「これも、わりとカワイイ」ですよね、どう思います?ガクポ先輩」

メグさんは、向かいに座っているカムイさんに聞いた。

雑貨店「トーイパーク」のスタッフルーム。
机の上に、新製品の人形「はっちゅーね new version」 が、ちょこんと置いてある。

この少女のすがたの人形は、言葉をかけてやると、内蔵されたIC装置で、いろいろ“お返事”をしてくれるものだ。
トーイパークの店長のメグさんは、これを新たに仕入れるかどうか、迷っている。


「これ、モデルがミクさんなの?よく似てるね」
カムイさんは人形を見て、感心したように言う。

「いま、よく売れてる“メグ・ハミング”も、メグ君によく似てるけどね。自分に似てる商品がヒットしてるって、どういう気持ち?」
「いやぁ、何か、こそばゆくってハズカシいですよね」
と言いつつ、嬉しそうなメグさんだ。

「でも、いろんなドールが出るから、アタシがモデルの“メグ・ハミング”の売れ行きも、鈍るかなぁ」
メグさんは、ちょっと心配そうにほおづえをついた。

「ミクさんたちが作るこの“はっちゅーね”とか、テトさんの“デビちゃん”とか….」


●やっぱり、ただのウワサ?

その頃、アーティスト支援施設の「ニコニコ・デザイナーズ・ビレッジ」では…

みんなで共同で使う「作業室」で、2人の女の子が仕事をしていた。

布を縫う手を休めて、ルナさんがつぶやく。
「ほら、そこの壁の、紙が貼ってある後ろ、そこに穴があるのよ」

言われて、ふとレイムさんはそちらを見た。
「ああ、あれがウワサの“声が聞こえる”穴ですね?」

「そうなのよ。誰もいないのに、なんか、話し声がするっていう…」
ルナさんは、怖そうにその壁を見つめた。

「でも、きょうは平気だね。何も聞こえないよね」
「そうですね。やっぱりただのウワサでしょうか」

首をかしげるレイムさんに、ルナさんは笑って言った。
「デフォ子さんが、作業中に開けちゃった穴だからね。何があっても不思議はないかもよ」

「デフォ子さんって、いま“はっちゅーね”っていう商品づくりを、手伝っているんでしょ」
レイムさんはそう言って、ふと、物思いにふけるように目を閉じて、つぶやいた。

「いろいろ新製品は出てるけど、“はっちゅーね”も売れるといいですねえ」


●売り上げが落ちる?

いっぽう、雑貨店「トーイパーク」のスタッフルーム。

先ほどから、メグさんと二人で、人形を見つめていたカムイさん。
メグさんの言葉を聞いて、言った。
「新製品が多いと、おたがいにつぶし合って、売り上げが落ちるというの?」
彼は、“はっちゅーね”を見つめてつぶやいた。
「うーん、どうだかね」

すると、ちょこんと机に座っていたその人形が、かわいい声でつぶやいた。
「そんなこと、ないよ」(。・ω・)ノ゛

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

 玩具屋カイくんの販売日誌(148) ミクさんの「はっちゅーね」

自分がモデルの商品がヒットすると、やっぱり嬉しいでしょうね。

閲覧数:89

投稿日:2012/04/08 21:12:23

文字数:1,185文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました