して明るくない。
「マスター最近元気ないでしょ?私達に歌わせてくれる機会も減っちゃったし…」
そういえばそうだな、と気づかされる。
パソコンを触る時間も、電源を入れる回数も以前と比べて随分減った。
「マスターが元気ないのも、歌わせてくれないのも…私が原因みたいで…」
「え…?」
見る見るうちにミクの瞳に涙が堪っていく。予想外の言葉に、カイトもうろたえた。
なぜマスターの元気がないことが、ミクのせいになるのだろうか…。
単なる思い込みには見えない。
「どうしてそんな事思うんだ?」
「だって…!メールで何度も私のことでイライラしてた…。私のせいだよ!」
「ミク……」
「マスターが元気ないのも、皆が歌う機会が減っちゃったのも…。全部…ぜんぶ……わたしの……」
ぼろぼろと大粒の涙が頬を伝う。
ミクはカイトのマフラーを握り締めたまま、声をあげて泣きじゃくった。
初めて見るミクの泣き顔に、カイトは何と声をかけていいのかわからなかった。
妹の悩み一つ答えてやる事も出来ない。
兄だからと…悩みを聞いてやると偉そうな口を叩いたというのに…。
「ミク…ごめんな、気づいてやれなくて…」
未だに泣きじゃくるミクを引き寄せ、頭を軽く叩く。
腕の中にすっぽりと納まる身体。こんなにも細く、小さなものだとは思わなかった。
力を込めれば壊れてしまいそうに儚さに、驚かされる。
「……お兄ちゃん?」
こちらの様子を窺うような控えめな声が聞こえ、カイトはハッとする。
「ご、ごめん…!」
「…………」
慌てて離れようとしたカイトの服の裾が、何かに引かれる。
見るとミクの小さな手が服を摘んでいた。
「……もうちょっと…だけ」
それだけ言うと、ミクはカイトの足に頭を載せて寝転がった。
相変わらずの泣き顔だったため、マフラーで目を覆っている。
カイトはそんなミクの様子に、ふっと表情を和らげた。
少しは妹の為に役に立てているのだと思うと、嬉しかった。
ミクとカイトではスペックが違う。ミクが当然にできることが、自分には出来ない。
だからせめて、兄らしくいようと思った。
「…カイトお兄ちゃん。なにか歌…聞きたい」
「子守唄でも歌う?」
「………うん」
一呼吸置き、音が紡ぎ出される。
子供をあやすように優しく、温かい声色。
心が安らぐような、温かい歌。
カイトの歌を聴きながら、ミクは目を細めた。
見上げる先には、柔らかな表情で歌を紡ぐ兄の姿。
ミクはそんな風に、いつも楽しそうに歌うカイトが羨ましかった。
ただ歌えればそれでよかったはずなのに、最近では歌う事が苦痛になっていた。
歌を歌わなくなってから更に歌う事への拒否感が強くなっていた。
だが、カイトを見て思い出してきた。歌う事の楽しさを…。
目を閉じれば、兄の歌声のように優しく、温かな情景が浮かんだ。
ほんの少しだけ、救われた気がした。
すやすやと眠るミクを見下ろし、カイトは安堵の笑みを浮かべた。
安心しきった顔。それに、マフラーをぎゅっと握って離さない手。
兄として何かしてやれたのかと思うと、自然と頬が緩む。
ミクの頭を撫でながら、それでもやはり自分の力のなさが悔やまれる。
マスターの元気がないのは自分のせいだ、とミクは言った。
パソコンの中でしか存在できないボーカロイド達の意思は、伝わらない。届かない。
だから、願うしかない。
今度電源をつけた時、マスターが元気な姿を…笑顔を見せてくれることを。
「それまでは俺が…俺達が側にいるから…。だから……」
もう、一人で泣かないでくれ。
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【小説】気付く想いとプレゼント。【カイミク・現代パロ】
※ カイミクで現代パロです。
「……ミク?」
「あっ!はい。何ですか、マスター?」
ぼーっとしていたのか、突然話しかけられたわけではないのに大げさな反応をしてしまった。
(やっちゃったなぁ……)
【小説】気付く想いとプレゼント。【カイミク・現代パロ】
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LOVE IS BLIND!
※レンリン、カイミク要素あり
※高校生設定
「つまりはチェリーボーイ?」
――神様、神様。
くったくないカオして、いちごみるくをすする目の前のこの男。
LOVE IS BLIND!
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【カイトとミクのお話3】 ~前奏曲(プレリュード)~
この作品は、僕内部で最強クラスの神曲の1つ、SHIKI様の『とらいあんぐる☆Girl's Heart』をイメージさせて頂いております。ぜんぜん似せることが出来ませんでしたが、イメージはそうなんです。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓ 「前のバージョン」で、ページをめくって行けます。
【カイトとミクのお話3】 ~前奏曲(プレリュード)~
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【悪ノ派生小説】比翼ノ鳥 第二十二話【カイミクメイン】
【レン】
カイトさんが黄の国に来たという話は、すぐに伝わってきた。
何しろ最近の市井での噂は殊更カイトさんとミクさんの話が多い。その噂の当人がやって来たのから当然と言えば当然だろう。
そして、この城下町に来れば、真っ先にこの城にやってくるのも、予想出来ていたこと。
これまでのリンなら、それこそ瞳を輝かせてカイトさんの来訪を心待ちにし、挨拶もそこそこにカイトさんを自室へ呼んで会えなかった分を埋めるように色々な話をしては笑顔を振りまいただろう。
【悪ノ派生小説】比翼ノ鳥 第二十二話【カイミクメイン】
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【小説】セカイでダレよりオヒメさま vol.1
★★ Attention!★★
このお話はryoさんの「ワールドイズマイン」と
あにまさんのアナザーに触発されちゃった感じのお話です。
故にカイミク(寧ろあにミク…?)が苦手な方はご注意を。
そしてあくまでベースにしただけで、妄想部分もいっぱいです。
【小説】セカイでダレよりオヒメさま vol.1
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【カイトとミクのお話2】 ~聖誕曲(クリスマス・キャロル)~
この作品は、言わずと知れた超有名P、 doriko氏の「みっくりすます ~幸せの形~ 」の歌詞を引用させて頂いております。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓ 「前のバージョン」で、ページをめくって行けます。
【カイトとミクのお話2】 ~聖誕曲(クリスマス・キャロル)~
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ロミオとシンデレラ 43 ※2次創作
coda Grandioso
11.
「海斗くん。海斗くーん!」
俺が女将――一度でも母親と呼ぼうものなら、独りでは到底こなせるはずもない量の仕事を押しつけられた――から、この旅館にある温泉の効能を暗記させられていると、そんな声が聞こえてきた。
今日は、これでいったい何回目なんだ――?
ロミオとシンデレラ 43 ※2次創作
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【悪ノ派生小説】比翼ノ鳥 第一話【カイミクメイン】
【カイト】
黄の国、青の国、緑の国。
三つの国にはそれぞれ宝がある。
黄の国には薔薇の印を刻んだ二つの懐中時計。
時を刻み続ける、最も古から続く国の証。
【悪ノ派生小説】比翼ノ鳥 第一話【カイミクメイン】
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世界でいちばん頑張ってる君へ
昨夜の雨で桜が散った。お花見しようねって、皆と話したのが先週のこと。
結局その時は予定が合わなくて流れてしまい、しかも昨夜からカイトとは喧嘩中。
新しい曲の楽譜にも目を通さないといけない。
何もかもに手をつける気にはなれなくて、一人部屋で溜め息を吐いた。
「もう、何もしたくないかも……」
世界でいちばん頑張ってる君へ
ピアプロに絵を投稿するのがささやかな楽しみ。
ちびキャラ中心に色々描いていきたいと思います。
※イラストの加工は人・作品を貶めるようなものでなければご自由にどうぞ。
二次配布は基本的にご遠慮させて頂いてます。
pixivにも出没中。
ボカロとその他のイラストを上げてますので、よろしければどうぞ。
http://www.pixiv.net/member.php?id=255405
twitter ほとんど独り言です。
https://twitter.com/sozoro_213