私とカイトのことを語るには、欠かせない話。それは、夜の風。
「あ、またこんなところにいるんだから。・・・・・風邪、ひくよ?」
「・・・マスターの方こそ、そんなに薄着で、襲われますよ?」
「全く。これじゃあ、声かけられなくなるよ、カイト」
「大丈夫です。僕は、マスターのこと以外、どうでもいいですからね」
「うわ、ものすごく大胆なこと言ってるよ、この人」
少しずつ秋に変わりつつある夜の風を感じながら、私とカイトは会話する。・・・多分、とてつもなく意味の無い会話を。
「じゃあ、私は寝ようかな」
欠伸なじりに、私が言うと、
「えっ、そんな・・・行かないで下さい、マスター」
カイトは、私の服の裾を掴んでくる。・・・近くに居るんじゃなかった。軽く後悔する。
「・・・むぅ、しょうがないなあ。・・・隣、いい?」
結局、私は少しだけカイトの隣に居座ることにした。・・・といっても、ほんとに少しだけ・・・のはずなんだけどね。
「やった」
小さく呟いて、にこにこと嬉しそうな表情を浮かべるカイト。
「・・・」
私はしばし、そのカイトに見とれる。
「・・・そんなに見つめて、・・・僕恥ずかしいです、とっても」
嬉しそうな表情が、もっと赤くなって、私を見て言うカイト。
「だって、夜の暗闇よりも、カイト見てた方がいいもん」
「・・・ほええっ!? え、何、そ、それ、新手の、こっ、告白、・・・ですかぁ・・・??」
「ほら、カイト可愛い」
うろたえるカイトに、私は笑いかける。
「・・・マスターの、すっとこどっこい!」
一言叫んで、ふいっっと、そっぽを向くカイト。
「すっとこどっこい・・・?」
私は思わず、首をひねる。
「・・・だって、・・・マスターは、・・・・い、意地悪ですから」
「あー、・・・。・・・まあ、間違っては、ないかな」
「で、でも、」
カイトはそっぽを向くのをやめて、再び私を見て言う。
「そ、そんなマスターが、僕は好きです・・・とっても」
「・・・え」
私はカイトに優しく、ぎゅっと抱きしめられて、言葉を失った。
「・・・」
失った言葉の代わりに、夜の風が私とカイトの距離を満たしてくれるような気がして、私は嬉しくなった。
「にゃはは・・・」
思わず笑うと、なんかもっと強く抱きしめられる。涼しい秋の夜に、お互いの体温だけが、あったかく感じた。
「・・・私も、・・・・しゅき」
「マスター。・・・かみましたね?」
「・・・・にゃにゃ」
「あはは。マスターは、僕よりも可愛いです」
そう言って、抱きしめたまま頭を撫でてくる。私は、振り払いたかったけど、言葉をかんだショックで気力が無くて、ただされるがままになってしまった。
でも、まぁ。
こんなのも、悪くはないかなって、思った。
他にも、夜の風に纏わる話は思い出せば、たくさん出てくるかもしれないけど、気まぐれだから、全部は一度に思い出せない。だって、
夜の風は、特別だから。
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